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VTuber 2018.12.24

“三下”と呼ばれる注目のVTuber「椎名唯華」 その卓越したバランス感覚とエンタメ性とは?

にじさんじプロジェクト(元にじさんじゲーマーズ)の椎名唯華は、三下呼ばわりされる、かなり変わったVTuberです。

「清々しいまでにクズ」なんて言われながらも、自分の傍若無人さとへつらいを、周囲を巻き込んで笑いと人望(?)に変えていく。いくつかエピソードを拾い上げながら、彼女の卓越したバランス感覚を見てみます。

清純美少女から三下へ

一番最初の自己紹介動画は、真っ白な髪の毛とふわっとした微笑みの、清純派美少女でした。
元のキャラ付けとして「霊能力者」という部分がありますが、ぶっちゃけその後は、思い出したようにとってつける程度です。

同期の雪汝にドッキリを仕掛けられた時のかわいらしい反応を見ると、素はとっても優しくてピュアな女の子なのがわかります。

本来のトークの面白さや、独特な言葉遣いで話題になっていましたが(シャドウバース開封動画35:10あたりの親知らずネタはTwitterで有名)、次第に図々しいことをしれっとこなすスタイルが漏れはじめます。

同期の魔界ノりりむとのコンビ「おしぃりぃ」では、その開き直ったムーブがよく見られます。言うことなすこと、とってもいい具合に、いい加減でやりたい放題。

VTuber・YouTuberに流行っていた「ペヤング激辛MAX END」を早食いする、魔界ノりりむとのオフラインコラボは、椎名唯華がどんなVTuberかがよくわかる回です。

「余裕やと思う」と序盤イキるも、「もうギブだ、自分を追い込みたくない」「あたし辛いのだめなんですよね」と、我慢することをせず速攻で諦める。その後自分は食べずに、必死に食べるりりむを実況しながら茶化していくもんだから、コメントが一斉に「お前も食え!」とツッコミの嵐。

自分の食べられなかった分を「死んじゃう!お願い!お願い!」とりりむに押し付けたときには、ものすごい勢いで「三下ぁ!」とコメントが流れまくり。
後半、因果応報のごとくむせて大変なことに。驚くほどきれいなコント状態です。

最後りりむによる「すいませんって言ってる時の顔ね、初めてみたんだけどすっごいムカつく顔で言ってるからみんな信じないほうがいいよ」という暴露でオチがつくのは、プロの三下の所業でした。

後日、りりむが「しぃしぃさ、ゲーマーズの中で一番クズだからね」(19:00くらい)と言い放ったことで、完全にクズキャラ認定が定着。特に魔界ノりりむは椎名唯華に騙されて散々ひっかかって痛い目にあっていますから、言う権利はあろう。

なお、魔界ノりりむの呼び名の「しぃしぃ!?」の口調がものすごく印象に残るので、今や椎名唯華絡みじゃなくてもあちこちで使われるようになりました。「不仲」という形で、仲がよい相方同士です。

彼女は奇跡のような笑いも呼び寄せます。
VTuberのポケモン大会に出場した椎名唯華。対戦相手はロボ子。ガチガチに組んで挑んだロボ子に対し、椎名唯華は運任せの技「ハサミギロチン」メインの一撃必殺パーティー。当たる確率がとても低い技を三回連続で当ててロボ子さんを負かすという、強運を見せます。通称「にじさんじ運ゲーマーズ」。勝った後に言う「すいやせんした」の三下感。

こんな理不尽な戦いかたしたら、キレられても、ブーイングの嵐になってもおかしくない。
ただここはロボ子が本当に優しかったのと(それでも一瞬壊れてはいますが)、「これだから椎名は!」という視聴者からの総ツッコミがあったことで、笑える伝説エピソードとして昇華されました。

なお後の試合で、回線がギロチンされて落ちて負けるというオチまで付いています。

にじさんじレジスタンス

「にじさんじレジスタンス」は、椎名唯華と花畑チャイカのユニット。にじさんじに対する抵抗勢力的な名前ですが、実際やっているのは(マインクラフトで)ケーキを作ったり、ゴミ拾いしたり、いちからの事務所でトイレットペーパーを補充したり。

このレジスタンス。いちから株式会社の田角氏、岩永氏も視聴済み。目標はアーカイブを残すことと、運営に怒られないこと。むしろいちからでは、面白いと褒められたらしい。

場をひっかきまわす適当な発言と、真面目な時はしっかりまとめる熱血な性格が魅力的な花畑チャイカ。好き勝手する椎名唯華との相性は抜群。2人の人気はここでさらにブレイクしました。
そもそも運営に反抗する組織なんてネタ今までなかったので、にじさんじメンバーもこの展開にはノリノリ。色々なところでネタにされるようになります。

マインクラフト内で夕陽リリ森中花咲の家に落書き立て札を置いていったり、まだデビューしていない、募集中のバーチャルライバーのユードリックを勝手に想像して動かしたり、トイレのスリッパを履いたままいちから株式会社の事務所を(気づかずに)歩き回ったりと、恐るべき「レジ活」を行う2人。

花畑チャイカが安定感のある大人なので、椎名唯華はいたずらっ子的な部分をフルに発揮できています。椎名唯華が子犬のように「リーダー!リーダー!」とついて回るのに対して、花畑チャイカが「リーダーと呼ぶな」と毎回突っ込むやりとりが大変微笑ましい。
一度は椎名唯華が、コラボを寝坊ですっぽかしたことも。そういうのすらもネタにできちゃう関係性です。

椎名唯華は自分のソロのラジオ配信を始めようと試みます。それが「しぃしぃらじお」
第0回のゲストは、舞元啓介でした。

ここでもまた椎名唯華イズム爆発。まずゲストを呼んでおきながら、企画も台本も何一つない行き当たりばったり状態。

舞元啓介は、いじられツッコミおじさんとして非常にハイスペック。途中でゲストを残して飲み物を取りに消えるという、椎名唯華のありえない迷走暴走を、全部笑いとしてキャッチ。舞元啓介が逆にパーソナリティーに見える状態自体がエンタメになっていくという、2人の才能が噛み合ってしまった稀有な配信になっています。一応、色々な人と交流したいというのが椎名唯華の目的だそうですが、もう毎回舞元呼んで欲しいくらい見事。

椎名唯華のさじ加減

椎名唯華のスタイルは基本いたずらずぼら
とはいえ、自分の都合がよくなる(ように受け取られそうな)立ち回りは、ちょっと間違えるとヘイトを買ってしまうもの。ここのバランス感覚にものすごく秀でている。

まず、視聴者や他のVTuberにツッコまれるのを、笑いの一つの流れにしています。特に多い「クズ」「三下」「いちご大福(顔がころっと丸いため)」の語は、自分でも吸収して使うほど。挨拶は「おつかれ三下~」。基本自分を下げて貶めるので、あまり嫌味がない。

差別的な言葉や、相手を傷つける発言はしません。煽ったりイキったり、表面的なちょっかいをかけたり、自分が得するように逃げたりはしますが、相手を批判したり嘲笑することはしない。
自分が調子に乗ったら、その分三下ポジションに下がることで、全体的な面白さに向き合っています。

彼女のネタに巻き込まれた人は、大体被害者的な状態になります。こうなるのは舞元啓介や花畑チャイカや天開司のような、受け入れる大きな懐の持ち主が多め。
大人な対応をすると、相対的にその分視聴者からの株が全員あがる、というきれいなサイクルができています。


彼女は、企業VTuberの枠を超えた知り合いに声をかけて集めた「だいさんじ杯」を開催しています。

企画をほとんど立てておらず、ものすごい雑にスタートしているにもかかわらず、みんなが彼女の元に集まって、彼女中心に面白い配信を作っていく様子は、手慣れたVTuberたちの実力と、椎名唯華のさじ加減のセンスが発揮されているところ。ぐだぐだなのに、きちんと最後はまとまって、エンターテイメントになっている。

にじさんじレジスタンス内などでぽろっとこぼす発言の中には、時々VTuberに向き合っている彼女の思想が滲むこともあります。彼女は悩むことや迷うことよりも、楽しいものを楽しんで出すことに、とても真摯。

配信の頻度はものすごく多く、休日を取らず毎日どころか一日数回やることも多々。

「最近楽しいことばっかりだね!楽しいことばっかりだ」
調子に乗っても、いじられても、どんな時でも椎名唯華はコロコロと笑います。いつどんな時も心から楽しそうだから、こっちも見ていて心地良いし、元気になれる。
図太くて図々しい、というよりは、楽しくなることを選択していった結果が、実を結んでいる、という感じなのでしょう。
視聴者もVTuberたちも、彼女が笑っているのなら、つい甘やかしたくなってしまう。

あまりにも狙ってはできないタイミングが見事すぎて(例・ゲーム内で叶と鷹宮リオンが一騎打ちしていた時、横から偶然殴った椎名唯華によってリオンが死亡した、など)笑いの神に愛されているのをしみじみ感じます。
ただそれは偶然ではなく、楽しいことを絶対見逃さず、チャンスに食いついていく感覚の持ち主だからこその引力に見えます。

元にじさんじゲーマーズで、友人の笹木咲の誕生日に、ニセゲーマーズのお祝い動画を作ったり(アーカイブは残っていません)、卒業の際には、動画の編集時にゲーマーズメンバー全員からのメッセージをサプライズで仕込むなど、粋な行動を取る椎名唯華。こちらも、「楽しい」を目指す彼女らしさの一環なのかも。

三下スタイルを貫くは、視聴者のツッコミの強さによっては少々辛い部分もあるはず。見る側のモラルはある程度問われます。
それでも、ポジティブに三下であり続けてきた彼女は、見たこともない笑いの神を引っ張ってきそうな力強さに満ちている。彼女にしかできないトーク技術で、独特な人望を集め続けています。

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