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VTuber 2018.03.25

バーチャルYouTuberの可能性を開拓するマッチョ男子「げんげん」とは?

女性キャラクターが多いバーチャルYouTuber。最近は男性キャラクターも徐々に増えてきました。

その中で異色なのが、げんげん。筋骨隆々とした姿もさることながら、動画の構造そのものが特異。「バーチャルYouTuberとはなにか」の定義を切り崩し続ける、パイオニア的なキャラクターです。

世界線リセマラ男

げんげんが初投稿されたのは1月7日。バーチャルYouTuberが話題になりはじめたばかりで、男性キャラはほとんどいなかった時期です。「ばあちゃる」を含め、既に何人かいた男性バーチャルYouTuberも、基本的には細身。マッチョ枠はげんげんが初です。

筋トレが大好きな球児、源元気。最初にポロッと名前言っちゃってるのに、本名は内緒にしようとしているのがお茶目。この時点では「筋肉男子属性のバーチャルYouTuber」くらいの表現しかされておらず、「源元気という新人が出て動画投稿を始めた」という感覚の動画でした。 



ところが二本目の動画は意外な方向に。コメント欄やTwitterで「世界観がすごい」「謎展開」と話題になります。

舞台は2018年、なんだけども、第三次世界大戦終結30周年。ソ連を中心とする共産圏が世界政治を担っている……これはもしかして、世界が別なのでは?

様々な憶測が飛び交いました。前回の「源元気」が成長して大人になり、共産国家ルートに入ったのではないか、彼は源元気の先祖なのではないか、壮大なストーリーの序章ではないか、などなど。

共産圏げんげんの動画はフラグを残したまま終わっています。彼は今、KGBに見つからないように国外ネットに裏技的につないでいる。そんな彼がラストでピロシキまん(?)の配給を取りに行った……いやそれ絶対バレてるよ、げんげん逃げて!

ファン大混乱の中投稿された三本目の動画は、げんげんシリーズの方向性をはっきり示しました。 

明らかに、共産圏げんげんと別人。しかも今回は露骨に、何重も死亡フラグが立っている。
彼は「げんげん」でありつつも、今までの「げんげん」とは違う人生を送っている。ストーリーもどうもつながっていない様子。 

このあたりからげんげんは「世界線リセマラ男」と呼ばれるようになりました。リセマラとは、ソーシャルゲームでガチャをひいたあと、アカウントをアンインストールして再度引き直すこと。人生リセット、というわけです。

同時に「げんげん大喜利」が流行りだしました。「こんにちは、げんげんです」からはじまり、あらゆる死亡フラグネタでトークを繰り広げていく。アニメや映画の死んだキャラクターに、非常に当てはめやすい。

 当時の筆者は、げんげんには深い意味があるに違いない、並行世界を描いた、SF的なシリーズだろう、と考えていました。藤子・F・不二雄の短編集の「パラレル同窓会」みたいな。そんな予想は、四作目で完全にひっくり返されました。 

魔王て! 人間ですら無い世界線もあるのか、げんげん。
しかも魔王げんげんは、バッドエンドフラグが立っていません。「リセマラでSSRを引いたげんげん」なんて呼ばれたりもしました。

「げんげん」とは一体なんなのか。視聴者の疑問をよそにあげられた、五作目。最大のアイデンティであった「筋トレで鍛えた肉体」を、げんげんはあっさり喪失。 

筋トレの代わりに脳トレをしています。身体はありません。これのために、3DCGになっています。ブラックユーモア満載のげんげん動画は、大喜利などの二次創作や次の動画の予想を軽々と飛び越えていきます。

五作目に出てくる「バーチャル礼拝」の語は、今や数多くのバーチャルYouTuberに使われる流行語になっています(例・VRChatを離脱する時に使う)。

げんげんのデザイン

げんげんのモデルは、Live2D cubism3で作られています。つるんとしていない肌の質感のは「汗臭そう」というコンセプトに基づいたもの。顔のベースはリアル調ながら、口や目やまゆげがコミカルに動くようデザインされているのも特徴的です。
 
ボイスは合成音声「かんたん!AITalk3」

が使用されています。抑揚やスピードの調整がしやすく、関西弁風にもできるソフトです。合成音声が使用されたことで、「げんげん」という存在は声優さんの個性に左右されない、誰でもない一個人のキャラクターになっていきます。

現時点で、裸以外は毎回衣装が違うのも見どころ。同じ服装が二回使われたことがありません。

学生服、スーツ、宇宙服、カウボーイ。もしかしたらバーチャルYouTuberで一番衣装を持っているかもしれません。「おしゃれ」というよりは、キャラクターのシチュエーションを明示するタイプの衣装が多めです。

なお、脳トレげんげん以外にも、チャンネル移動の告知用チャンネル移動の告知用に、3DCGのげんげんが作られています。



げんげんが切り開いた「バーチャル」の地平

げんげんは「撮影した映像を外に流している存在」を題材にした連作と捉えることもできます。特に普段撮ることはないけれども、たまたま一回だけ動画を投稿しているげんげんもいます。その一方で、継続的に動画投稿をすると宣言している、初期げんげんや怪盗げんげんもいる。

原始人げんげんに至っては、ビデオカメラではなく時間の歪みに話しかけています。

どのげんげんもあらゆる時代と場所で、「不特定多数な誰か」としての「視聴者」に、何かを伝えてようとしている。
 
げんげんは、実体を伴わない存在。どこにでも、どのような形でも、さまざまな役割を持って動画を配信する「げんげん」として存在できます。そのあり方は、まさに「バーチャル」な「YouTuber」です。
 
現在1000近くいるバーチャルYouTuber(3月24日現在)には、人間以外の様々なキャラクターもいます。それぞれ、世界観背景はバラバラ。でもそんな多元宇宙に住む全ての存在が「バーチャルYouTuber」。定義付けができるものではありません。これは人間のYouTuberではありえないこと。
げんげんは今後も色々な世界で多様な変化を遂げながら、バーチャルYouTuberの枠組をゴリゴリ壊してくれそうです。 


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