熱量の上がり始めた日本と韓国のVR事情-すんくぼのWeekly VR第2回

第1回ではシリコンバレーでのイベントの様子をお伝えしました。第2回は日本と韓国で開催されたメルクマールとなるイベントから、それぞれのVR事情を読み解いてみたいと思います。

国内では史上最大規模のVRをテーマにしたカンファレンスJVRS

先週5月10日、東京・品川でVRをテーマにした大規模なカンファレンス「Japan VR Summit(JVRS)」が開催されました。社内でのVRスタジオの立ち上げやVRファンドの設立などVRへの取組を強めるGREEとVRコンソーシアムによる主催。

特筆すべきはその規模です。セッション1はOculus RiftやHTC Viveなどの各種ヘッドマウントディスプレイメーカーの関係者、セッション3はVRコンテンツ制作で先陣を切るゲーム会社、セッション5はVRに特化したファンドを立ち上げている各ファンドの代表者、と国内外からVRに関わるキーパーソンが大集合してのイベントとなりました。参加者は500名超、チケットの料金が2万円以上(早割24,000円、通常30,000円)という、これまでにない豪華なカンファレンスでした。

Weekly VR

これまで、国内で開催されたVRのイベントは勉強会やセミナーなど最大でも100~200名規模のもの。また、東京ゲームショウやUnite、Unreal Festa、CEDECなどゲームに関連するイベントの中で、クローズアップされて盛り上がるといったものです。

VRを単独のテーマとし、セッションと体験を1日ぶっ通しで開催するイベントは日本で初めての開催となりました。

JVRSで共有されたこと

このJVRSで共有されたことは大雑把に分けると2点あったと筆者は感じました。

・VRに対する熱量
・何にどう取り組むべきかのヒント。バブリーに考えない先駆者の姿勢。

熱量を集める

筆者が2014年からアメリカのVRのイベントに足を運び行くたびに痛感させられて日本に帰ってくるポイントがあります。それは1,000人を超える規模で参加者が誰一人VRの可能性を疑っておらず、イベントが「自分たちがVRで何をしているのか、今後何をするのか」を考えている、ということ。アメリカではVRをテーマにしたイベントも多く、いずれも新しい技術を活用して、これまでに前例がないことにチャレンジしている人たちが集まる非常に熱量の高いイベントになっているのが特徴です。

JVRSはその熱量を感じることができるイベントでした。登壇者はいずれもVRに可能性を感じているトップランナーが集まったセッション、そして参加者を交えての懇親会に至るまで、北米のイベントにいるかのような雰囲気ができていたことは印象的でした。

VR元年の意味するところ。先駆者が語る冷静な意見

熱量の高い新分野はともすれば、タガをはずれた熱狂ともなりがちです。しかし、それぞれのセッションの中では、先駆者が気づいている「冷静な意見」も多く聴かれました。セッション3で日本のゲーム企業で最も積極的にVRゲームの開発を行っているコロプラの馬場社長は「VRが一般化するときに備えて事業をしている」、「VRゲームづくりは試行錯誤」、「まだ1~2年はかかる」と既にVRゲームを5本制作している同社にとっても、まだまだその道は険しいことを示唆。セッション5に登壇したGREEの青柳取締役は「2018年にはVRがくる」と自身のVR一般化への考えを披露しましたが、裏を返せば「2018年まではこない」中でのVRへの投資を行っていくということでもあります。

こうした見方は海外のトップランナーたちの考え方とも一致しています。「VR元年」という言葉が誤解を生みやすいところですが、「2016年はハイエンドのVRデバイスによる高品質なVR体験ができるようになる年」という意味であり、文字通り「始まりの年」です。

今後数年かけて進むであろうVRの普及を見越して今から積極的な投資を行っている、というのが今のVR業界での考え方です。

そういったロードマップを見越した上で、JVRSのようなイベントは「何をするのかを考える場」となっています。Oculus Rift製品版などの高品質なVRを体験したときに、それをどのようにビジネスに活かしていくのか。セッション5でのコロプラネクスト山上社長の「産業分野、ヘルスケア分野などゲーム以外に注目したい」という言葉にもあったように、ゲーム・ノンゲームを問わず「VRで何ができるのか」改めて考えさせられるイベントとなりました。

韓国でもシンポジウムが開催

一方、JVRSの翌日5月11日には、韓国で「Korea VR Symposium(韓国VRシンポジウム)」が開催されました。こちらは韓国のVR業界を盛り上げるべくソウルで開催された120名規模のイベントです。

主催は韓国でモバイルゲームの開発を行っていたFictio社。同社は、VR向けのモーションキャプチャデバイスPerception Neuronの韓国におけるローカルパートナーとなることで事業をVRに大きく転換しつつあります。

同イベントでは、国外からVRを牽引する講演者が登壇しました。4月末にシリコンバレーでもイベントを開催した全米最大規模のVR関係者のコミュニティSVVRの代表を務めるKarl Krantz氏。Perception Neuronを全世界に展開し、BtoC向けのVRソリューションAlice Projectに着手しているNoitomのCEO Haoyang Liu氏。VRでのコミュニケーションサービスを開発しているAltspaceVRのJohn Shaughnessy氏。そして末席ながら筆者も日本のVR事情を講演させていただきました。

weekly vrSVVR代表Karl Krantz氏

韓国にはGear VRの普及を進めているサムスンが本社を構えています。また、Gear VRやOculus Rift向けのコンテンツをローンチしているskonec社のような積極的なゲーム企業もあります。しかし、ゲーム業界全体としてはモバイルゲームが強く、VRへの取組が進み始めたのは2015年から。特に韓国人の女性の登場するセクシーな360度動画への取組が盛んです。

https://www.youtube.com/watch?v=n7EurDMY0-w

skonec entertainment社が開発しているGear VR、PlayStation VR向けアーケードライクなFPS『モータルブリッツVR』

https://www.youtube.com/watch?v=lCiBpsf8Y8o

韓国人女性の登場する動画を次々と制作しているverestの、ヨガをマンツーマンで受けるという360度動画。100万回再生を超えている。

今回のシンポジウムは今後、VRに取り組むにあたり、海外の有識者からVRに関する考え方、知見を輸入しようというコンセプトのイベントとなりました。

韓国ではまだVR業界というほどの大きさまでコミュニティが育っていない印象ですが、今後一気に熱量が高まることが予想されます。

シリコンバレー中心のVR。今後は日本、中国、韓国などアジアでもその熱が急速に高まっていく予兆があり、その動向に注目したいところです。

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この記事を書いた人

  • KFtb1VIM

    慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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