都会の魔術師版「ファイト・クラブ」?―Insomniac Gamesが開発中のOculus Touchゲーム『The Unspoken』体験記

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本記事は、4月18日にUploadVRに掲載されたJason Evangelho氏の記事を翻訳したものです。

Insomniac Games が披露した、Oculus Touch コントローラ用の新作ゲームを実際に遊んできた。これは UploadVR 編集部の「絶対おすすめ」リストのトップに直行だ。「魔術師たちが街なかで『ファイト・クラブ』をやるゲーム」と言えば、興味をそそられる人もいるだろうか?

僕は今、柱の上に立っている。地上まで 6 メートルはあるだろうか。眼下に広がるのは、かつては何かの建設現場だったとおぼしき廃墟だ。シカゴの、荒れ果てた、誰も寄りつかない一角。50 メートル向こうにはもう一人の魔術師、つまり UploadVR の編集長 Will Mason がいる。きっと僕がどう出てくるかと予測をめぐらせていることだろう。試合が始まるなり真正面からファイアボールを呼び出して投げつけてくるかもしれないし、もう少し慎重に、柱から柱へテレポートして身を隠しながら、隙を突いてもっと威力のある呪文で攻撃してくるかもしれないからだ。

戦いが始まった瞬間、Will の長衣姿のアバターがちらりと右に目をやるのが見えた。テレポートする気だ。そう読んだ僕は腕を胸元に引き寄せ、手の上にファイアボールを召喚する。彼が実体化する直前に、そちらに向けて手のひらを勢いよく突き出す。炎の塊が轟々と出現予測地点に向けて飛んでいく。僕の狙いが当たっていれば、Will が防御シールドを展開するより早く着弾するはずだ。

狙いは当たった。その点では幸運だったといえる。だが不運だったのは、Will が驚異的な速さで左手からシールドを展開し、僕のファイアボールを反射したことだ。火の玉は来た道を正確に跳ね返ってきて、僕の腹に突き刺さった……

ここまでが試合開始からわずか数秒のできごとである。こんな熾烈な PvP 戦が楽しめる『The Unspoken』は、『ラチェット&クランク』や『Sunset Overdrive』でおなじみの Insomniac Games が開発中の VR タイトル 3 本の 1 つだ。年内に Oculus Rift 向けに発売予定で、Rift 用にまもなく発売される予定のコントローラ Oculus Touch を使用する。

Unspokenファイアボールが炎の尾をひいてプレイヤーの手から飛んでいく瞬間。

「昨年の E3 で Oculus Touch コントローラが発表されたとき、私たちの頭の中でアイデアが一斉にひらめいたんです。これはもう、これで魔法を使うゲームを作るしかないだろう、と」Insomniac Games のクリエイティブディレクター Chad Dezern は、先日行われたメディア向けイベントで UploadVR にそう語ってくれた。

Insomniac はプレイヤーがコントローラを握っていることすら忘れるような体験づくりを目指している。その点、Oculus Touch は人間工学に基づき、手の一部であるかのように自然となじむ設計になっているから最適なのだ。

一言でいえば「都会で魔術師たちが『ファイト・クラブ』をやるゲーム」

人間が空想するしかないことをビデオゲームで具現化する、というコンセプトは幾度となく語られてきた。『The Unspoken』のデザイン資料でもきっと、第 1 行目に太字で印刷されたうえに、ピンクの蛍光ペンで下線が引いてあったにちがいない。このゲームは「本物の魔法使いになった気分を VR でどう体験させるか?」という問いに、大胆な形で答えようとしている。ハリー・ポッターとストリートファイターから 1 本の楽しいゲームを作りあげようとしたらこうなった、というか、ストリートで魔法を駆使して超常バトルを繰り広げるファイト・クラブとしか形容できないような作品だ。

『The Unspoken』では、自分自身の手で魔法を操っているという感覚をごく自然に味わえる。魔法陣を描き、物をつかみ、攻撃呪文を撃ち出す……すべてが驚くほどリアルな体感として伝わってくるのだ。ゲームジャーナリストとしては安易にこういう言葉を使うべきではないのかもしれないが、あえて言おう、あれは腹の底から本能に訴えてくる体験だった。

Will と一緒に Insomniac Games のバーバンクスタジオで Dezern に話を聞くあいだも、3 人ともすっかり魔法を「とらえがたいが実在するもの」という扱いで語っていることに気づいて、驚いたものだ。まるで魔法が、憧れる人間は多いが本当に使いこなす者はめったにいない、一種の技術であるかのようだった。僕たちはファイアボールを両手同時撃ちする利点や、呪文に対する重力の影響について議論した。まるで Dezern 率いる開発者チームが本物の魔術を研究して『The Unspoken』を作りあげたかのように。魔術をスポーツにしようと取り組んでいる本物の魔法使いにインタビューしているかのように……

『The Unspoken』のいいところは、ただ魔法使いになれるだけでなく、呪文の使いこなしがものをいう点だ。

「プレイヤーは目に見えない力を操り、周囲の街からさまざまなエレメントを引き出して戦うのです」と Dezern は説明してくれた。

そう、ファイアボールを使えるのはどこかに火があるからなのだ! 呪文は 25 種類以上あるそうで、デモでは一部しか確認できなかったが、いずれも神話伝説上の何かではなく現実世界にあるものを基にしているようだ。

たとえば、紙飛行機を折って飛ばすとそれが B-52 爆撃機に変わってゆっくりと敵を追尾する呪文があった。炎のカラスの大群が物陰から現れて襲いかかってくるものもあった。クレヨンで魔法陣を描いて防御結界を張ることもできた。個人的に気に入ったのは魔法の金床から槍を創り出す呪文で、この槍を投げて当てるとけっこうな大ダメージになる。

手のひらを空に向けると呪文を選択するメニューが開く。ただし呪文を発動させるには、マップ内でクリスタルを集めて充分な魔力を蓄えなければならない。開発の初期段階とはいえ UI の動作はきわめてスムーズで、めまぐるしい戦闘の中でとっさに呪文を切り替えることもできた。

Unspoken巨大ゴーレムを創り出し、遮蔽物を壊したり敵を攻撃させたりすることも可能だ。

各アリーナには、一定条件を満たすと発動可能になる、環境固有の呪文も隠されている。これは試合進行につれて段階的に展開するイベントのようなもので、うまく発動すればクライマックスイベントが発生し、一気に決着を付けることも可能だ。デモで体験したアリーナの場合は、周囲の廃材からゴーレムを創造することができた。ゴーレムは遮蔽物を吸いこみながら敵に襲いかかり、破壊されるまで攻撃をやめないし、破壊するにもやたらと硬い。もっとも、これを発動させるのは簡単ではない。まずゴーレムの脚、腕、胴体、頭部を集めて組み立てなければならないのだ。

さらにプレイヤーキャラクターとなる魔術師については、装備を換えることで能力のカスタマイズも可能だというから夢は広がる。攻撃主体のキャラにも、カウンターを得意とする防御型にもできるし、敵の周囲の空間を操る間接呪文に特化してもいい。どういうタイプと対戦することになるか予測がつかないぶん、試合も変化に富んだものになりそうだ。

パフォーマンスアートとしての魔術

僕は Will 編集長と何ゲームか対戦した(というか僕のほうが下手すぎて、いろんな呪文を次から次へと叩き込まれるだけのサンドバッグになった)後、休憩がてら彼がチュートリアルをプレイするのを見物した。

これがまた、すこぶる面白かった。

Unspoken

実はこのゲーム、ファイアボールを撃つのに本当に必要な動作は Touch コントローラのトリガーを引いてパワーを溜めることだけ。後は投げたい場所に向かって何か動作をすれば、その方向に飛んでいくようになっている。僕が見ただけでも、野球みたいに投げたり、両脚の間からいわゆる「おばあちゃんスタイル」で放ったり、ストリートファイターの波動拳のまねをしながら撃ったりとみんな自由にやっていた。

Will の場合は、片手を天に向かって差し上げ、まるで全宇宙の魔力を集めようとでもいうように張り詰めた面持ちでそれを見つめ(しかも「うおおおおお」と叫び声付きでだ、僕は確かに聞いた)、やおら鋭くその手を振り下ろして必殺の火球を放った。いやもう、その様子ときたら完璧にどこかのスーパーヒーローそのもので、天性の魔術師みたいだった。その後ニヤリと笑ったのも僕はちゃんと見ていたぞ。

Dezern はこういう「人々がいろんな思いがけない仕草や表情を見せる」ところを観察できる点が VR の興味の尽きないところだと語ってくれた。

さらに Dezern によれば、「呪文の発動動作は多少バリエーションをつけても認識するようになっているので、自分をクールに見せることを意識したプレイもできますし、効率を重視した撃ち方もできます。実は、発動動作にちょっと『格好をつけ』るとゲーム内に反映されるしくみも用意しています。呪文によっては詠唱が聞こえたり、一定のリズムと流れで発動することで効果がアップしたりするものもあるんです」ともいう。

Oculus Touch の発売日がまだ決定していないため、『The Unspoken』のリリース時期については「2016 年のホリデーシーズン」という以上の具体的な返事は聞けなかった。だが、Insomniac で体験した魔法での決闘 PvP は実に楽しく、純粋に何度でも遊びたくなるものだった。リリースされた暁にはUploadVR の「絶対おすすめ」リストのトップに入ることうけあいだ。

Will はこれは最初の VR eスポーツになれるかもしれない、とさえ言っているし、僕も全く同感だ。とにかく、これは見逃せないタイトルだぞ!

(この記事はUploadVRの編集長 Will Mason との共同取材により執筆されました)

この記事を書いた人

  • writer_Eugene_Roserie

    海外ゲーム好きが高じてゲーム翻訳者に。モバイルからPC、インディーからAAAまでいろいろな英語ゲームを日本語にするお手伝いをしています。最近はVRに興味津々で、興味が有り余った結果こうなりました。

    Twitter:@Eugene_Roserie

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