VR

VRとは、Virtual Realityの略称。読みはバーチャル・リアリティ。

物理的には存在しないものを、感覚的には本物と同等の本質を感じさせる技術のこと。「バーチャル」というのは「仮想」ではなく、物理的な存在の有無の差こそあれ、本質は原物と等しいのです。[1] 図1 CEDEC2016の講演、筑波大学 岩田洋夫氏「VRはどこから来てどこへ行くのか?」より[1]

(参考) [1] CEDEC2016 筑波大学 岩田洋夫氏による講演「VRはどこから来てどこへ行くのか?

また、同様の説明はVRCカンファレンス基調講演(アーカイブ)でもなされている 以下ではバーチャルリアリティという単語・概念について詳しく説明します。なお、同様の説明はVR学会公式ページ内にも掲載されています。

バーチャルと仮想の違い バーチャルリアリティと日本語訳 バーチャルリアリティという言葉の歴史 APIキューブ

バーチャルと仮想の違い

バーチャルリアリティという語は、もともとアメリカで生まれた英単語です。

『継承米語辞典(The American Heritage Dictionary)』第3版では、英語の形容詞virtual(バーチャル)の定義は「Existing in essence or effect though not in actual fact or form」とされています。

バーチャルの英語本来の意味は「みかけや形はそのものではないが、本質・効果としてはそのものである」ということです。たとえばクレジットカードや電子決済を意味するバーチャルマネーは、「みかけや形はお金そのものではないが、本質・効果としてはお金である」ことから、正しい使い方であることがわかります。

一方「仮想」というのは「実際には存在しない、仮定としての想像」という意味です。「仮想」に相当する英語はsupposedやhypotheticalです。たとえば「仮想敵国」とした場合、実際に存在するわけではないが、仮に想定した敵国、という意味になります。 図2 バーチャルを取り巻く単語の関係

バーチャルの対義語にあたるのはnominal(ノミナル=名目、表層)です。またノミナルの対義語にrealが含まれていることからもわかるように、バーチャルとリアルは反対どころかむしろ近い概念になります。

日本人が何となく感じてしまう「(実体のない仮想としての)バーチャル」と、欧米諸国で考えられている「(見た目は違うがほとんど実物としての)バーチャル」では、まったく違うものを考えていることに注意が必要です。

(参考) 日本バーチャルリアリティ学会(編)(2011) 『バーチャルリアリティ学』 東京 コロナ社、 8-9頁

舘暲(2002) 『バーチャルリアリティ入門』 東京 筑摩書房、 17-19頁

バーチャルリアリティと日本語訳

VRの日本語訳は仮想ではない、というのは前述の通りです。

日本にはこれまで、バーチャルという概念自体がなく、その証拠にバーチャルという概念を適切に表す漢字や熟語は存在していないということが、『バーチャルリアリティ学』では指摘されています。

同書によれば、VRというのは無理に日本語に訳そうとせず、カタカナのままバーチャルリアリティと表記するのが良いとのこと。また、それでもあえて日本語に置き換えるのなら、「人工現実感」という単語が適当だとも述べられています。

バーチャル=仮想という訳が生まれたのは、1970年代に登場した「バーチャルメモリー」を「仮想メモリ」としたのが始まりともいわれています。[1]

バーチャルメモリーは、「メモリの姿はしていないが、機能としてはメモリ」というもので、先に述べたバーチャル本来の意味通りに使われています。仮想メモリと訳すと意味が変わってしまいますが、ことメモリにおいては、「メモリがあると仮に想定する」という考えでも違和感がないため、受け入れられたのかもしれません。

人工現実感という言葉はもともと、アメリカのマイロン・クルーガー氏が研究した「Artificial Reality」の訳語として登場しました。人工的に生み出された現実感(現実らしい感覚)、という概念を表すこの言葉は、やがてVRという言葉に統合されました。

またMR、ARなど類似の概念が多々ありますが、いずれもRealityという単語が使われています。このRealityは「現実」・「現実感」(現実らしいという感覚)のどちらとも訳すことができます。AR・VR・MRいずれについても、「現実」を人工的に生み出しているのか、「現実感」を人工的に生み出しているのかという問題には議論の余地があり、内容に応じてRealityの訳し方は異なることがあります。

(参考) [1]舘暲(2002) 『バーチャルリアリティ入門』 東京 筑摩書房、 17-18頁

バーチャルリアリティという言葉の歴史

「バーチャルリアリティ」という語が生まれたのは1989年のこと。

VPL(Virtual Programming Language) Research社が「The Eyephone」というVRHMD、「The Data Globe」というグローブ型デバイスを発表した際に使った単語として生まれたのが「バーチャルリアリティ」です。名付け親はVPL創始者であるジャロン・ラニアー氏。 図3 VPL Research社の「The Eyephone」と「The Data Glove」

この後1990年、マサチューセッツ工科大学が中心となり、様々な分野のバーチャルリアリティ研究者を、米国カリフォルニア州のサンタバーバラに集め、研究発表などを行いました。各分野の研究者たちは、この会議が開かれて初めて、様々な分野にまたがってバーチャルリアリティというひとつの領域が探求されていることを知ったのです。

1990年以前までにバーチャルリアリティは、「アーティフィシャルリアリティ」(Artificial Reality)、テレイグジスタンス(telexistence)、サイバースペース(cyberspace)など、様々に呼ばれていましたが、この会議をきっかけに、この分野はしだいに「バーチャルリアリティ」という名称で統一されていきました。[1]

(参考) [1] 舘暲(2002) 『バーチャルリアリティ入門』 東京 筑摩書房 23-26頁

AIPキューブ

AIPキューブは、1992年にMITメディアラボのD.Zeltzerが発表したもの。これはVR技術をAutonomy(自律性)、Interaction(対話性)、Presence(臨場感)3つの軸で評価しようとするモデルです。

自律性:ユーザに関係なく世界が成立しているかどうか

対話性:ユーザがどの程度世界に働きかけられるかという

臨場感:ユーザの感覚器にどの程度の情報を入力するのかを示す

A・I・Pの三つの軸を用意し、評価するシステムやコンテンツを三次元座標上にプロットすることができます。

例えば3D映画では、臨場感はあるものの対話性や自律性はないので、AIPキューブの座標では例えば(自律性,対話性,臨場感)=(0,0,0.8)などにプロットされます。テレビゲームなどは、すべてがほどほどに実装されているため(0.5,0.5,0.5)にプロットすることができるでしょう。「理想のVR」というものが実現したら、そのコンテンツは(1,1,1)にプロットされるのです。

(参考) 日本バーチャルリアリティ学会(編)(2011) 『バーチャルリアリティ学』 東京 コロナ社、 5-7頁

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