VRの事業化を目指して。VRをテーマにした2つのスタートアップのCEOが共有した知見

9月3日(木)、NPO法人IGDA日本の主催で「VR事業化勉強会」が開催されました。集まったのはVRコンテンツのクリエイターら70名と満員。講師として登壇したのは、先日、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を行ったVRコンテンツ企業「DVERSE Inc.」のCEO沼倉正吾氏と世界初のアイトラッキングシステム搭載のヘッドマウントディスプレイを開発している、「FOVE Inc.」のCEO、小島由香氏でした。
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「資金調達および事業計画のつくりかた」

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「DVERSE Inc.」CEO沼倉正吾氏

PCゲーム市場から見る日本のVR業界とは

まず沼倉氏はVRをとりまく業界の状況から講演を始めました。国内の市場調査より、2007年からコンソールの売り上げが右肩下がりになっている事を言及した後、1987年には「PCエンジン」「FF1」「ドラクエ2」などが発売され、2006年が飛びぬけている訳はDSやwiiのヒットだったとグラフについて解説しました。

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一方、海外ではPS4の出荷台数に加え、PCベースのゲーム市場が大きい事など、日本と異なる点をいくつか指摘しました。

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VRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)についても、PCベースのゲームは海外が先行している事から、市場の小さな日本のPCゲーム市場は不利であると主張。「プラットフォームが形成されていないところに大きな投資する事は、なかなか会社はできないため、作りたくても作れない。その間に、海外ではVRに対する投資がどんどんされている。日本と海外でVRに対する投資額の差が開いている状況。」とコメントしました。国内でVR開発をやりたいのであれば、海外でキャラクターIPを持っている大手の会社などに入った方が早いとのこと。他の道を探すのであれば、フリーランスでの受託という形になりますが、国内からの受託はなかなか厳しいので基本的に海外との関わりが生じます。

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会社やチームの立ち上げに必要なもの

「今、ひとりで開発をされている方が多いと思います。趣味でつくっていたり、会社が終わった後につくるなど。まず、会社をつくるつくらないという話は別にして、チームを見つけて欲しいと考えています。」と、沼倉氏。日本は1人で開発している開発者が多いため、コンテンツもわりと小粒になってしまうことに言及しました。「日本のコンテンツは、一発ネタみたいなものが多くなってしまう。チームで何かをつくった方がより良いものができるので、まずはチームづくりからはじめて欲しい。」とのこと。海外ではチーム体制でやっている開発が多い事に触れ、チームを組む事を参加者に推奨しました。

そして、スタートアップの考え方として3つの役割を持った人間が必要であると解説しました。

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「ハッカーは会場にいるエンジニアの皆さんのような方です。」とコメントした後、ハスラーとは、いわゆるプランナーであり、「DVERSE Inc.」の中では沼倉氏はハスラーの役割をしているとのこと。「私自身コーディングはしませんが、事業を立案したりお金を集めたりといった運営をしたりします。」と語りました。ヒップスターは、簡単に言えばデザイナーの事です。アプリなどのデザインは特に海外で注目されているため、デザインがしっかりしていないとそもそも相手にされません。

ファイナンスについて

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この講演ではファイナンスの基本的な知識についての解説もされました。資金調達には、銀行や個人投資家などからお金を借りる方法、VC(ベンチャーキャピタル)を使う方法について言及しました。
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VCはキャピタルゲイン(株式を保有し、価値が上昇した場合、元の株式の買値との差額分の利益のこと)で利益を得るため、株式の価値を高めてくれる会社にしか投資をしません。そのため、注意点として単純に黒字を出していることは求められていない事を指摘しました。「銀行などで借りた場合、毎月、利子と元本を少しずつ返せばいいのですが、VCはそれを全く求めていません。VCが求めているのは、圧倒的なリスクをとる代わりに、大きなリターンを得るという事です。」とコメント。VCと話をする際、VCが求めているものを自分の中で構築しないと、話がかみ合わなくなる事があります。

スタートアップの一生

企業のファイナンスには以下の2種類があります。

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デットファイナンスとは異なり、5から7年で企業価値を上げなければいけないエクイティファイナンス(株式を投資家に購入してもらうことで資金を調達する方法)を利用しているスタートアップには宿命がある事について解説。スタートアップは、アイデアレベル、プロダクトリリースレベルといったそれぞれのステージ毎に資金調達を行う(これをラウンドと呼ぶ)ため、それぞれで企業価値が目標値に達していないと、つぎの資金調達を得られずに死亡してしまうリスクがあると言います。

スタートアップの一生
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ベンチャー企業の一生
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これからVRに挑戦する人へのメッセージ

「新しいものをやれば、だいたい失敗します。これを「千三つ」(千個だしてもあたるのは3個のこと)と言います。一方、テクノロジーとのその普及の速度はどんどん速くなっています。スマホやタブレットが普及するのには10年とかかっていませんが、こうした新技術の普及速度はさらに加速すると思われます。こういった時代背景があると、まず誰よりも早くプロダクトをリリースする事が先決です。そしてなにより、その分野で失敗をした方がいい。今の時代、起業して失敗してもダメージは少なくなってきていると感じています。」と語りました。

沼倉氏の場合、2013年の9月に前の会社が倒産し一度自己破産をしていますが、1年後には新しい会社を設立し、その6か月後に投資を受けています。失敗する事で、「これは駄目だったんだ」と分かり、その知見を人より早く持っている人が勝つとのこと。人より早くリリースして人より早く失敗する事が大切だと解説した上、もう一度新たにチャレンジするなどの方向転換が必要な事にも触れました。「とにかくチャレンジした方がいい時代に入ってきています。デットファイナンスでは、個人が多額の借金をふっかぶる上にプロジェクトのほとんどは失敗します。そのため、いかに退場せずにチャレンジしていくために、エクイティファイナンスを活用するべきと思っています。」と語りました。失敗するのは当たり前。何回リングやバッターボックスに立つかが重要とのこと。経ち続けていればヒットを打てる日が来るとコメントした上、現在は舞台に上がり続けるためのものが揃っていると語りました。「私も、もの凄い勢いで失敗しましたが、また舞台にあがり、バッターボックスでバッターを振ろうとしています。計画通りにいかない事やもの凄く悪いことが最悪のタイミングで起こる事はよくありますが、死なないから大丈夫ですバンバンやって下さい。相談にも乗ります。」と自身の経験を踏まえ、参加者にエールを送りました。

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小島氏によるフリートーク

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次に登壇したFOVEの小島氏は、アクセラレーションプログラムを有効的に使う事について語りました。「アクセラレーションプログラムは、予備校のようなもの。アイデアと意欲のある人にシードマネーをいれてくれる上、よちよち歩きの人を立てるぐらいまで育ててくれる」と解説。リスクが少ない事もメリットとのこと。FOVEは、「RIVER」と呼ばれる世界初のVR専門のアクセラレーションプログラムにも参加しています。そこでは、同期のプロジェクトの開発者との距離が近いため、顔を知ってもらう意味でも、とても良かったとのこと。ここまで聞くと、みんながアクセラレーションプログラムを受ければいいのではないかと思われますが、例えばFOVEの参加した「Microsoft Ventures」は合格率3%です。「最も有名なY Combinatorや500 Startupsといったアクセラレーションプログラムでは、VRがホットトピックになっているため、入りやすくなっているかもしれません。」と補足しました。

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(参考)
VR事業化勉強会
http://www.igda.jp/?p=1623

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この記事を書いた人

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    先端技術好きなデザイナー。VRでは、MVコンセプトアート制作や360度カメラを使用した企画に関わる。多摩美術大中退、CI開発から書籍装丁等の様々なデザイン業務に従事。 THETA LOVERだゾ。

    Twitter:@sayamecci

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    http://www.moguravr.com/writers/