VRでの感情表現とその未来について、FOVEの小島由香氏が語った「VRCクリエイターズトーク」レポート

一般社団法人VRコンソーシアムが主催するトークセッション「VRCクリエイターズトーク」の第一回が開催されました。今回のスピーカーは、「Forbes JAPAN 9月号」の表紙にも選ばれたFOVE社CEOである小島由香氏を迎え、FOVEのビジネスについての講演と質疑応答が行われました。ファシリテーターは、VRC代表理事である藤井直敬氏。このトークのセッションの模様は、株式会社カディンチェにより、360°ライブストリーミングされました。

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FOVEはOculus Riftと同様、PCに接続するVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)です。目線を追跡できるアイトラッキング機能が特徴となっており、より直感的な操作が可能です。

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VRでの感情表現

小島氏の講演は、「FOVE」がVRの進化の中でどの段階にいるのかという話から始まりました。小島氏によると、現在のVRは「presence=VRの中に存在すること」、「control=VRを操作すること」、そして「expression=VR内で感情表現すること」の3つの世代に分けられています。

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「Presence」では、360°カメラやヘッドトラッキングを使った技術が使われましたが、「Control」では、PS Moveなどのモーションセンサーを使った技術が応用され、VR内での操作を可能にしました。「Expression」では、FOVEの視線追跡機能が役に立つといいます。FOVEによって、VR内のキャラクターとのアイコンタクトやマルチプレイヤーでのゲームにおいて視線によるコミュニケーションが可能になっている他、体が自由に動かせない人のためのインターフェースとしても期待が高まっている事を解説しました。

003この写真は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と呼ばれる脳から筋肉に指令を伝える神経が侵され、筋肉が動かせなくなる病気を持つ患者が、体を動かさずに、FOVEによって目線だけでコミュニケーションロボットを操作し、家族との会話を実現させているもの

https://www.youtube.com/watch?v=VHXx7XTPULE
こちらは今年のVRCクリエイティブアワードでも最優秀賞を受賞した、「Eye Play The Piano」。病気のためにピアノが弾けない子供達のために、目線だけでピアノを弾けるインタフェースを開発しました。演奏会で実際にピアノを弾いた沼尻くんは、「これを使って作曲もしたい。」と講演の中で流された映像の中で、コメントしています。

小島氏によると、「Eye Play The Piano」の開発に至ったきっかけは、「FOVEを使って何かできる事があるのではないかと考えていたところ、筑波大学付属特別支援学校を紹介して頂きました。お話を聞いた所、普通卒業式のピアノの伴奏などは生徒がやるものですが、このような式の伴奏を障害があって弾くことができないという話を聞いた事から」とのことです。

004開発初期のFOVE

「Eye Play The Piano」では、世界に今まで存在しなかった視線でピアノを弾くためのUIを開発しなければならなかったため、多くの困難が待ち構えていたそうです。コンテンツをつくるにしても、まともなハードウェアが出来ていない、和音が弾けないなどの問題がありった上、洗練されていないインタフェースを何度も試してもらい、トライ&エラーを繰り返していました。最終的に、Justgivingというクラウドファンディングで寄付金を集める事に成功し、来年には全国35の特別支援学校にFOVEを寄贈する予定となっています。ゲームやトレーニングといった使い道が多かったVRHMDを音楽などの自己表現に使うという面で大きく異なっており、世界的にも大きくメディアに取り上げられました。

「Foveated Rendering 」と今後のVRの流れ

「Foveated Rendering」とは、FOVE特有の視線追跡機能を利用して、ユーザーの見ているところのみを高解像度にレンダリング(描画)する事で、PCの処理を大幅に軽くする事ができるというもの。現在のHMDの価格は手頃になっていますが、それに対するPCの要求スペックは依然として高いままです。小島氏は「現状持っているPCでHMDを使えるユーザーは市場の15%ほどですが、FOVEを使えばPCの処理が軽くなり、60%程度までカバーすることができる。」と語って

小島氏はさらに、「今後起こる流れとしては、VR用のPCの低価格化が進んでいくだろうと思っています。現状、HMDを動かせるPCの推奨価格は20万円ですが、GDCなどでのOculusの体験会で使われているのは100万円近いデスクトップが並んでいるのは当たり前の事実です。そこで、HMDをまともに動かせるPCをどうやってユーザーが手に入れるかが、VRが今後普及していく上での最大のボトルネックとなっています。そういった意味でSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)さんの「Project Morpheus」は、エントリーモデルとして普及する可能性が非常に高いと思っています。理由は、PS4が既に1900万台以上売れているからです。今から、新しく20万円以上するPCを購入するより、お手元にある4万円程のPS4でまずは動かせます。コンテンツについてもSCEなのでガツンと揃えてくる事も予想できます。ここでVRは凄いと一般層に打ち出す事がVRの安定化のための第一歩だと思っています。」と述べ、VRHMD普及までの道筋を語りました。

質疑応答にて

質疑応答では、小島氏に対して、投資を受けたり、人を雇う事に対して多くの不安がある中、どのようにしてそれを乗り越えてきたのかという質問がありました。小島氏自身も、「自分も起業したら大借金を負い、人生が終わるのではないか」、「お金をくれると言われても、会社を辞めるのに勇気はいる」などの、起業に対する恐れがあったそうです。しかし、昨今のVR業界の劇的な動きを見て、タイミングを逃すのは勿体ないと感じたということ。「VRの特徴は面白ければメディアに取り上げてもらいやすく、興味のある個人投資家が声を掛けてくれ、その後のビジネス面についても、メンターとして支えてくれたとのこと。そうしたきっかけを作るためにも、まずはプロトタイプをつくり、いろいろな人に見せる事が大切だ」と語りました。

今回のイベントは60人を越す聴衆が集まりました。VRが今後ビジネスとして展開していくためにも、こうした既に投資を受けているプレイヤーの経験・知見を共有する場には意義があると感じられるイベントでした。

今回の講演の360°ストリーミング映像は、カディンチェ社の協力で閲覧可能です。講義を聞きながら、会場の空気も感じられますのでぜひご覧ください。今以下のリンクから閲覧可能です。

http://vrc.or.jp/2015/08/12/creators_1_archive/

この記事を書いた人

  • image00

    先端技術好きなデザイナー。VRでは、MVコンセプトアート制作や360度カメラを使用した企画に関わる。多摩美術大中退、CI開発から書籍装丁等の様々なデザイン業務に従事。 THETA LOVERだゾ。

    Twitter:@sayamecci

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