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テック 2018.07.30

脳性まひやALS患者向けのVR体験、治療に効果

イギリスの医療支援団体Sue Ryderは、VRセラピーのトライアルを行っています。スコットランド・アバディーン市の神経疾患ケアセンターの患者を対象に行い、その後全英での実用化を計画。トライアルの結果は良好で、VRを用いたケアが広く普及することが期待されています。

車椅子ではできない素晴らしい体験

神経疾患ケアセンターは、脳に関する疾患である脳性まひや多発性硬化症、そしてALS(筋萎縮性側索硬化症)などの運動ニューロン病を抱える人々を、サポートするための施設です。

VRセラピーは、患者がVRでビーチに行ったり、スカイダイビングやスキューバダイビングをしたり、といったユニークな体験ができる内容となっています。

ある65歳の体験者は、イギリス公共放送BBCの取材に対し、VR体験は「素晴らしかった(terrific)」と感想を伝えました。そして、「車椅子の自分ではいけない場所に連れて行ってくれました。波が足に押し寄せてくるのはとても気持ちが良く、足で波を蹴りたくなりました」と話しました。

体験者の75%がリラックス示す血圧低下

アバディーンで行われているこのトライアルでは、他にも何人もの体験者が満足を示し、良好な結果を収めています。VRコンテンツは今後、Sue Ryderのネットワークを活用し、全英の神経疾患ケアセンターへと広げられる予定です。

施設のセラピストもまた、VRセラピーによって患者の血圧が低下したり、痛みが減ったりという劇的な効果を感じています。体験者は動揺することが減り、落ち着いた様子になる、という報告もあります。Sue Ryderは、VR体験によるこの効果は数日間継続すると考えています。

Sue RyderのLouise Torrance氏は、VRセラピーについて次のように話しています。「コンテンツの体験中、患者はリラックスすることができます。75%の患者で血圧が低下したという結果も出ています」そして、「体験者は、どこに行くか自分で選ぶ、という自由を手にします。これは非常に楽しみなこと、素晴らしいことです。体験者は自分の体験を施設の他のメンバーや、家族にも話します。実際に広く使われるようになれば、とても大きい効果をもたらすはずです」と続けました。

広く実用化のステップへ

医療にVRが使われている例は多くあります。しかし実験的な取組だけでなく、実用化の段階に入っているものは数が多くありません。

これまでにも痛みの緩和、がん患者の不安緩和など、様々な治療にVRを使う試みがなされています。実用化、普及がどこまで進むのかが、今後のカギとなりそうです。

(参考)VRFocus
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