アダルトはVRの普及を牽引するのか―すんくぼのWeekly VR第4回

VRの旬な話題について語っていく本連載。今回のお題はズバリ「アダルト」です。

6月12日に秋葉原で開催されたアダルトVRフェスタは、大きく注目を集め、100名程度の収容人数の会場に対し数百人が入場待ち、そして多くの人が入場できずに解散という事態になりました。アダルトVRへの期待値の高さがうかがえます。

ポルノ VR

筆者も、VRのことを話すと公私ともに、「VHSのときのように、アダルトがVRを普及させるのではないか」という期待を込めたコメントをよく聞きます。

そういう時に返す言葉でもあり、本記事の結論を言ってしまうと、筆者にはまだ「最終的な可能性は秘めたものだが、現時点で普及を支えるほどの存在になるかはわからない」ということになります。その理由を、現在一般配信されているコンテンツなどを紹介しながら説明していきます。

なぜVRとアダルトなのか

そもそもなぜ、アダルトとVRなのでしょうか。

それは、VRがこれまでになく没入感のある”体験”を実現するメディアだからです。VRによって、私たちはコンテンツを「画面を見る」からその場にいるかのように「体験する」ようになります。

これまでアダルトビデオ(AV)のように画面を見るもの(海外ではポルノと総称)と比べると「そこにいる感覚」は飛躍的に向上し、思わずドキドキしてしまうレベルになります。可愛い女性とポッキーゲームをするVR動画では、顔が間近に近づいてくると思わず照れてしまうほど、脳はまるで相手がそこにいてポッキーゲームをしているかのように錯覚してしまいます。

AVもアダルトゲームも画面の枠の中の出来事です。しかし、VRでは実写だろうと3DCGだろうと、より実際の体験のようにできるということで、まさにアダルト分野におけるVRの活用には期待が高まっています。

ドイツのシンクタンクからは2020年にアダルトVRの分野が1,000億ドルに達するという予測も出ています。

一人称視点の実写物ポルノVR

通常のVRコンテンツと同様、アダルトVRにも実写物と3DCGのものの2系統があります。

実写物は360度カメラを使って、周りの様子も含めて撮影したものが多くあります。VRポルノと呼ばれるジャンルです。また、実際に360度を眺め回す人は少ないということからより没入感を増すために、180度のステレオカメラを使用し、立体感を再現しているものもあります。

AVではいわゆる「絡み」など一連の流れを客観的な視点から見るのが通常だったりします。一方、VRでは、自分がそこにいる=自分に役割がないと急激に冷める、ことからいずれも男性の一人称視点のコンテンツがほとんどです。

国内外でサービスがありますが、VirtualPorn、PornhubのVRコーナー、Naughty America VRなど海外では既に複数のサービスが登場し、スマホVRやGear VRなど各種デバイスに対応しています。大手アダルト動画サイトのPornhubもVRコーナーを設置しており、スマホアプリでの閲覧もできます。日本では、Adult Festa TVが先行してGear VRとOculus Rift向けの動画を配信しています。

アダルトVR

Kissの『カスタムメイド3D2』とイリュージョンなど3DCGのVRエロゲ

3DCGで作られている、VRエロゲとも言えるコンテンツは日本の方が本格的。アダルトゲームのメーカーより、本格的なものが出ています。Kissの『カスタムメイド3D2』やイリュージョンの『PLAYGIRLS』など3DCGアダルトゲームのVR対応はその代表例です。

モデルが元々3DCGで作られていることもあり、その中に入ることのできるVRはまさにピッタリ。自分好みのメイドさんを作成し、育成する『カスタムメイド3D2』は最近のVR対応でOculus RiftとHTC Viveに対応しています。

アダルトVRHTC Vive版では女の子に触ることも!

VRエロゲは他にもImagineVRやDLsiteなどで販売されているものがあります。

まだまだある課題

VRポルノにも、VRエロゲにもそれぞれ課題があります。

まずはVRポルノに特有の課題から紹介していきましょう。それは自分が動けないこと。カメラを使って撮影しているため、鑑賞中に頭を回す以外の動きはできません。基本的には椅子等にゆったりと腰掛けていたり、横になっていて受け身でコンテンツが展開したりと、動こうと思わせないような工夫がされています。

また、アダルトVR全般の課題として触覚とフィードバックがあります。現状、ほとんどのアダルトVRコンテンツでは、VRの中で「触る」ことができません。また、VR内で行っている行為を体感することも、USB接続するような一部のデバイスに対応しているもの(※)を購入しなければ、難しいです。

※国内では『カスタムメイド3D2』の数量限定版、『Adult Festa TV』が周辺機器に対応。海外のVRポルノサービスでも対応しているものがあります。

錯覚されて脳を騙してしまえばOKと言われているVRですが、没入感が高いからこそ、視覚・聴覚だけで体感できないことに物足りなくなってしまうこともしばしばあるのです。そういう意味では現行のアダルトVRコンテンツの楽しみ方は従来のAVやエロゲーと同じように、ある程度の脳内補完を必要とするものと言えます。

キーワードは”実用性”

生身の人間が目の前にいるかのような錯覚にさせられるVRポルノはこれまでのAVにない魅力を備えていることは間違いありません。また、VRエロゲでは、これまでできなかった「二次元の世界に入ってプレイする」ことが可能になります。

しかし、筆者の目にはまだアダルトVRのコンテンツに対しては「スゴい!」という感想が多いように感じられます。実際にデバイスを購入させるほどの行動につながるのは、その先に実用性を感じてこそです。

現在のアダルトVRを体験した人が、どの程度実用性を感じるものなのか、まだサンプルも少なく未知数、という理由で本記事のタイトルの問への答えは「わからない」ということになります。

普及を推し進めるかどうか

一言添えるとしたら、”現時点は”ということを述べておきたいと思います。アダルトVRにまだ不足していると感じられるかもしれない要素を克服し、さらに没入感を増そうとする試みは世界中で取り組まれています。

6月12日のアダルトVRフェスタでも多くの展示で取り組まれていたように、触覚とフィードバックによる体感型のアダルトVRはこの実用性を高めるものです。

また、アメリカのポルノ女優Ela Darling氏は、全く別のアプローチでVRを活用しようとしています。「バーチャルによって、セックスまでのハードルを無くす」と謳う同氏は、Oculus Rift 開発版を使ったVRアダルトライブチャットの実用化に向けた取組を進めてきました。

シリコンバレーのVRコミュニティであるSVVRの年次イベントでもアダルトとVRについての講演を行うなど、精力的に活動を展開。2016年5月からはアダルトライブチャットサービスである「Cam4VR」と提携しています。Cam4VRでは、タイムスケジュールに沿って登場する女性とのアダルトライブチャットをVRデバイスを装着したまま体験することができます。

アダルトVR


アダルトVRが今後大きな存在になっていくことは間違いないことです。果たしてその魅力がVRの普及を支えることになるのか引き続き注目したいところです。

※なお、今回紹介したサービスやコンテンツ名は国内外とも、年齢認証の関係でリンクを貼っていませんが実際に家で体験できるものです。

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この記事を書いた人

  • KFtb1VIM

    株式会社Mogura代表取締役社長。慶應義塾大卒。元ネトゲ廃人。中央省庁勤務後、ベンチャー企業を経て「Mogura VR」編集長。VRジャーナリスト。国内外を駆け回って情報収集中。VRのことならいくらでも語れます。

    Twitter:@tyranusii

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    http://www.moguravr.com/writers/