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イベント情報 2016.09.19

【TGS2016】ヒロインと目が合う感覚 VRで“読む“漫画はいまだかつてない表現へ

スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部が送り出す、漫画コンテンツの新しいVR表現『プロジェクトHikari』。線は漫画のままに、VRに最適化した面白い体験ができます。

VRでの新しい漫画表現がデモにはつまっています。漫画の世界に入り込んで、主人公の見ている視点と”融合する”感覚そして、コマの中を覗き込めるなど、VRならではの工夫がぎっしりと。

下から見たり、近くから見たり、遠ざけてみたり……。コントローラを使って好きな視点で見れる楽さと楽しさもあります。よくVRの体験に関して言われるように、百聞は一体験に如かずですが、記事にてご容赦ください。

スクウェア エニックス vr漫画
©MAYBE/SQUARE ENIX

自社に出版部門も擁するスクウェア・エニックス。原作は月刊ビッグガンガンで連載中の『結婚指輪物語』(めいびい氏)。東京ゲームショウ2016では、1話目の30ページ強ほどを約8分間の技術デモとして発表、展示しました。
スクウェア エニックス vr漫画
本デモでは、祭りの夜、幼馴染のヒロイン”ヒメ”に告白しようとして別れを告げられた主人公”サトウ”が”ヒメ”追いかけてファンタジー世界へ飛び込むところまでが描かれています。
HTCViveを装着し、コントローラーを利き手に持って開始です。

冒頭の粋な演出

HTCViveを着けると真っ白な空間にぽつんと机の上にコミックスが。「空間で読むだけ?まさか」と思うとコミックスがぶわっとまき上がり、机を中心にらせん状に収れんしていきます。このサイバーな表現、ようこそVRの漫画体験へ。と言わんばかりの演出です。

しばらく見ていると目の前に大きな1ページの漫画が現れ、コントローラーでめくると、本編がはじまります。

漫画の世界に入り込む

コマに映っていた主人公サトウの部屋に入りこみます。モノクロで漫画のような質感の彼の部屋には漫画雑誌が積み上げられていたりしています。コマに映っていないところはこうなっているのか、ときょろきょろしてしまいました。肝心の本人はすぐ前にあるベットの上で何やらぶつぶつ言いながらふて寝をしているようです。

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スクウェア エニックス vr漫画

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スクウェア エニックス vr漫画

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見た目の表現

部屋や主人公のサトウ、ヒメは漫画風のシェーダーとライティングモデル(陰影)が実装されています。よく見ると、サトウ、ヒメの制服の影部分は漫画でよく書かれる影の薄い線がみえます。それ以外にも大きい影が漫画っぽさを表現しています。

好きな視点で見れる楽さと楽しさ

しばらくすると回想シーンが始まり、コマが目の前に現れます。レイヤーが重なるようにコマとフキダシがボイス付きで順番に前に表示されます。祭りの境内についたときには祭りばやしや喧噪がして、二人のデートをかげから見ている友達気分でした。

コマを自由に動かせる

さらに目の前にある漫画のコマは自由に動かせます。文字が読めなければ手前へ持ってくればいいですし、近すぎるなら奥へ置くことも可能。すべて直感的な操作です。コマの表示スピードは自動のため、自分の見やすい位置にコマ群を置けば、あとは見ているだけ。あまりに楽で、ソファに深く腰掛けていると、まるで家にいる気分で漫画を読み進めてしまうほどです。

コマの中を覗き込める

いくつかのコマは、中が3Dになっていて、覗き込むことができます。ちょうど窓から中を覗くような感じです。コントローラーで自由に動かし左から見てみたり、下から見てみたり。気になるシーンを堪能できます。

主人公の見ている視点と”融合する”感覚

祭りでの告白が失敗し、主人公の自室へ視点はかえってきました。ふと部屋のベランダから山で光の柱が立っているのが見え、ヒメとの出会いを思い出して主人公は山へ駆けます。

スクウェア エニックス vr漫画
©MAYBE/SQUARE ENIX

スクウェア エニックス vr漫画
©MAYBE/SQUARE ENIX
「ヒメっ……行くな!!」

スクウェア エニックス vr漫画
©MAYBE/SQUARE ENIX
山のシーンではすべてがまた3Dで、臨場感は抜群。行くな、と止める主人公と対峙するヒメとはコマを使い、うまく表しています。

この時コマの中はもちろん動いています。ヒロインと目があい、主人公と融合したような、不思議な感覚がしました。

スクウェア エニックス vr漫画
©MAYBE/SQUARE ENIX
制止を振り切り異世界へ帰ってしまうヒメ。

主人公がヒメを追いかけ光に入っていくシーンで、体験は終了です。

プロジェクトの立ち上がりと、今後の展開

プロジェクトの立ち上げについて、プロジェクトリーダーの曹氏に話をきくことができました。「VR技術によってエンタテイメントが今後どう進化していくのだろうかという問いがあり、コンテンツメーカーとして体制を整えるために立ち上げた。」とプロジェクトリーダーの曹氏は語りました。

今回の技術デモでは、「コマをそのまま表示する」「コマの中が3Dで動く」「360度漫画の世界にいながらコマで別軸の展開を読む」「360度漫画の中に入る」と段階的にVR中での漫画の表現が体験ができました。

最終的にはすべて360度漫画の世界で展開する(今回でいうとヒメが帰るシーン)がユーザーに見せたいものか、という質問に対しては、「そうですね」と答えつつ、今回のさまざまな表現のパターンはすべて開発途中で、何がユーザーにとって良いのかを見るためあえて360度以外の表現も残しているそう。

漫画を進化させたいという想いに関しては、「伝統的な日本の文化を壊したくもないので(2Dと3Dの)両方の体験型はVR空間内でどんな形でも可能だ、というところも今回見せたかった」と熱く語ります。

将来的には2Dにしたり、3Dにしたり、コマとコマの間はどうなっているか見れたり、ユーザーが自由自在に切り替えられるようにしたいと、いう展望や、社内ではカラーがつけたり、さまざまな検証が進んでいるとのこと。

17~18日のビジネスデーでもビジネスへつなげていく視点でポジティブな反応をもらっているようです。

まだ体験していない人も多く、曹氏からは次のようなメッセージをもらいました。
「ネット上やテレビで画面でこれからみていただくことがあるかと思いますけれども、画面で伝わらない部分が多いと思います。ぜひご自分の目でご体験いただければと思います。我々としてもこれからももっと幅広く体験できる機会を作っていきたいと思っています。ぜひ楽しみにしてください」。

PC、スマホで読む電子書籍が一般的になって久しいですが、新しいVRのプラットフォームでの可能性を筆者は感じました。1月に最低2万円分は電子書籍で漫画を買っている筆者ですが、早くすべての漫画がVRで読めるような未来が来てほしいと強く思いました。漫画が今後どう進化していくのか、非常に楽しみです。

「プロジェクトHikari」開発仕様
VRデバイス :HTCVive(Riftやほかのデバイスにも対応予定)
開発エンジン :Unreal Engine 4.12
マシンスペック :Windows/NVidia GTX1080
開発 :スクウェア・エニックス テクノロジー推進部
開発チーム :10名


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