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統計・データ 2020.06.18

調査レポート:新型コロナはVR/AR企業の多くにマイナスの影響、同時に「新たな商機」も

Mogura VRでは、「新型コロナウイルスのVR/ARビジネスへの影響調査」をWebアンケート形式で実施しました。アンケートは2020年5月26日から6月3日の期間に実施、VR/AR関連事業に取り組んでいる企業36社から任意で回答を得ました。

調査結果のポイント

・VR/AR企業の80%は売上にマイナス影響だが、一部ではプラス影響も。

・今後の対策としては、新たな商品・サービスの開発や既存商品・サービスの提供方法の見直しが挙げられる。また、攻めの施策を打とうとしている企業も多い。

業績影響

・2020年4月の売上に関して、2019年4月(事業規模が一定の場合)もしくは直近6ヶ月の売上平均(事業規模が拡大していた場合)との比較を行ったところ、「一部のマイナス影響が発生している」企業が最も多く、何らかのマイナス影響が発生している企業は80%以上にのぼりました。一方、プラス影響が発生している企業はVR関連の企業のみで、8%程度に留まっています。

・5~7月の業績見込みについては、ほぼ同程度の約75%が何らかのマイナス影響が発生しているとしています。一方、プラスの影響が発生見込みの企業に関しては、14%近くなっています。

・事業種別の業績影響では、2020年4月時点ではVR、ARとも多くの企業がマイナス影響を受けていますが、プラスの影響が出ているのはVRに取り組んでいる企業のみでした。特に「VR/AR関連施設の運営・施設向けコンテンツ開発」、「VR/AR関連ハードウェアの製造・販売」、「VR/AR関連の受託開発」に取り組んでいる企業はマイナスの影響を受けています。

・マイナス影響の要因の中でも、最多の回答は「営業・販売に支障」でした。また、受託開発を行っている企業に関しては、顧客企業の予算見直しの影響を受けている企業もありました。


(2020年4月時点の売上を昨年比もしくは直近6ヶ月の売上平均と比較した場合の影響)


(2020年5~7月の売上予想を昨年比もしくは直近6ヶ月の売上平均と比較した場合の影響)


(事業別、2020年4月時点の売上)


(事業別、2020年5~7月の売上想定)

対策

・新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う対応済及び今後の事業活動対策としては、「新たな商品・サービスの開発」が最も多く、「既存商品・サービスの提供方法見直し」、「販売管理費の削減」、「営業強化」、「テレワークの強化による固定費削減」、「公的支援施策の活用・情報収集」、「金融機関等からの資金調達(デット)」と続きました。プラス影響が出ている企業の中には「雇用従業員の採用」と回答している企業もありました。

・現在と今後で割合が異なったのは、今後行っていく企業が多くなったのは、「営業強化」、「新たな商品・サービスの開発」、「ベンチャーキャピタル・個人投資家等からの資金調達(エクイティ)」。今後行う企業が少ないのは、「雇用従業員数・給与の削減」、「販売管理費の削減」といったコスト削減施策でした。「雇用従業員の採用」予定の企業数は増加しており、攻めの施策を今後打とうとしている企業が多いと推測されます。


(新型コロナウイルスによる影響への対策、複数回答)

果たしてプラスなのか?マイナスなのか?

回答の中で、企業からのコメントの一部を紹介します。プラスとマイナス両方が組み合わさっているという声が多くありました。

・マイナス影響は間違いなくありますが、同時に新しい商機もたくさん見えており、総合的に見るとXR業界にはプラスのほうが大きいと感じています。また、そう言えるような機会を発見して投資することが、経営者としての腕の見せ所だと思います。

・VRやバーチャルを使った取り組みへのニーズは増しており、問い合わせは増えているものの、Oculus Quest中心にデバイス調達が困難な状況が続いたり、先方側がリモート環境下で稟議フローが遅れていたり、セキュリティや法務チェックが追いついていないといった事情で商談スパンが長くなっていることもあって、短期的には売上面ではマイナスの影響値が出ている所感です。 ただし、ニーズ自体は高まってきており、徐々に先方の検討スピードも上がってきているため、半年から1年以上の少し長い時間軸で見るとトータルではプラスになるのではないかと感じています。

・BtoBの開発受託を収益の柱になっていたため、年度末の駆け込み発注でコロナ禍は乗り切れたが、緊急事態宣言の影響が日に日にでてきている。 取引先も継続発注の温度感が下がっている印象もあり、コロナ後をどうデザインしていくのか方向性が見えるまでは苦しい時期が続くと覚悟はしている。 元々発展途上の領域で過度な期待もしていないので、小さな所帯で粛々とR&D;をしながら生き残ろうと計画している。

・VRトレーニングを企業向けに開発、提供していますが、感染症予防の視点においてHMDの共有(使い回し)に対する抵抗感が強くなってきています。1人1台が理想的ですが、トレーニング対象者が多い企業においては現実的ではないため、その辺においてもしばらく苦戦しそうです。

・分野によってのネガティブな影響が強い部分とそうで無いところがあるので、追い風になる分野、文脈を捉えて、プロダクト開発から営業アプローチまでを見直したことは良かった。 全般的にSaaSプロダクトで意思決定が遅くなる事業者は出てネガティブな側面はあるが、ただ、環境の変化に対応して投資をしっかり進ていくという方針の、本来利用してもらうべき事業者にしっかり届けるという観点では、適切な事業利用者に適切に導入してもらっている、という側面もある。

また、体験をすることで価値が伝わるVR/AR分野において、対面以外の営業方法に苦慮していることも明らかになりました。

・対面での営業が難しい状況下で、いかにスムーズにVRデモ体験をしいただく機会を作るかを苦慮しております。 具体的にはデバイスを先方に送る、デモをビデオに収めて共有する等の試行錯誤をしております。

・売るものはVR/ARだが、営業はリアルでないとできないので展示会やデモが制限されるコロナの環境は厳しい。

Mogura VRでは、今後も業界企業の動向調査を定期的に実施していきます。

なお、本レポートはこちらからダウンロード可能です。

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株式会社Moguraが運営する開発・コンサルティングサービス「MoguraNEXT」では、VR/AR等に関するリサーチを行っています。AR/VRへの投資や新規事業、AR/VR活用の検討にあたり、業界動向のレポーティングや特定分野に関するプレイヤー分析、将来動向などを整理し報告書としてお渡しいたします。

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