ハイエンドVRを無線化するシステムをオーストラリアのベンチャーが開発中

オーストラリア発のベンチャー、Immersive Robotics(IMR)は、PC向けVRヘッドセット用のワイヤレスVRストリーミングとストリーミング用圧縮技術を開発しています。システム仕様によると、2-3ミリ秒の遅延で、イメージクオリティを保ちつつ、既存のWifiの環境下で使えるように設計されています。また、実際に動作するシステムを来月のCESで発表する予定です。

IMRは、ワイヤレスVRストリーミングとストリーミング用圧縮技術を合わせたシステムを「Mach-2K」と呼んでいます。このシステムは2015年から開発を行っており、既にOSVR(初期版)ヘッドセットを使ったコンセプトモデルを完成させており、政府からの開発資金を確保しています。

IMRはTim Lucas氏とDaniel Fitzgerald氏によって設立されました。Lucas氏は複数の有名なUAV設計に関わっていた一方で、航空機から地上を3Dスキャンし、それをVRシミュレーションに用いた測量技術も開発しています。

Lucas氏の共同設立者であるFitzgerald氏は、航空宇宙工学を学んだ後、無人機業界の関する研究で博士号を取得しています。Fitzgerald氏は、ドローン向けの自動操縦プログラムを開発しており、その才能を生かしてアルゴリズムのソフトウェア開発を行っています。

Mach-2Kは、バッテリーを内蔵した受信装置と、体に固定するためのベルト、PC側には送信機を接続する構成です。受信機は、ヘッドセットの各種ケーブルへ繋ぎ、受信したデータを復号し、フル解像度の映像をヘッドセットに送ります。この無線通信にかかるレイテンシーは2-3msほどで、現時点ではHTC Vive向けです。Mach-2K仕様をまとめると以下の通りです。

・対応解像度:2160×1200(4K/眼に対応予定)
・対応フレームレート:90Hz(120Hzに対応予定)
・メインCPU:FPGA
・I/O:HDMI、USB 2.0、12V out
・Eyeトラッキング入力対応
・電源:5V DC
・無線:802.11ac Wi-Fi 5GHz(将来的には最大60GHz WiGigに対応予定)
・オンボードソフトウェア:BAIT(Biologically Augmented Image Transmission)アルゴリズム。サードパーティーがこのアルゴリズムを使って他のモジュールに対応できるようなOEMやSDKオプションを用意する予定
・ユーザーが圧縮率を選択可能

Lucas氏は、製品の開発の進捗について以下のように述べています。「最終的には、ボード上で実行する圧縮および復号するアルゴリズムをHTC Viveで使用すると、1ms未満のレイテンシーで約95%のデータ圧縮が可能になりました。」

気になる圧縮した際の画像の劣化は、サンプル画像のV3(最新版)を見る限りはほとんど非圧縮と遜色ないレベルと言え、実際には90Hzで動作することを考えると、特定のシチュエーション以外はほぼ問題ないと言えます(V1,2は開発途中版)。

IMRメンバーと米メディアRoad to VRの記者の対談によると、独自開発したアルゴリズムは特許も出願しています(United States Provisional Patent Application No. 62/351738 – “IMAGE COMPRESSION METHOD AND APPARATUS”)。

無線通信の通信距離は使用する周波数帯や圧縮率にもよりますが、理論上は50m程度通信できます。現在、ヒアリングしているVRアーケード企業からは30m x 30mで通信したいという要望があり、それをターゲットとしているとのこと。

構成上の利点として、搭載されたCPU上ですべての処理を行い、PCから独立することで、非常に高速かつ安定して動作することが可能です。また、インストールするソフトウェアやドライバも必要ありません。

価格については、生産数などにも影響されますが、およそ約1,200ドルから1,500ドルになる予定。VRアーケードなどのビジネス向けのユーザー、テーマパーク、トレーニングなどをターゲットにしています。

(参考)

IMR are Building a Wireless Video System to Power 4k Per-Eye VR Headsets – (英語)

http://www.roadtovr.com/imr-building-wireless-video-system-power-4k-per-eye-vr-headsets/

Immersive Robotics – (英語)

http://www.immersiverobotics.com/

この記事を書いた人

  • あつぽん

    日本でMRシステムの開発に携わった後アメリカへ渡り、VR/MRシステムを企業へ導入するための検討・開発に従事。現在は日本在住。

    人間の能力そのものを拡張させるテクノロジー「ヒューマンオーグメンテーション」のコンセプトに惹かれ、その界隈の動向に強い関心を持っています。その中で実用化フェーズにあるVR/MRの盛り上がりをより広い範囲へわかりやすく伝えていきたいと思っています。

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