10月29日、VR技術に携わる開発者会「JapanVR Fest」(旧オキュフェス)が日本科学未来館で開催されました。今回は「皆の10分を繋げてVRの未来を作る」と題し、VR開発の知見を10分間のライトニングトーク(LT)で発表するイベントとなりました。
本記事は、主催による桜花一門氏の「VRでの痛みの与え方」に関する10分間LTのレポートです。
ゲームにおける“失敗=死”の概念を成り立たせる
“1人称で自分が死にまくる”VRアクションゲーム「Chainman」を製作している桜花一門氏。実装を進めていく上で、実際には死んだ時に何が起こったのかわからないと思うほど、予想よりもゲーム内で死んだという感覚が薄かったと語ります。
死んだという実感が薄く、死んだ時に理不尽さしか残らないため、ゲームで大切な“失敗=死”という表現が成り立たないことに気がついた、と桜花一門氏は続けます。
そこで桜花一門氏は、死を感覚的に体験するための「痛み」や「恐怖」に注目。痛みや恐怖を与える専門家である「女王様」を招き、それらをどのように演出しているのか詳しく聴くことにしました。
痛みや恐怖を増幅させるプロセスとは?
「痛み」を増幅させるために恐怖を演出するプロセスは全部で5つ。
・はじめに、女王様の持つ鞭を別のものに当てて破壊力を視覚的に想像させ
・2番目に音で怖がらせ
・3番目に鞭を顔にかすめさせて速さを見せつけ
・4番目に軽いモーションで打ち、近くの重そうなものなどを倒すことで全力の時の鞭の威力を想像させ
・ようやく最後の5番目で、全力で打つ
というものです。
感覚を増幅させて知覚させる他の例
続けて桜花一門氏はロウソクの与え方を例にあげました。実際にはそれほど熱くない低温ロウソクも、400度以上もある火を先に近づけて熱さを体感させ、「ロウも同じくらい熱いだろう」と想像させてからロウを垂らすことで熱く感じると語ります。
感覚を高めさせるのに必要なものは「想像力」
桜花一門氏は結論として、たとえばVRで雪景色が映されている時に現実で送風を与えると、実際以上に寒く感じるような、感覚を錯覚する現象である「クロスモーダル現象」も例にあげました。恐怖を与えるための材料として「人の想像力」を超えるものはなく、どのように想像力を膨らませてあげるかが大事だと語りました。
今回のように「物理的に与えられない感覚をどう知覚させるか」という内容をはじめ、今後さまざまな知見が共有されることで、よりバリエーションのあるVRコンテンツが生み出されることが期待されます。