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テック 2017.02.01

【VR開発】VRならではの日本語入力を作ってみた

VR が日常の必須技術になる、つまりスマホや PC のように生活の中で必要と呼べるものになる、と思いますか?

単にエンターテイメントの媒体としても VR は素晴らしいものですが、VR が社会インフラとなる未来を想像した時、現在不足しているものの1つが文字入力です。

文字入力はコンピュータとやりとりする上で必須の操作です。PCではキーボードによって、スマホではフリック入力(日本語)によって、文字入力が可能になっています。 VR 内で現実以上に快適に実務を行う環境を作ろうとすると、快適な文字入力は非常に重要な点となります。

以上の経緯で、筆者は VR における入力システムの必要性を感じて、日本語入力の仕組みを作成してみました。

キーボードは使えないのか?

タイプライター時代から使われて来たキーボードという機構は、コンピュータへの文字入力においてスタンダードになっていますが、以下の理由から VR で快適とは言えません。

・細かい動きを要する

・5本の指の動きを正確に取得する手段がない

・通常キーボードを入力する時に支えてくれるパームレストを確保できない(重要)

これらの問題を解決するため、Oculus Touchを使った以下のような入力方法を作成しました。

出来るだけ楽に、最小の動きで入力できるようにするため、下記の点に注意を払っています。

・なるべく運動量を少なく

・細かい動きを必要とせず

・片手だけで入力できる事

入力方法

1.腕をひねって入力する文字を選びます。子音が切り替わる時に Touch が振動でフィードバックを返し、操作感を高めています。

2.人差し指を押し込むと母音を選ぶ状態になり、離すと決定です。かなり快適です。

3.人差し指を押し込んだ状態でスティックを上下に操作すると、濁音などのバリエーションが入力されます。

連続入力が可能です。

4.中指を押し込むと「はまやらわ」に切り替わります。離すと「あかさたな」です。

操作方法は以上です。できるだけ簡単に作りましたが、いかがでしょうか。

サクサク入力できるような気がしてきたでしょうか?

5.さらに変換機能も搭載。Aボタンで漢字変換・確定します。右手を上下に傾けて、候補を選びます。

他の事例紹介

VR における文字入力の現状を理解するため、VRで他に試みられている入力方法の事例を調べてみました。

キーボード

Oculus『Quill』より

現実のキーボードそのままの形です。視線やハンドコントローラーで狙いを定めるものが主流となっているようです。(それ以外の方法を見つけたら教えて下さい。  )

ほとんどの人が配列を知っているメリットはありますが、冒頭でも述べたとおり、VR において快適とは言えません。

フリック入力

[a]

スマートフォンのフリック入力を模した方式です。  

入力機器の位置に関わらず利用でき、キーボードほど細かい操作を必要とせず、多くの人にとって馴染みのある入力方法である点が魅力的です。

扇形入力

今回採用している方式です。スマートフォン向け ATOK 等でも見かけたように思いますが、VR 向けにも先行例があります。

てんちょーさん @shop_0761 が製作されている VR 用キーボードです。

今回作成したものと操作方法が異なっており、別の可能性を見ることができます。

立体配列

上記の扇形入力と同じ、てんちょーさん  @shop_0761 によるものです。キーボード型の英数向けから始められたようですが、独特の立体的な配列を作成されており、効率的な入力方法を野心的に探求されています。これらは下記リンクにてまとめられています。

[c]

音声入力

声で入力する方法です。正確な入力はできませんが、チャットするには十分なのではないでしょうか。(それなら普通に音声チャットすれば良いのですが…)

クラウドで認識しており使用料がかかる場合が多いため使い放題は難しいのですが、2017年1月現在、VR 内で一番手軽なものとして Windows Speech があります。インターネット接続がなくても使用でき、使用料がかからない方法で、 Windows 10 で使えます。まだアプリ毎に組み込む必要がありますが、現状 VR はほぼ Windows 専用と言っても差し支えないので、少し試してみる分には大きな問題はないでしょう。Mikulus に組み込まれているものもこれのようです。

まとめ

VR では豊かなジェスチャーによる自然なコミュニケーションが可能なため、文字入力に対する要求は現状そこまで大きくなってはいないと感じています。  

しかし、よく言われるように「ユーザーは手に入れるまでそれが本当に欲しかったものなのかわからない」のです。いつか私か誰かが、物理キーボードよりも快適な入力手段を実現すれば、将来の VR が今のスマートフォンのように当たり前の存在となり、日常に溶けこむ未来の一助となるでしょう。

もし誰かがこの記事を読んで、いやいや、私のほうが良いの作れるよ!!という気持ちになっていただけたなら、ご自身で快適な入力手段を作ってみて下さい。VR の明るい未来のために、是非よろしくお願いします。

なお、今回の入力システムを使ってみたいという方は Oculus ID を筆者の Twitter アカウント @yutoVR まで教えて下さい。

※Oculus Touch の動作する環境が必要です。

また、2017年2月25日(土)の JapanVR Fest. に出展しますので、そちらでも体験できます。秋葉原にて入場・体験ともに無料ですので、興味を持たれた方は是非どうぞ。


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