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テック 2018.08.15

視野角210度、視線追跡 プレミアムな法人向けVRヘッドセット「StarVR One」登場

台湾のStarVR社は、8月12日よりバンクーバーで開催中のSIGGRAPHにて、水平視野角210度を誇るVRヘッドセットStarVRの新型モデル「StarVR One」を発表しました。

StarVR Oneは、エンタープライズ向けの展開を想定しているVRヘッドセットです。VRアーケードなどの施設型VRと法人でのB2Bの利用を目指しています。リフレッシュレートなどの性能向上に加えてアイトラッキング機能の搭載などが明らかにされた他、HTC ViveのトラッキングシステムであるLighthouseに対応、OpenVR対応によるUnityでの開発のサポートなどが発表されています。

新型モデル「StarVR One」気になるスペック

StarVRは2017年に開発者版がリリース。水平視野角210度という広大な視野角が特長です。すでにIMAXのVR施設や日本でもSEGAのアーケードで利用されています。

今回SIGGRAPHで新たに発表されたStarVR Oneはその製品版となります。開発者版と比較して、様々な性能向上が行われました。

開発者版StarVRヘッドセット(旧型)では62Hzだったリフレッシュレートは90Hzに改良され、Oculus RiftやHTC Viveなどのハイエンド向けVRヘッドセットと並びより快適な体験が可能になりました。水平視野角は旧型同様210度のまま、垂直視野角は130度(旧型は120度)とアナウンスされています。

ディスプレイは各ピクセルにRGBのサブピクセルをもつ独自構造のAMOLED有機ELを採用、総サブピクセル数は1600万とのことですが解像度や画素密度については数字を明かしませんでした。描画を行う際は、2枚のディスプレイに対してさらに2分割した映像(合計4分割)を表示し、特許を取得しているレンズを通して観ることで広大な視野角を繋ぎ目なく綺麗に見せています。


(ヘッドセットの内側、ほぼ全ての面を覆う広大なレンズが広い視野角を実現している)


(4分割されている画面)

重量は450グラムまで軽量化。またHTC Viveのデラックスオーディオストラップのようにソリッドで簡単に着脱できる装着システムが採用され、長時間の装着に配慮した人間工学的な改善が見られます。

「利用シーンによってニーズが異なる」とのことからヘッドホンは一体型となっていません。オーディオジャックに接続して使用します。マイクも内蔵せずヘッドホンと一体型のもの使用してほしいとのこと。

アイトラッキング機能搭載

StarVR Oneには、視線追跡技術を開発しているTobii社のアイトラッキングシステムが搭載されています。

このアイトラッキング機能は、視線追跡を使用して視ている箇所の解像度を上げて描画能力を高めるフォービエイテッド・レンダリングに使用されます。さらに個人差のある瞳孔間距離(IPD)調整を自動に行います。また、アイトラッキングで得られた眼球の動きなどユーザの視線情報を取得できることで、商業活用や、インタラクディブ体験の改善に活用できるとしています。


(写真では、レンズの周りの紫色に光っている点がアイトラッキング用のセンサー)


(フォービエイデッドレンダリングでは、視線を向けている中心窩部分を高解像度で描画し、周辺域を低解像度で描画する)

HTC Viveのベースステーションによるトラッキング対応

StarVR Oneは、2種類のトラッキングシステムを利用することができ、2モデルが発売されます。

一つは、HTC Viveのトラッキングシステムを利用するStarVR Oneです。HTC Viveのトラッキングに用いるベースステーションを、StarVR Oneにも利用することができます(ベースステーション1.0、2.0の両バージョンに対応)。すでにHTC Viveで開発をしている場合、新たにトラッキングシステムを用意しなくても良いことになります。コントローラーはViveもしくはVive Proに付属のものを使うことができます。


(SteamVRのシステム上でStarVR Oneを認識している様子。緑色のアイコンのうち、左上と左下のアイコンがStarVR Oneの認識を示している)

もう一つは「StarVR One XT」というモデルです。開発者版StarVRでも使用されていた光学式のトラッキングシステムを搭載しており、初期状態ではPhaseSpace社のオプティカルトラッキングシステムがこれに対応しています。使用するオプティカルトラッキングシステムはユーザが自由にカスタマイズできるとのこと。こちらはSteamVR対応のコントローラーが使用できないため、オリジナルのコントローラーを開発しています。


(対応するトラッキングシステム)

OpenVRに対応、UnityとUnreal Engineが公式対応へ

OpenVRはHTC Viveを手がけるValve社が提供するSDK/APIです。HTC viveを始めとする様々なVRヘッドセットへの対応を進めており、ゲームエンジンのUnityも公式サポートしています。

StarVR Oneの開発をOpenVRを利用して行うことで、Unityでの開発がサポートされることになります。またUnity以外にも、Epic Gamesとの提携によってゲームエンジンUnreal EngineもStarVR Oneをネイティブサポートします。


(SDKが対応しているツール群)

PCとの接続は新規格に対応、動作要件は明かされず

PCとの接続には、VirtualLinkと呼ばれる新たな規格を採用し、USB-Cケーブル2本で行います。既存のPC向けVRヘッドセットではHDMIケーブルとUSBケーブルをそれぞれ接続していますが、USB-Cケーブルで接続ができることになります。

動作要件に関しては明かされず、エンタープライズ向けであることを強調し、「より性能の高いグラフィックボードを推奨する」(StarVR社CTO Emmanuel Marquez氏)との情報にとどまっています。

StarVRの価格・発売時期については近日発表としています。

エンタープライズ向けを意識したVRヘッドセットとしてはHTC社のVive Proが展開しています。視線追跡や広視野角など、StarVR Oneはさらにプレミアムな性能が搭載されており、価格もその上をいくと考えられます。新たな選択肢が出現したことになります。


(AUTODESKほか、すでに産業向けのツールを開発する企業との提携も進めている)


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