視線追跡(アイトラッキング)

視線追跡(アイトラッキング)とは、ユーザーの視線(今どこを見ているのか)を計測する技術のこと。

視線追跡のメリット

VRにおいて高精度な視線追跡が可能になると、様々なメリットがありますが、代表的なものに以下の点が挙げられます。

フォービエイテッド・レンダリングが可能になる

フォービエイテッド・レンダリング(Foveated Rendering)には、高精度な視線追跡技術が不可欠です。

フォービエイテッド・レンダリングとは、画面をレンダリングする際、人の中心視野ほど高解像度で、そして視野の外側に行くに従って低解像度で描画する手法のこと。これにより、PCにかかる描画処理の負担を大幅に軽減させることができます。

詳しくはフォービエイテッド・レンダリングの項を参照のこと。

VR内コミュニ―ケーションが豊かなものになる

ユーザーの視線を計測することができれば、例えば「キャラクターと視線を合わせる」という体験も可能となります。「相手と目が合う」という体験は、VRにおけるコミュニケーションをより豊かなものにしてくれるでしょう。

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インプットとしての視線

視線を使って何かを操作することも可能になります。

FOVEは昨年、病気のためにピアノが弾けない子供達のために、視線だけでピアノを弾けるインタフェースを開発。筑波大学付属桐が丘特別支援学校と協力して、身体にハンディキャップのある子供が視線でピアノ伴奏を行うプロジェクト「Eye Play The Piano」も成功させています。(プロジェクト公式サイト

https://www.youtube.com/watch?v=VHXx7XTPULE

これまでの視線追跡技術のニュース(~2017年)

FOVE


日本発の企業FOVEは、視線追跡技術を搭載したVRヘッドマウントディスプレイ「FOVE」を開発しています。2016年11月より予約を受け付けていた開発者版は、2017年1月に599ドルで全世界に発送が開始されました。

詳細はFOVEの項を参照のこと。

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Oculus Rift

Oculusのチーフサイエンティストであるマイケル・エイブラッシュなどは「アイトラッキング技術は将来のVRにおいて中心的な技術になるだろう」と述べています。

Oculusは2016年にThe Eye Tribe社を買収しています(参考記事[4])。

さらにこの買収の2日後に、視線追跡デバイスに関する特許がOculusから提出されたことが明らかになっています(参考記事[11])。今後OculusがリリースしていくVRデバイスに、視線追跡機能が搭載されていく可能性は高いと言えるでしょう。

HTC Vive

HTC Vive関連では、サードパーティとして中国の7invensum社が、視線追跡機能を追加するためのアタッチメントデバイス「aGlass」を発表(参考記事[12])しているほか、視線追跡技術を有するTobii社が開発者キットの提供を開始しています。(参考記事[15]

HTC Viveの開発を行っているValveは、SMIと共同で新型HTC Viveに視線追跡機能を追加するテストも行っています(参考記事[2])。

またこの視線追跡技術は、Valveが推進するOpenVRプラットフォームに組み込まれることで、さまざまなVRデバイスが共通して使える「視線追跡技術の規格」として開発が進められています(参考記事[11])。

SMI (SensoMotoric Instruments)

SensoMotoric Instruments(SMI)社は、瞳の動き、瞼の開閉などをトラッキングする視線追跡技術を開発しています。2017年6月に、Appleによって買収されたことが明らかになっています(参考記事[16])。

これまでSMIは、さまざまな企業と協力をしてきました。

グラフィック技術のNVIDIAと提携し、SIGGRAPH2016でFoveated Renderingのデモを展示(参考記事[3])。SteamVRを展開するValveと提携してHTC Viveへの視線追跡技術
の試験的搭載(参考記事[2])など。

またCES2017では、VR内で自然なアイコンタクトを実現するためのシステム「SMI Social Eye」を発表しています(参考記事[8])。

その他の買収・提携など

上記企業のほかには、2016年にGoogleが、アイトラッキング技術を研究しているEyefluence社を買収しています(参考記事[5])。

またStarbreeze社が開発するStarVRには、視線追跡技術のTobiiと協力して視線追跡機能が搭載される予定です(参考記事[1])。

Star VRは、もともと「Infinite Eye」という名で2013年より開発が進められてきたVRヘッドマウントディスプレイ。Infinite Eyeの開発チームがスウェーデンのStarbreeze社に買収されたのち、2015年のE3でStar VRとして発表されました。

医療分野への応用

SyncThink社が開発した視線追跡装置「EYE-SYNC」は、インディアナ大学の脳震盪の研究において採用されました(参考記事[4])。視線追跡を用いれば、被験者の認知プロセスを分析することも可能であるとします。

プライバシーの問題

視線追跡技術が一般化した時、「視線」というデータがプライバシー問題に絡んでくる可能性があるとの指摘もあります(参考記事[9])。誰が・いつ・どこを・どれくらいの時間見た、という情報は、その人の趣向や行動様式を表すばかりか、技術の進歩に従って個人の特定につながる可能性もあるのです。

(参考記事)
[1] Tobii、VRヘッドセットにも搭載できる新たな視線追跡システムを発表(2015.10.19)

[2]SMI、HTC Vive向けアイトラッキングの開発者版を発表(2016.07.26)

[3] 目の動きを認識して処理負荷を軽くする「フォービエイデッド・レンダリング」の実力は?(2016.08.04)

[4] 米で医療への応用を狙うアイトラッキング技術が特許登録(2016.10.26)

[5] Google、アイトラッキング技術を開発する「Eyefluence」を買収。次世代AR/VRデバイスへの活用が期待(2016.10.27)

[6]インディアナ大学、脳震盪研究にVRとアイトラッキングを活用(2016.12.19)

[7] Oculus、視線追跡技術のThe Eye Tribe社を買収(2016.12.29)

[8] 次世代VRで注目 視線でコミュニケーションを自然に行う「SMI Social Eye」(2017.01.10)

[9] VR時代のプライバシー問題をどのように捉えるべきか、専門家の提言(2017.01.15)

[10]目の動きでアバターはより人間らしく 視線追跡を利用したソーシャルVR(2017.02.28)

[11]アイトラッキングもVRの共通規格に?Valveと視線追跡技術メーカーが協力(2017.03.06)

[12]HTC Vive専用視線追跡デバイス「aGlass」が220ドルで登場(2017.05.02)
[13]一体型VRHMD用アイトラッキング Oculusの新特許公開(2017.05.09)

[14]【体験レポあり】コロプラ、VRコミュニケーションをより身近に 視線と表情を認識するシステム『FACE』発表(2017.05.29)
[15]視線追跡技術のTobii、HTC Vive向けに開発キット提供へ(2017.06.04)

[16]アップル、視線追跡のSMIを買収 VR/ARの鍵を握る技術(2017.06.27)

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