【VRDC2016】VRゲームはどの程度遊ばれているのか?統計で見る、VR市場と消費者の意識

現地時間2016年11月2日・3日に、アメリカはサンフランシスコにて「VRDC 2016」が行われました。

VRDCとはVirtual Reality Developers Conferenceのこと。会場では世界各地のVR開発者が集い、企業によるデモの展示、パーティによる開発者・企業間の交流、そして開発に関する知見を共有するセッションが行われました。

本記事ではその中で、『Data and Insights in the VR Market』と題されたセッションのレポートをお送りします。登壇したのはリサーチ企業「EEDAR」からパトリック・ウォーカー氏。

セッションでは、VR業界に関する様々な統計データが公開されました。

VRDC2016で行われた全セッションはこちらから視聴可能です。(すべて英語)

VR/ARに関する投資額

VR/ARに関する投資額の推移から、セッションは幕を開けました。

Oculus RiftがクラウドファンディングKickstarterに登場したのが2012年、その翌年2013年にはVR/AR分野の投資額はおよそ2億ドルとされていますが、2016年末には11億ドルにまでのぼる予測です。

これらの数字にはシード、シリーズABCの各ラウンドが含まれていますが、買収やMR(Mixed Reality)デバイス「Magic Leap」に関する投資は含まれていません。Magic Leapは、マイクロソフトのHoloLensの比較対象に持ちだされますが、2016年11月現在開発中であり、詳細は不明。しかしデバイスの外見すら不明であるにも関わらず、2016年4月の段階で22億ドル以上の資金調達を成功させています。

現在のコンシューマー向けVRデバイスの分布

この図は現在メジャーとされるVR/ARのHMDを売り出している企業を、「手に取りやすさ」「没入感の高さ」の2グループに分類し、それぞれのデバイスの価格・2016年末の推定普及台数をまとめたものです。

PSVRは世界中でのPlayStation 4の普及台数(300万台以上)を考慮して、やや「手に取りやすい」デバイスに寄っています。事実、年末までの推定普及台数も世界中で150万台(オレンジの折れ線)とされ、ハイエンド向けのVRHMDとして肩を並べるOculus Rift(25万台)やHTC Vive(20万台)から頭一つ抜けています。

なお先日2016年10月には、HTC Viveの売り上げは14万台と公式に発表がありました。2016年8月のアナウンスでは10万台とされており、2か月で4万台を売り上げています。

VRHMDの販売台数などの具体的な数値は、ほとんど公表されておらず、このような予測値しかないのが現状です。

いくらなら買う?VRHMDを所持していない消費者の意識

VRデバイスを持っていないアメリカ在住の消費者3800人に、「いくらまでならVRデバイスにお金を出すか?」というアンケートを取ったもの。

現在ハイエンド向けVRデバイスとして代表的なOculus RiftやHTC Viveが属する価格帯(およそ7~10万円)であっても買うと答えた人はわずか4%にとどまっています。

PSVRの価格(およそ5万円前後)でも買うと答える人は全体の約20~30%です。

キリのいい数字として、「(約)3万円までなら出せる」と答えた人まで含めると全体の60%になります。また現在スマートフォンを用いてミドルレンジの層で展開しているGear VRやGoogleのDaydreamの価格である約1万円では、およそ85%の人が買っても良いと答えています。

VRアーリーアダプタの人物像

図中の青い棒グラフは「非VRゲームに年間いくらのお金を使うか」を表し、オレンジの折れ線グラフは「一週間の平均ゲームプレイ時間」を表しています。

3つのグループは、左から「アクティブな非VRゲーマー」「VRデバイスを持っていないが買おうと考えているゲーマー」「PCで駆動するハイエンドVRデバイスを持っているゲーマー」です。

アンケートを取った母集団は、アメリカ在住のOculus RIftまたはHTC Viveの所持者200人。

VRデバイスを所持している人は、非VRゲームに関しても、他のゲーマーより多くのお金を費やしていることが分かります。VRデバイス所持者だけのデータを細かく解析すると、彼らは平均年収600万円、87%が大学卒以上で72%が男性、平均年齢は30歳という集団だったそうです。

VRデバイス所持者はVRコンテンツにも平均1.6万円使っており、どちらのデバイスを購入した人であれ、75%以上の人がVRHMDの購入に「満足している」と答えています。

メジャーなテクノロジー関連サイトにおける、各ハイエンドVRHMDの評価点の比較です。全てのサイトで全てのHMDが80点を超えており、全体として好評価と言えます。

ハイエンドVRのコンテンツ数と価格

この図は、Ocuus Rift(灰色)、HTC Vive(青白色)、PlayStation VR(オレンジ色)それぞれについて、いつ、いくらのコンテンツが、いくつ出たかということを表しています。2016年10月のPSVR発売と同時に、オレンジ点が出現しているのがわかります。

コンテンツ数はHTC Viveが群を抜いています。またHTC Vive向けのものは、主にSteamで配信されていますが、比較的低価格なコンテンツが多いのも特徴です。

なお、HTC Viveの点を除くと上の図のようになります。

ローンチ後3か月で登場したコンテンツ数

各プラットフォームにおいて、発売から120日間のうちにリリースされたコンテンツの数です。こちらもHTC Vive向けソフトが242タイトルと群を抜いています。(なお、Oculus RiftとHTC Vive両方で遊べるタイトルは、このSteam VRの項には含まれていません。)

VR向けのタイトルは、既存のゲームプラットフォームに比べて多いことが分かりますが、「これは買うべき」と最高評価を受けたソフトはPSVRで一本あるだけで、その数が非常に少ないのが現状です。

SteamにおけるVRコンテンツの売り上げ状況

この図はSteamで配信されているVRコンテンツの通常価格×購入人数で売上を算出し、コンテンツの価格ごとにプロットしたものになります。

15ドル(約1500円)以下のコンテンツのほとんどは、20万ドル(約2000万円)以下の売り上げにとどまっています。一方、20ドル(約2000円)および35~40ドル(3500~4000円)のコンテンツの中には、売り上げが140万ドル(1億4千万円)程度のものが存在します。

それぞれ20ドルで最も売り上げているコンテンツは『Audio Shield』、35ドルは『Hover Junkers』、40ドルは『Raw Data』となっています。

さらにこれを価格ごとではなく「ユーザーの評価ごとの売り上げ」として並び替えた図がこちら。『Hover Junkers』も80点と高評価ですが、売り上げトップクラスの『Raw Data』と『Audio Shield』は90点台をマーク。

この図から、評価が高ければそれだけで圧倒的な売り上げに繋がる、というわけでもないことがわかります。

コンテンツ購入の動機

Oculus RiftとHTC Viveを持っているアメリカ在住の200人に訊いた「VRコンテンツを購入した理由」の統計です。

最も高いのは「ユーザーの評価」と「トレーラー映像・公式サイト」という要因です。特筆すべきなのは「価格」という項目が第5位である点。ウォーカー氏いわく、「価格が上位に来ていないプラットフォームは他に類を見ない」とのこと。

ユーザー評価とプレイ時間の関係

Steamでのユーザー評価ごとに、コンテンツの総プレイ時間を見たものです。『Virtual Desktop』はVR空間でPCを使うというコンセプトから、常時使用する性質のコンテンツであり、例外的なプレイ時間を記録しています。

しかしそれ以外には、評価と総プレイ時間に意味のある相関は見られませんでした。ほとんどのコンテンツは、総プレイ時間が200分以下に収まっています。

しかし、ユーザーの評価と「もう一度プレイするか」という項目は、相関が見られます。この図は、ユーザーの評価ごとに、過去2週間にそのコンテンツで遊んだかどうかを聞いたものです。ユーザースコアが高いほど、ユーザーは「もう一度やりたい」と思う傾向にあります。

縦軸の%は、2週間以内にプレイした人数を、合計のプレイ人数で割った値です。

この図はSteamで人気な非VRタイトルとの比較。

図中の棒グラフは総プレイ時間(オレンジの棒グラフは『Virtual Desktop』)、オレンジの折れ線グラフは過去2週間にそのコンテンツで遊んだ人の割合です。

登場して日が浅いVRコンテンツは、総プレイ時間こそ人気タイトル(棒グラフの右2つ『Dark Soul lll』『The Division』)に及ばないながらも、過去に週間に遊んだ人の割合は概ね互角なのです。

VRの将来

ウォーカー氏はVRの未来について「NetflixやVirtual Desktopのように日常的に使うタイプのものと、『The Lab』や『Raw Data』のようにVR世界を堪能するゲームタイプのもの、2種類の道があるだろう」と語ります。

そしてこれら2つの道に対して、それぞれ向こう3年で起き得ることを述べました。2017年にはGoogleのハイエンドモバイルVRプラットフォーム「Daydream」が「身近なVR」として広まります。一方でOculusのハンドコントローラーTouchの発売は2016年12月。圧倒的な手の実在感を実現するコントローラーの普及で、2017年は「世界に没入する」タイプのVRも一歩先へ進むでしょう。

2018年にはOculusが開発していると公表したスタンドアロン型のハイエンドHMDや、日本発FOVEなどの視線追跡機能が搭載されたHMDが徐々に登場してくることが予想されています。ウォーカー氏は、この頃には「身近なVR」として、Facebook(2014年にOculusを買収)やAppleが何か新たなものを市場に送り出すのでは、ともコメントしました。

最後にウォーカー氏は、VRの市場が勢いを増して拡大することを予測しました。2018年にはモバイルVRの時代が訪れ、今よりもっとVRが身近な存在となり、市場規模は80億ドル(約8,000億円)にまで上り詰めるという予想です。

1980年ごろに端を発したVR技術。2016年は消費者向けVRデバイスの登場が相次いだことから「VR元年」とも呼ばれています。既にこれまでの間にも驚くような出来事がたくさんありましたが、VRはまだまだこれからという段階なのです。これからVRはどこへ向かってゆくのか、来年以降も非常に楽しみですね。

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この記事を書いた人

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    工学専攻の大学生。好きな科目は国語。趣味は歌などの創作でボーカロイドも使います。SAOのような物語が引き起こす、自他の文脈や人と世界の関係の集積へダイブすることを切望して止みません。将来もVRの傍に立っていたいと思います。

    Twitter:@yunoLv3

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