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活用事例 2017.03.16

【レポ】韓国最大級のVR・ARカンファレンス&展示会『VR EXPO 2017』で見えてきた韓国のVR事情

2017年3月9日から11日の3日間にかけて、韓国・ソウルのCOEX Convention and Exhibition Centerにて「VR EXPO 2017」が開催されました。

「VR EXPO 2017」は、韓国内最大規模で行われるVR・AR関連のB2Bカンファレンス及び展示会で、参加者は事前登録だけで12,000人を超える規模となりました。主催であるVR EXPO組織委員会はメインパートナーともなったGPM社を主体に構成され、KEA(Korea Electronics Association)、KoVRA(Korea VR Association)、VRFCなどの団体もパートナーとして参加しました。

豊富なプログラム構成のカンファレンス

カンファレンスは3月9,10日の2日間にわたって開かれました。元Sony Picturesやウォルト・ディズニーで数々のグローバルプロジェクトに携わり、現在は未来創造科学部のプロジェクトなど政府のVR・ARやデジタルコンテンツの支援分野で重要な役割を担う、世宗大学のKang Yun-geuk教授、HTC Viveの事業部長・副社長を務めるAndy Kim氏がによる基調講演から始まり、2日間の登壇者は60名以上。「VRFC(Korea VR Experts Forum&Conference;)」、「VR Game(開発・投資・市場)」、「VR Marketing」、「VR Medical」という4つの枠に分かれてプログラムが用意され、韓国内だけでなく日本や中国、アメリカなど海外からも各分野の専門家たちが招致されました。

ゲーム関連コンテンツが目立った展示会

展示会には約40社のVR・AR関連業社が出展しました。出展はゲームを中心とするコンテンツが多く、大がかりな装置を使った乗り物系アトラクションの展示が多々見られました。中にはマシンに乗るだけにとどまらず、空中につるされたり、激しく振り回されたりするものもありました。

テーマパーク事業会社も出展

テーマパーク事業を手がける「HITVR」は事業説明を中心とした商談ブースを設置。現在は弘大(ホンデ)にアーケードを1店舗オープンしていますが、今後はアーケード・テーマパーク事業だけでなく、テーマパーク事業を推進するためのアイテム開発やMR導入まで進めていく計画とのことです。

VRプラットフォームを目指す「Monster VR」

本イベントのメインスポンサーであるGPMは、VRプラットフォーム「Monster VR」を展示。当イベントの主催チームメンバーでもあるGPM代表、Luke Park氏はカンファレンスにて、「大衆化を成し遂げるには、『一緒に』『誰でも』『簡単に』の3点がキーポイントとなるが、これを実現すべく『Monster VR』というプラットフォームを開発した」と話しました。「Monster VR」は、SDK、Launcher、決済システム、管理システムといったソフトウェアと、「CUBE VR」というハードウェアを提供するプラットフォームです。

「CUBE VR」の中はカラオケボックスのようになっており、音や広さを気にせずVR体験を楽しめるような空間となっているほか、商業施設などにCUBEごと提供できるよう外装もこだわったと言います。

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一番人気、「THIRTEEN FLOOR」の大型トレーラー

会場内で一番人気を集めていたのは「THIRTEEN FLOOR」の展示です。開場早々に当日の体験予約が終了するほどでした。
「THIRTEEN FLOOR」はVR映像の海外撮影とコンテンツ制作に注力をしてきた会社で、今回新しく「T-Express 360 VR」と「ドリフトレーシング360 VR」を公開しました。
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「T-Express 360 VR」は大きなトレーラーの中に設置された4人用シミュレーターに搭乗し、Gear VRでT-Expressというジェットコースターの映像を体験するというもの。この「T-Express 360 VR」は韓国内だけでなく、タイ・バンコクにオープンするテーマパークにも展開予定とのことです。
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VRゲームパブリッシャー、YJM Games

gumiとともにVRインキュベーションSeoul VR Startupsを設立した韓国のゲームパブリッシャーYJM Gamesは、「Overturn」、「Smashing The Battle」、「Deck Of Throne」などのVRゲームタイトルをプレイ映像と共に公開しました。イベント初日には「Overturn」の開発社であるSTUDIO HGの代表David Han氏によるトークイベントも開かれ、多くの観客がブースを訪れました。
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YJM Gamesは 2017年上半期に8タイトルのVRゲームタイトルをリリース予定とのことですが、すぐに収益化を目指すというよりも、まずは可能な限りたくさんのジャンルをリリースし、ユーザーからのフィードバックを得ることが目的のようです。

韓国のVR市場の特徴

韓国では、インディーや個人開発者が少ない代わりに企業主体で取り組んでいるところが多く、開発をしている領域としては圧倒的にゲームなどのコンテンツが多くなっています。

考えられる理由は3点で、

  • オンラインゲーム、モバイルゲーム共に国内市場が飽和してきている中、新しいジャンルの開拓需要がある
  • 韓国のオンラインゲーム、モバイルゲームはUnityやUE4といった3Dゲームエンジンで開発されたものが多く、そのままのチームでVR・ARシフトしやすい
  • 政府機関等の支援が活発に行われているため起業ハードルが低い

といった点が影響しています。

特に3点目はポイントで、韓国政府の未来創造科学部(省)はVR・AR市場の投資環境を作るために、2017年までに400億ウォン規模(日本円で約37億円)のファンドを創出すると発表しています。また、今回は民間事業として行われた「VR EXPO 2017」の盛り上がりにより、今後も政府に限らず様々な団体で支援やインキュベーションプログラムが出てくることが期待されます。このように政府からも産業を盛り上げていこうとする点は韓国の大きな特徴の一つです。

韓国のVR市場の展望

今回のEXPOの規模や来場者数を見ると、韓国ではVR市場が盛り上がっているように感じられますが、韓国の消費者の中でのVRに対する熱量はごく一部に止まっているように思います。カンファレンスや展示会でも多くの方が口を揃えていた「キラーコンテンツの不在」という点が大きいようです。ここで言う「キラーコンテンツ」とは、前述のLuke Park氏の言葉にあるように「一緒に」「誰でも」「簡単に」を実現するためのソフト、ハード、ロケーションを指すのでしょう。

韓国では、昨年まで主にGearVR向けの映像コンテンツを開発している企業が多かったところ、現在では多くの企業がHTC ViveやOculus Rift向けのゲームコンテンツを開発しています。また、これまで何度か開催されたVRイベントでは、出展社も参加者の行列も、乗り物系などの大規模なアトラクションコンテンツが目立ちました。

VR体験施設やテーマパーク事業を行う会社も出てきており、消費者が関心を持てるようなアトラクション系コンテンツと、それらを気軽に体験できるスペースの拡充により、筆者は韓国のVRゲーム市場が確実に盛り上がってくると考えています。

一方で、ゲーム以外のB2Bサービスの開発会社はまだ多くないようです。この点に関しては今回のようなカンファレンスや、様々な分野における政府支援・インキュベーションプログラムがどう牽引していくか注目したいところです。

VR EXPO 2017公式サイト
http://vrexpo.kr/


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