「VRヘッドセットは欲しいけど、どれが良いのか分からない」と悩んでいる方は多いはず。実際、VRヘッドセットの種類は多く、その違いを見極めるのは難しいもの。しかし「VRヘッドセットで何がしたいか?」に着目すれば、どれを買うべきかは絞られます。今回は用途別におすすめのVRヘッドセットを紹介します。
目次
購入前に注意すべきこと
用途①:よくわからないけど、とにかくVRやりたい!
用途②:VRゲームをガッツリ遊びたい!
用途③:「VRChat」に行きたい!
用途④:VR空間で3Dモデルを動かしてみたい!
用途⑤:VRライブを観に行きたい!
用途⑥:PCはないけど、PS5なら持っている!
用途⑦:寝転んで大画面で動画やブラウザを見たい!
補足:Meta Quest Proってどうなの?
補足:Vision Proってどうなの?
「VRでなにがしたいか」をしっかりと決めてから
付録:各ヘッドセット比較表
購入前に注意すべきこと
VRを使うときは、自分の周囲に十分なスペースを設けることが推奨されます。必要なスペースはコンテンツによってまちまちですが、少なくとも両手を広げたままその場で回転して、障害物にぶつからない程度の広さはほしいところ。事前にプレイスペースを確保しておきましょう。
用途①:よくわからないけど、とにかくVRやりたい!
まだVRがよく分からず、PCも詳しくない場合、PC接続型ではないVRヘッドセットを選ぶのが無難です。おすすめは以下の2つです。
Meta Quest 2
Meta Quest 2は「一体型」と呼ばれるVRヘッドセットです。最大の特徴はヘッドセットだけで動作する点。ハイスペックなPCやケーブルは不要です。開封したその瞬間にヘッドセットをかぶれば、一瞬でVRの世界に飛び込めます。
販売価格は47,300円(税込)から。比較的優秀な性能が共存している点が魅力的です。コントローラーも直感的に扱いやすく、コンテンツも充実。「右も左もわからないがとりあえずVRを体験してみたい」という人にオススメです。
さらに、USBケーブルによる有線接続の「Quest Link」や、Wi-Fi経由による無線接続の「Air Link」を使えば、PC接続型VRヘッドセットとしても利用出来るのも特徴です。あとからPCVRコンテンツにも触れられるため、将来性にも期待できます。
以前は使用するためにFacebookアカウントが必須でしたが、2022年8月から「Metaアカウント」という独自のアカウントシステムへ移行したため、Facebookアカウントは必須ではなくなりました。
Meta Quest 3
Meta Quest 3は、Meta Quest 2の後継機にあたるVR/MRヘッドセットです。Meta Quest 2と同様にヘッドセット単体で動作し、USBケーブルやWi-Fiを用いることでPC接続型VRヘッドセットとしても利用できます。
最大の特徴は、MR(Mixed Reality、複合現実)機能の搭載です。フルカラー表示に対応しており、現実世界に様々なバーチャルなコンテンツを表示することができます。また、ヘッドセットを装着したままでも、ヘッドセット外部の現実世界の様子をフルカラーで鮮明に見ることができる、「パススルー」機能が持ち味です。
本体も改良され、Meta Quest 2よりもスリムになりました。グラフィック性能もMeta Quest 2と比較して2倍以上の性能に達しており、一部のゲームなどはMeta Quest 2以上の画質でプレイできます。
販売価格は74,800円(税込)から。Meta公式ストアのほか、ECサイトや国内家電量販店にて購入できます。
PICO 4
PICO 4は「一体型」のVRヘッドセットのひとつです。Meta Quest 2と同様に、ハイスペックなPCやケーブルは不要。ヘッドセットをかぶるだけでVRの世界へ飛び込めます。
価格は49,000円(税込)から。基本的な性能はMeta Quest 2と同格ですが、画面の鮮明さ、トラッキング範囲の広さなどが優れています。そしてなにより、Meta Quest 2より本体重量が軽いのが特長です。
USBケーブルやWi-Fi経由によって、PC接続型VRヘッドセットとしても利用できるため、将来性も十分です。ただし、アプリのラインナップはMeta Quest 2の方が優勢。「Beat Saber」や「バイオハザード4 VR」など、PICO 4に配信されていないタイトルもあるため、事前に遊びたいタイトルは確認しておくことをオススメします。
Pico Neo 3 Link
Pico Neo 3 Linkも「一体型」のVRヘッドセットで、ハイスペックなPCやケーブルを準備しなくとも、かぶるだけでVRの世界に飛び込めます。
基本的な性能はMeta Quest 2とほぼ同一です。違いは、対応アプリケーションのラインナップ、専用のDisplayPortケーブルを用いた、より高画質なPC接続型VRヘッドセットとして利用できる点が挙げられます。また、Facebookアカウントは不要です。
もう少し価格を抑えて手軽にVRを体験してみたいという人や、ゆくゆくは高品質なPCVRをじっくり楽しみたい人には、Meta Quest 2より最適かもしれません。ただし、まだまだ対応アプリケーションは少なめなので、遊んでみたいゲームが配信されているかどうかは事前にチェックしておきましょう。
用途②:VRゲームをガッツリ遊びたい!
VRゲームをガッツリ遊びたい場合は、外部センサーを設置するタイプのVRヘッドセットがおすすめです。トラッキングが安定するため、特に「Beat Saber」などの身体を激しく動かすVRゲームとの相性が良好です。
VRゲーマー向けのヘッドセットですが、購入にあたっては2つ注意するべき点があります。ひとつは上記の通り、部屋の中にトラッキング用のセンサーを何台か設置する必要があります。設置する上で十分な高さはもちろん、壁に穴を開けてネジ止めが可能か(ダメなら固定できる代替案はありそうか)を事前に確認しておきましょう。
もうひとつは、PCのスペックです。以下にてご紹介するヘッドセットは、いずれもPCに接続する、ハイエンドクラスのVRヘッドセットであるため、動作にはPC自体に相応のスペックが必要です。基本的にはミドルクラス以上のゲーミングPCならば問題ないことが多いですが、使いたいVRヘッドセットや遊びたいコンテンツによって、要求スペックは上下します。なおゲーミングノートの場合、ものによってはグラフィックボードの影響でうまく動作しないこともあるため、注意です。
VALVE INDEX
総合的な性能を重視したいならば、VALVE INDEXがオススメです。解像度・視野角ともに優秀で、耳への負担が少ないイヤーオフスピーカーなどの独自機構などにより、VR体験の没入感はトップレベルです。ただし本体の重心バランスが前のめりで、長時間使用するには負担が大きめ。短時間みっちりと遊び倒すのに向いています。
また両手に装着し、五指の動きや圧力まで検知する、INDEXコントローラーの使い勝手も抜群です。ちなみに、INDEXコントローラーは単体でも動作し、HTC VIVE Proなどと組み合わせて使用できるので、コントローラーだけ購入するのもひとつの手です。
VIVE Pro
VIVE Proは、ハイエンドなVRヘッドセットの中では手堅い一台です。HTC VIVEシリーズの上位機種で、解像度の高さや良好な装着感、重心バランスの良さから、オールマイティに使いやすいのが特徴といえます。
VIVE Pro 2
より高性能を追求したいならば、VIVE Proの後継機種であるVIVE Pro 2が候補に挙がります。5K相当の解像度を有する、現行のVRヘッドセットの中でも特に画質面でレベルの高い一台です。PCの要求スペックが非常に高く、ヘッドセット単品のみの販売となっているため、既存VIVE製品からの乗り換えではない場合、コントローラーやセンサーは別途購入が必要となる点は注意が必要です。
VIVE Cosmos Elite
もう1台、VIVEシリーズの中でも手堅いハイエンド機種として、VIVE Cosmos Eliteも捨てがたい選択肢です。こちらはVIVEの新シリーズ・VIVE Cosmosの外部センサー対応タイプです。安定した解像度を持ち、フリップアップ式のゴーグルを採用しているため、外の視界を見やすいという特徴もあります。VIVE Proより少し安価なのもポイントです。
用途③:「VRChat」に行きたい!
VRヘッドセットを買う理由のひとつに「VRChat」を挙げる人は多いはず。基本的には軽く遊ぶだけなら、どんなVRヘッドセットでも問題ありません(※PSVR2など非対応のものを除く)。ただし目的などによって最適な選択肢が異なります。「VRChat」を遊ぶ上で最適なデバイス構成を以下の記事でご紹介しているので、ご参照ください。
用途④:VR空間で3Dモデルを動かしてみたい!
「VRChat」はもちろん、それ以外のソーシャルVR(メタバース)で動画撮影をしてみたり、VTuberのように3Dモデルの姿で配信をしてみたい、という方もいると思います。
この目的でVRヘッドセットを購入するなら「フルトラッキングにするか?」、「どれくらい利用するか?」といった目的から選択肢を絞ります。考えられる組み合わせをいくつかご紹介します。
Meta Quest 2 + mocopi
2023年時点で最も手軽な選択肢は、VRヘッドセットにMeta Quest 2を採用し、モバイルモーションキャプチャー「mocopi」と組み合わせる方式です。
mocopiは、ソニーから発売されているモーションキャプチャーデバイスで、1つ8gの小型軽量センサーを6つ身体に身に着けます。スマホの専用アプリからPCと連携することもでき、関連ソフトウェアとの組み合わせで3Dモデルを自由に動かすことができます。
Meta Quest 2本体とも連携し、Meta Quest版VRChatへモーションを送信することも可能です。無線かつ小型軽量な「フルトラッキングVRChat」を実現できる組み合わせでもあります。
とにかく軽量さが持ち味で、かつ比較的安価な構成と言えます。対応スマホが必要である点と、PC連携の場合は一定スペック以上のPCが必要になりますが、それらがそろってる場合はエントリーモデル的な構成と言えるでしょう。
応用として、PCとの接続を前提とするならば、PICO 4でも代用が可能です。また、同じくPCとの接続を前提とする場合、フルトラッキングデバイスには「HaritoraX」「Uni-motion」などの選択肢もあります。
なお、mocopiはスマホと組み合わせるだけでも動作するため、手軽に3Dモデルを動かす映像を撮りたいときにも便利です。公式アプリにはAR合成機能も備わっているので、屋外ロケも実施できます。
VIVE Pro Eye + INDEXコントローラー + VIVEトラッカー + VIVEフェイシャルトラッカー
VIVE Pro Eyeをヘッドセットとして採用し、その上でVALVE INDEXのINDEXコントローラーを導入。VIVE Trackerと、表情トラッキングデバイス「VIVEフェイシャルトラッカー」も装着するという組み合わせです。
表情(目の動きと口元全体の動き)、指の動き、そして全身の動きを全部トラッキング可能で、アバターの表現力を現状考えられる限りの最高レベルまで高められます。ただし、アイトラッキングとフェイシャルトラッキングまで対応しているVRコンテンツは、現状限られているので注意が必要です。
動きにこだわらないなら……
全身を動かす必要がなく、上半身だけ動けばいい配信のような場面では、無理にVRデバイスなどを使わず、Webカメラベースのフェイストラッキングソフトウェアを使う選択もあります。例えば「Luppet」を用いれば、ハンドトラッキングデバイス「Leap Motion」を併用して、両手も含めた上半身の動きを高精度にトラッキングできます。
そのほかにも配信向きのソフトウェアはいくつか存在します。以下の記事をご参照ください。
用途⑤:VRライブを観に行きたい!
「VRライブに参加したい」ときは、長時間の装着が苦にならないヘッドセットがおすすめ。ただし現状では各ライブプラットフォームごとに対応VRヘッドセットが異なるため、まずは行きたいVRライブの対応プラットフォームを調べておきましょう。以下は簡易ですがその組み合わせです。
対応ヘッドセット | デスクトップ対応 | スマホ対応 | |
cluster | Meta Quest 2、Oculus Rift、Oculus Rift S、VIVE、VIVE Pro | ◯ | ◯ |
VARK | Meta Quest 2、PlayStation VR | ✕ | ◯ |
ライブによってはデスクトップPCやスマホからでも鑑賞できますので、必ずしもVRヘッドセットが必須ではありません。
とはいえ新たなプラットフォームも続々と登場している状況なので「30分~1時間装着しっぱなしに耐えられる」と思えるヘッドセットを用意しておくと、いざという時に困りません。
用途⑥:PCはないけど、PS5なら持っている!
「ゲーミングPCは所持していないけど、PS5ならば持っている」という方には、「PlayStation VR2(PSVR2)」という選択肢もあります。
2023年2月22日に発売されたPSVR2は、4KHDRという高画質、視線追跡(アイトラッキング)機能などを備え、旧型機種「PlayStation VR」より大幅な進化を遂げています。専用コントローラー「Senseコントローラー」はグリップ感も良好で、触覚フィードバック機能も搭載。さらにヘッドセット本体にも振動機構を搭載しており、VR体験時の没入感を大きく引き上げる機構が備わっています。
対応コンテンツはPlayStation Storeに依存するため、「VRChat」などの一部定番タイトルが遊べないことには注意です。ただしPSVR2でしか遊べないタイトルが多く、「Horizon Call of the Mountain」や「グランツーリスモ7」「バイオハザード ヴィレッジ」といったビッグタイトルもあります。
販売価格は74,980円(税込)。対応機種はPS5のみで、PS4では動作しません。
用途⑦:寝転んで大画面で動画やブラウザを見たい!
単純に寝転がりながら動画や漫画、SNSなどを見るだけで十分という方も少なくないはず。VRだと好きなサイズで映画館のような大画面で見ることができます。そんな用途においても、Meta Quest 2やMeta Quest 3は最適解です。なにより解像度が高く、そして動画プラットフォームもYouTube、Amazonプライムビデオ、Netflix、DMM動画など幅広く対応しています。
Meta Quest 2とMeta Quest 3を比較した場合、Meta Quest 2は安価であることがポイント。一方、Meta Quest 3は、前機種より高画質かつ軽量で、現実世界の上に直接YouTubeなどの画面を表示することができる点で優れています。価格か性能か、どちらを優先するかで購入するものを検討するとよいでしょう。
VRヘッドセットにどうしても手を出しづらい人は、スマホ対応のVRゴーグルが良いかもしれません。VR体験の印象は大きく変わってしまいますが、スマホのみに対応したコンテンツも多く、何より非常に安価で購入できます。詳しくは下記のリンクを参考にしてください。
補足:Meta Quest Proってどうなの?
Metaから発売されたMeta Quest Proが気になる、という方もいるかもしれません。結論を先に述べると、Meta Quest Proは一般ユーザー向けのVRヘッドセットではありません。
Meta Quest Proは、ビジネス用途を想定したデバイスです。かつ、VRに加えてAR/MRにも対応している一方、デフォルトでは周囲の様子が漏れてしまう構造のため、そのままではVR用途にはあまり適していません。
なにより、販売価格が159,500円と高価なので、一般ユーザーがMeta Quest 2の上位互換のつもりで買うことはオススメできません。
補足:Apple Vision Proってどうなの?
Appleより発表されたApple Vision Proが気になる方もいるかもしれません。結論を先に述べると、Apple Vision ProはそもそもVRヘッドセットとして最適かどうか、現時点では未知数です。
Apple Vision Proは、”空間コンピューター”というカテゴリのデバイスです。ヘッドセット越しに見えるのは現実世界とバーチャルな情報を合成させたような映像で、いわゆる「MR」に該当します。一方で、周囲の映像をバーチャル環境へと置き換える、VR的な用途にも対応しているものと見られます。
とはいえ、このデバイスに関する情報はまだまだ少なく、VRヘッドセットとして十分に利用できるかどうかはまだわかりません。販売価格も3,499ドル(約48万円)と非常に高価なので、万人に手が届く商品とも言い難いところです。
「VRでなにがしたいか」をしっかりと決めてから
これまで紹介してきた中で、どの用途が自分にぴったり当てはまるのかを考えると良いでしょう。VRそのものは現在進行形で発展し続けているので、将来新しいコンテンツやプラットフォームが世に出た時のための「備え」として、少し背伸びをしたVRヘッドセットを選ぶのも良いでしょう。
2021年現在では、VRヘッドセットの貸出サービスや体験会イベントもあります。国内で実機に触れられる場所はそこまで多くないので、購入が不安な人はそういったサービスで試してみると実感を持ちやすいはず。
いずれにせよ高い買い物なのは間違いありません。「VRでなにがしたいか」をしっかり決めてから、最初のVRヘッドセットを選びましょう!
付録:各ヘッドセット比較表
お値段比較表
ヘッドセット | 価格(税込) |
Meta Quest 2 | 47,300円(128GB)/53,900円(256GB) |
Meta Quest 3 | 74,800円(128GB)/96,800円(512GB) |
PICO 4 | 49,000円(128GB)/59,400円(256GB) |
Pico Neo 3 Link | 49,280円(税込) |
VIVE Pro | 137,000円(フルセット) |
VIVE Pro Eye | 179,168円(フルセット) |
VIVE Pro 2 | 178,990円(フルセット)/103,400円(ヘッドセット単体) |
VIVE Cosmos Elite | 109,000円(フルセット)/63,810円(ヘッドセット単体) |
VALVE INDEX | 165,980円(フルセット) |
PlayStation VR | 38,478円 |
PlayStation VR2 | 74,980円 |
各性能一覧
ヘッドセット | ディスプレイ | 解像度(左右の合計) | リフレッシュレート | 視野角 | トラッキング |
Meta Quest 2 | LCD | 3664×1920 | 最大120Hz | 110度(対角) | 一体型 6DoF |
Meta Quest 3 | LCD | 4128×2208 | 90Hz、120Hz | 水平110度、垂直96度 | 一体型 6DoF |
PICO 4 | LCD | 4320×2160 | 72Hz、90Hz | 105度(対角) | 一体型 6DoF |
Pico Neo 3 Link | LCD | 3664×1920 | 72/90/120Hz | 98°(水平) | 一体型 6DoF |
VIVE Pro/VIVE Pro Eye | OLED | 2880×1600 | 90Hz | 110度 | アウトサイドイン 6DoF |
VIVE Pro 2 | LCD | 4896×2448 | 120Hz | 120度 | アウトサイドイン 6DoF |
VIVE Cosmos Elite | LCD | 2880×1700 | 90Hz | 110度 | アウトサイドイン 6DoF |
VALVE INDEX | LCD | 2880×1600 | 80Hz / 90Hz / 120Hz / 144Hz | 130度 | アウトサイドイン 6DoF |
PlayStation VR | OLED | 1920×1080 | 120Hz | 100度 | アウトサイドイン 6DoF |
PlayStation VR2 | OLED | 4000×2040 | 90Hz、120Hz | 110度 | インサイドアウト 6DoF |
執筆:浅田カズラ