ヘッドセットが目指す究極的なゴールの一つとして、現実空間を見ている場合と区別がつかない解像度の実現が挙げられます。
モニタの解像度を表す際には、1920×1080と画素数を述べるのが便利です。ARやVRのヘッドセットにおいては、解像度よりも角度あたりの画素数(角画素密度)が指標として扱いやすいとも言えるようです。(※ディスプレイ業界では、インチごとのピクセル数を示すppiも使われる)ヘッドセットが目指す究極的なゴールの一つとして、現実空間を見ている場合と区別がつかない解像度の実現が挙げられます。この記事では、この究極的な解像度と、現状のヘッドセットの解像度にどれだけ開きがあるのかを見ていきたいと思います。
なお、本稿の元記事は、「Sensics」のCEOであり、かつ「OSVR」の共同創業者であるYuval Boger氏のRoad to VRへの寄稿に基づいています。
60角画素密度が1つの目標点
ヒトの目をデジタルカメラで表現するなら、その中心窩は、角度あたり60画素(60角画素密度)の解像度を有していると言えます。別の見方をすれば、画質という側面に限ると、60角画素密度の精細さがあればヒトの目においては十分だと言うことができます。
※勿論、ヒトの目の解像度と、ヘッドセットの画素密度が意味するのは必ずしも同じものとは限りません。しかし、このように捉えることで、ヒトの目の解像度とヘッドセットの解像度を大雑把ではあるものの比較することができるようになります。
各VRヘッドセットで実現される角画素密度は次のように計算することができます。
[角画素密度] = [水平方向の画素数] / [レンズの水平視野角]
例えばOculus Rift DK1であれば、片目のディスプレイの解像度は”640×800”、そしてレンズの水平視野角は90度であるため、7角画素密度(=640/90)となります。そしてこれは、初めに述べたヒトの目の解像度と比べると、約9分の1という密度であることがわかります。
以下にいくつかのヘッドセットの画素密度を比較した表を記載します。
VRヘッドセット | 水平方向の画素数[pixel] | おおよその水平視野角[degree] | おおよその角画素密度[pixels/degree] |
Oculus Rift DK1(開発者版) | 640 | 90 | 7 |
OSVR HDK1 | 960 | 90 | 11 |
HTC Vive | 1080 | 100 | 11 |
Sensics dSight | 1920 | 95 | 20 |
Sensics zSight | 1280 | 48 | 27 |
Sensics zSight 1920 | 1920 | 60 | 32 |
ヒトの中心窩 | – | – | 60 |
※編集注:マイクロソフトのHoloLensの角画素密度は47ピクセル
これまでのところ、ハイエンドのVRヘッドセットと、簡易型のVRヘッドセットの違いの一つに画素密度が挙げられます。ここでEpicGamesのVRデモである『Showdown』を例に、画素密度による見え方の違いを比べてみます。なお、参考として60角画素密度(この画を写しているモニタと、そのモニタを見ている体験者との位置関係にも依ります)の画像を用意しました。合わせて、こちらを30、15、7.5角画素密度とダウンサンプルした画像も並べました。
先の表と合わせて考えると、既存のVRのヘッドセットで実現されている解像度は、現実空間を見る際の解像度と比べると粗く、改善の余地が多分に残されていることがわかります。
(参考)
Understanding Pixel Density & Retinal Resolution, and Why It’s Important for AR/VR Headsets(英語)
http://www.roadtovr.com/understanding-pixel-density-retinal-resolution-and-why-its-important-for-vr-and-ar-headsets/
※Mogura VR は、Road to VRとパートナーシップを結んでいます。