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VTuber 2019.06.29

バ美肉おじさん界の雄! 魔王マグロナの“かわいさ”の理由

 

2019年3月3日、真っ白な3D空間の中でひとりの少女が両手で顔を隠しながらカメラマンに呼びかける。

「ほんとにぃほんとにぃ、女の子のやるやつだからぁちょっと恥ずかしいんですぅ!すみません!すみません!やめてくださいぃ!ちょっとぉカメラさん!コラ~!コラ~!」

TVアニメ「アイカツ!」のアイドルポーズを視聴者からリクエストされて真似をした結果、恥ずかしさのあまり身悶えたのだ。“彼女”の名は魔王マグロナ。おじさんである。この日、女豹のポーズやダブルピースなど、視聴者からさまざまなポーズをリクエストされた彼女は、内股で立ち腰をクネクネと動かしながら、視聴者に向かって微笑む。

「見てれば分かるだろぉ~!やっぱりぃ、おじさんだから動いているときの立ち振る舞いとかもおじさんっぽいだろぉ~。そんなのにぃ興奮している君たちはぁ、ずいぶんとぉ、おかしい!」

魔王マグロナは、2018年6月5日に登場したバーチャルYouTuberだ。普段はお絵描き配信やゲーム実況などを精力的に行っている。

繰り返すが彼女はおじさんだ。もともとukyo_rst氏という男性イラストレーターが、自作のバーチャルボディを身にまとい、変声機を使って自分の声を女性の声のように加工したことから始まったものだ。いわゆる「バ美肉(※)おじさん」のはしりとして注目され、多くの視聴者たちが彼女の虜となった。

(※バ美肉……「バーチャル美少女受肉」の略称。ボイスチェンジャー環境などで男性が女性の声と美少女アバターを使うこと。なお、この場合の受肉は宗教語とは別義である)

では、彼女の魅力はどういったところにあるのか? そのポイントを紹介しよう。

より“かわいく”なるための飽くなき挑戦

魔王マグロナが配信をはじめたのは、巻羊氏とリムコロ氏という、ukyo_rst氏の2人の友人がYouTubeに投稿したLive2D(2Dイラストのキャラクターに動きをつけられるソフト)のチュートリアル動画を見たのがきっかけだという。さっそくイラストレーターとしての腕を活かし、美少女のボディを作成。完成当初は、あまりの出来栄えの良さに配信上で視聴者に自慢した。

しかし、問題があった。自分の声が美少女でないことだ。

だんだん自分のガワではなくて、自キャラ、いにしえの言葉でいうと看板娘的な目線で見るようになってしまって、自分の配信のアーカイブ等でそのキャラからおじさん声が出ているのを見ると、なんか腹立つという精神状態になってきました。
引用元:魔王マグロナ pixivFANBOX 2018年6月11日の投稿

自分に向けられた怒りは、そのまま彼女をボイス加工の道へと進ませる原動力になる。まず、フリーソフトの「恋声」を使ってボイスチェンジに挑戦。意外と耳馴染みのする声になり当初は喜んでいたが、ノイズが混じったりタイムラグが起きたりと、不満点が見つかる。さらに、「VT-3」といった専用の音声機材を導入するも、やはり納得いかない。配信上で何度も音声テストを行い、視聴者に意見を聴きながら、理想のかわいい声を模索していく。

劇的に変わったのは2018年11月。当時最新機種だった「VT-4 VOICE TRANSFORMER」を導入したところ、女性声のクオリティは格段にアップ。声の野太さや低音などがかなり解消された。(なお、当時の魔王マグロナ自身の感想はこちらの記事で読める)

導入直後の「はっぴょうかいおじさん&おしらせおじさん」配信を見れば、その違いはくっきりと分かるだろう。コメント欄の視聴者たちも彼女の声の変わりように感動していた。

その後も機材を追加したり新規ソフトを利用したりと、美少女の声を生み出す努力は止まらない。現在は、加工した音の添付ではなく最低限の変換だけでかわいさを生み出せるように研究中である。そうした成果はpixivFANBOXで随時公開されており、多くのバ美肉おじさんたちのボイスチェンジ技術の底上げに貢献しているのだ。

かわいい声を生み出すために日夜技術を発展させている魔王マグロナ。彼女のフロンティア精神に魅せられた視聴者は決して少なくない。

天然の“かわいらしさ”で、視聴者たちを混乱させる

魔王マグロナの持つかわいさは、外見や声だけではない。おじさんである彼女本来のかわいらしさが配信上では多く見られる。特徴的なのは、ゆっくりと語尾を伸ばしながらしゃべる話し方だ。

本人によれば、これは愛知県のとある地域の方言が強く影響しており、自然と女の子が話しているような喋り方を会得できたという。この独特な話し方から、本当に魔王マグロナを女性だと勘違いした人も多いようだ。

また彼女の人となりも見逃せない。印象深かったのは2018年9月4日の配信「ピザやく」。視聴者と歓談しながらピザをつくる企画だったが、完成品を前にして「えへへ!大成功!」と言いながらスマホで写真をとる様子に、コメント欄は「かわいい」という言葉で埋め尽くされた。こうしたポロリと出る天然のかわいい仕草こそが、ファンの心をグッと掴むのである。

本人は自身のかわいらしさには懐疑的だ。もともとおじさんを公言しているのも、ネカマではないことを先制でアピールするためのものだという。しかし、Twitterではこのような発言があった。

魔王マグロナのこうした天然の“匂わせ”が視聴者たちを混乱させているのは間違いない。正直、記者も彼女に対して、性別を超えた純粋な“かわいらしさ”を感じている。バーチャル界では、現実で見えづらい内面の魅力をより明確に浮き彫りにすると気づかされる。

ファンのために体を張る魔王マグロナの情熱

魔王マグロナの動画の企画力も注目すべきポイントである。視聴者を楽しませるためのチャレンジングな動画の数々は、芸人魂さえ感じられるほどだ。

その企画力が分かりやすいのは、2018年9月16日の配信「あしつぼしげきMAXENDおじさん」だ。当時、VTuberたちの中で「ペヤングやきそば 激辛MAX END」という激辛食品に挑戦する企画が流行したが、魔王マグロナは単に食べるだけでは物足りないため、足つぼマッサージを受けながらの挑戦を敢行。結果的に終始悲鳴が漏れる配信となり、ファンたちの心に強く残るものとなった。

また3Dボディを利用したVR配信も人気が高い。2019年5月8日の「[VR360°]バイノーラルささやき配信」では、魔王マグロナがベッドに横たわっており、視聴者の目線からは添い寝されているような気分になれる。さらに立体音響でささやかれるため、本当に彼女がすぐ側で語りかけてくれるような臨場感が得られるのだ。

このように自身が体を張った企画の数々は、彼女の面白そうなものを進んで実行するチャレンジ精神が生み出しているといえるだろう。それだけVTuberの活動に本気を出していることもうかがえる。活動一周年を振り返る配信【YouTubeデビュー一周年】ましゅまろもぐもぐおじさん【2018/06/05】では、1年前の自分に向けてこんなメッセージを残していた。

「お前、冗談だと思っとるやろぉ。ガチでやることになるぞぉ」

今後、魔王マグロナがどのような企画で、かわいらしさや面白さを見せてくれるのか、彼女のガチの活躍にこれからも期待したい。


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