「VRは魔法のようなもの」米投資家が見据えるVRの現在と未来

6月29日(水)、VRに特化したインキュベーションプログラムを行うTokyo VR Startupsは第一期生のDemo Dayを開催しました。Demo Dayでは、Tokyo VR Startups代表取締役社長の國光 宏尚氏(株式会社 gumi代表取締役社長)と同インキュベーションプログラムメンターのTipatat Chennavasin氏によるメディア向けの講演も行われました。

本稿では、Tokyo VR Startupsのメンターであり、米国のVRとARに特化したVC「The Venture Reality」のパートナーでもある、Tipatat氏による講演を中心にレポートします。

Tipatat Chennavasin

既存のメディアは視聴覚(ビジュアルやオーディオなど)に働きかけるものがほとんどです。しかしVRは視線そのものがコンテンツになったり、ジェスチャーやモーションなどを用いた操作が可能です。Tipatat氏はVRについて「言葉にできない」と、実際に「VRを体験してみるのが一番理解できる」のでぜひ体験してみて欲しいと、講演に集まったメディア関係者に呼びかけました。

VRで高所恐怖症を克服

Tipatat氏は「VRは自分の感覚を錯覚させる」と、人工的に作られた世界の中に自分がいるかのような錯覚を引き起こすのがVRの特徴としました。そして、VRの出来事は本物の出来事のように感じられるので、VRは現実にも影響も与えるとしてTipatat氏自身がVR開発を行う中で「高所恐怖症を克服した」ことを語りました。

Tipatat氏がVRによって高所恐怖症を克服したように、産業用のVRには医療向けの市場があります。Tipatat氏は医療向けVRの中でも次の3つの用途があるとスライドで解説しました。

Tipatat Chennavasin「トリートメント」「データ・ビジュアライゼーション(可視化)」「トレーニング」

「トリートメント」はTipatat氏が高所恐怖症を克服したように医療を受けている患者向けの用途です。VRが脳に働きかけることからリハビリなどで使用されるケースがあります。

「データ・ビジュアライゼーション(可視化)」は医者が医療前に3Dスキャンした患者の臓器の様子や構造などをVRを使い認識する方法です。これまでにも3Dプリンタを使い臓器の状態を確認することができましたが、VRなら自由に臓器を拡大したりすることも可能で、大きな利点があります。

「トレーニング」は手術のシミュレーションとしてVRを活用するものです。外科手術は繊細な動きが要求されるため、モーションキャプチャーやトラッキング、触覚の技術なども重要になってきます。

「VRは非常にソーシャルだ」

Tipatat Chennavasin
もちろんエンターティメントや消費者向けのVRコンテンツも紹介されました。最近では伝統的なメディアやエンターテインメントの企業もVRに取り組んでいることが挙げられました。

Tipatat Chennavasinアトラクション施設やテーマパークなど

Tipatat Chennavasinスポーツとコンサートの360度映像は特に海外ですでに人気があります

Tipatat Chennavasin教育と観光、報道のコンテンツ

Tipatat氏は教育とVRの組み合わせに強い関心があることも明かしました。勉強をする時は「他人に教えるのが効果的」と指摘し、VRでAI(人口知能)の先生になるのが面白いのではないかと可能性を示しました。つまり、VR体験者は先生で、AIは生徒になるというものです。そして就学児から高校生くらいまでの間、ずっと同じ一人のAIの先生になるというアイディアを披露しました。

Tipatat Chennavasin

また、Tipatat氏はVRは感情的なものであり、「VRはアンチソーシャルだという指摘もあるが決してそうではなく、VRは非常にソーシャルだ」とSNSとの相性の良さを強調しました。VRはコミュニケーションを変えていくものであると述べました。筆者自身もVR上で身振り手振りを通じてコミュニケーションをしたり、ハイタッチなどのボディタッチをすると、現実と変わらないくらいポジティブな感情が引き起こされることを経験しています。

Tipatat Chennavasin

Mogura VRでも取り上げているTipatat氏の作成した業界マップ。一番下がハードウェア/インフラ、中段が制作ツール/プラットフォーム、一番上がアプリケーション/コンテンツとなっているVR業界図です。世界中で1,200以上のVRスタートアップと20万以上のVRデベロッパー、5つのVRインキュベーター、そして8つのVRファンドがあるとのことです。

Tipatat Chennavasin

上のスライドは各シンクタンクが発表しているVRの市場規模をまとめたものです。アナリストによって市場予測の幅のブレが大きいのですが2020年までに146億ドル(約1.5兆円)から1260億ドル(約13兆円)の市場になると予測されています。また米国では直近の2年間で合計36億ドル(約3,800億円)、225件の投資がされているとのことです。

Tipatat氏が語ったVRの未来

Tipatat氏は、度々問題視されるVR酔いについて問題なのはVRの技術ではなく、VRのコンテンツデザインにあるとしています。既にあるHTC Viveのようなインタラクティブな機能を持つハイエンドVRヘッドマウントディスプレイであれば、技術的にはVR酔いを防ぐことができるとしています。

Tipatat Chennavasin

また、Tipatat氏は現在のVRを携帯電話に例えると「iPhoneの時代というよりもモトローラーの時代だ」と述べました。今後はディスプレイ性能などの向上に加えて、視線追跡機能や触覚の機能などが実装されるほか、嗅覚や味覚までもがVRで再現されるかもしれないとVRの未来を語りました。

Tipatat Chennavasin

Tipatat氏は講演後の質疑応答の中で「VRは魔法のようなもの。想像できるものは全て出来る」とも述べました。「VRは魔法のようなもの」というのはロマンチックで力強い言葉ですが、Tipatat氏の冷静な視点から現状のVRについて講演で説明された後に聴くと、非常に説得力のある言葉となっていました。

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    VR修行中のライターです。VRの可能性の大きさにワクワクしています。「Mogura VR」では編集周りのお手伝いを担当しています。

    Twitter:@oo2gu

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