【新連載】注目のトレンドはこれだ! シリコンバレーVR/ARニュース9月号

みなさん、初めまして。GVR Fundの古森と申します。シリコンバレーを中心にVR/AR関連のスタートアップの投資活動をしています。今月よりシリコンバレーのVR/ARのニュースについて連載を初めさせていただきました。単に記事の翻訳だけではなく、実際にシリコンバレーで見聞きしたVR/ARに関する情報やこちらで感じた感想などを併せて書かせていただければと思います。日本にいるとなかなかシリコンバレーの情報は入ってこないかと思います。連載を通じてシリコンバレーで注目しているニュースやテクノロジーなどお届けし、日本のVR/AR業界を陰ながら支えさせていただければと思います。

9月はVR/ARに関する特に大きなイベントもなく、ビックプレイヤーからの大きなアナウンスメント自体は少ない月でしたが、個別のニュースを追っていくと比較的投資サイドやマーケットに関するニュースが多かったかなという印象です。
 

ビッグニュース

Google is buying part of HTC’s smartphone team for $1.1 billion
 
筆者が考える9月で一番大きなニュースは間違いなくこれではないかと思います。GoogleがHTCのPixel開発チームの一部を1.1億ドル(約1200億円) で買収したというニュースです。これにより、made by Googleというブランドでハードウェア開発を急加速するGoogleがスマートフォンの開発能力を得たことになります。筆者もPixelを使っていますが、Pixelはスマートフォンとしても素晴らしい端末である上に、Daydream、ARCore、Project Tangoに代表されるように今後スマートフォンにGoogle主導でVR/AR機能を組み込んでいくのは間違いない。狙いとしてはスマートフォン上にVR/ARのハードウェア・ソフトウェアのエコシステムを作り、それを土壌としてVRデバイスやARグラスマーケットにスムーズに移っていくのではないかと筆者は考えています。

(参考記事)
・グーグル、HTCのスマホ開発部門の一部を11億ドルで買収
 

デバイス,マーケット関連のニュース

Google, Facebook and Microsoft Line Up For VR Standalone Push

Microsoft, Oculus, Googleがそれぞれスタンドアローン(PCもスマートフォンも使わない一体型)のVRヘッドセットをプッシュするといった内容の記事。皆さんもご存知の通り、VRのマーケットの規模は2016年に期待した通りには推移していない。今後、VRのマーケットを拡大していくためにも安価でかつスタンドアローンで動くVRデバイスは欠かせない。そんな中で、2017年末から2018年の頭にかけてスタンドアローンが口火を切ることが予想されます。
 
まず、Oculusが先日のOculus Connect 4でOculus Goという初のスタンドアローンVRデバイスを199ドルでリリースすると発表しました。詳細はまだあまり出ておらず、おそらくGear VRに近いものと予想されますが、199ドルという価格はたとえ体験がパーフェクトでなくても人々が買いやすい値段であり、市場形成にシリコンバレーのVR/AR関係者は非常に期待しています。またこの記事では、他のプラットフォーマーと違い既存のプラットフォーム、ソフトウェア、ハードウェアにあまり制約を受けずプレイヤーの体験重視で自由に作れるのがOculusの強みだと面白い指摘をしています。
 
Googleはすでに発表にある通り、HTCとLenovoからスタンドアローン端末を年末に出すことが決まっています。プラットフォームはDaydreamになるということが発表され、GoogleはモバイルVRとスタンドアローンVRの両輪でマーケットをプッシュしていく。比較的ローエンド・ミドルエンドにフォーカスした戦略をとっています。

Microsoftは現時点ではケーブルで’繋がったMRヘッドセットが主流ですが、HoloLensを見てわかるように最終的にスタンドアローンも戦略に入れているのは間違い無い。記事では面白い指摘をしており、Xbox One XのチップはAMDが提供しており、AMDは今年リモートコンピューティングの技術を手がけるNiteroを買収しました。将来的にはXbox One XをメインマシーンとしたワイヤレスのMRデバイスを発売するのでは無いかと指摘してます。これはHTC Viveで稼働するTPCASTと似たような仕組みであり、完全なスタンドアローン機よりも高性能なCPU,GPU,バッテリーが使え、より高解像度で没入感の高いコンテンツが提供できる可能性があります。

(参考)
・Oculus、VR普及に向けて一体型VRヘッドセットに照準 199ドルの「Oculus Go」は2018年発売
・グーグル、Daydream対応一体型VRヘッドセットを発表 HTCとLenovoから2017年中に発売へ

Steam Will Support Microsoft’s Windows-based VR Headsets
 
SteamがMircrosoftのMRデバイスに対応すると発表しました。現時点では、デベロッパーがMicrosoft向けに何らかの追加対応が必要かどうかは定かでは無いですが、Steamを展開するValve社はVRのオープンな規格であるOpenVRの提唱者でもありMicrosoftもOculusもHTCもOpenVRに準拠することによってデベロッパーがハードウェア毎に個別対応しなくてもいいようなプラットフォーム構築を目指しています。このことによって消費者はたとえどのメーカーのVRデバイスを持っていてもSteamからゲームを買えば機種変更をしても遊び続けることができ消費者メリットが大きいのは間違いない。どの時代もプラットフォームの仕様の違いはデベロッパー、消費者の頭を大いに悩ませますが、VRにおけるValve社の功績は非常に大きくなっていくと思います。

(参考)
・Steam、マイクロソフトMRヘッドセット向けVRゲームも配信へ 『Halo』のVRゲームも開発が明らかに

 

Star Wars: Jedi Challenges AR Platform Launching This Holiday For $199
 
スタンドアローン関係ではLenovoがJedi Challenges ARというARデバイスとゲームのセットを199ドルで年末にリリースすると発表しました。これはGear VRと同様にスマートフォンを差し込むタイプで、ライトセイバーとトラックするためのビーコンがセットになっています。
似たような端末にMiraという端末がありこちらもスマートフォンを差し込むタイプのデバイスで、ローエンドのARデバイスも着実に広がりを見せてきています。AR Glassの一般消費者向けのマーケットは2017年9末時点はまだまだ見えてきていないですが、VRもモバイルVRが一般消費者のエントリーポイントとして機能しているようにAR Glassもモバイルから拡大していく可能性があります。

(参考)
・自宅で「ジェダイ」になれる スター・ウォーズのARゲームが国内発売

Stack AR is the first ARKit game to top Apple App Store’s free-to-play category

非常に嬉しいニュースが9月末に飛び込んできました。 Ketchapp GamesがリリースしたStack ARがフリーダウンロード第1位を獲得しました。これはARKitベースのアプリでは初めて第1位ダウンロードを獲得したアプリとなりました。もっとも、ARのアプリを作れば直ちにヒットするのかといえばそういうわけでもなく、Ketchapp Gamesはもともとカジュアルゲーム開発が得意なデベロッパーなのでゲーム本来の実力も相当に高かったと著者は見ています。2017年の後半からARKit, ARCoreからなるモバイルARが急加速している印象が業界にいる人は感じていたと思いますが、モバイルARのマーケットの立ち上がりを具体的な結果として印象付けるニュースでありました。

China’s Largest Messaging App ‘WeChat’ is Creating its Own AR Platform
 
引き続きAR関連のニュースになりますが、中国最大のメッセージングアプリであるWeChatがARプラットフォームであるQARを発表しました。WeChatがその基盤となるSLAMテクノロジーをWeChat上に組み込みデベロッパーにSDKを配布するというものです。3rdパーティは自由にWeChat上でAR関連のアプリを作ることができるようになり、アプローチ的にはFacebookのAR Studioに似ています。中国ではGoogleやFacebookなどの欧米のIT企業が制限を受ける傾向にあり、それらの企業が提供するARCoreやAR StudioといったSLAMテクノロジー込みのプラットフォームは使えない。そのため、中国のARマーケットも今までと同様に中国企業が大きなシェアを持つことが予想され、その中でWeChatは大きな存在感を示すことが予想されます。中国でもARブームが押し寄せてきていることは間違いないでしょう。

(参考)
・利用者10億人 中国のメッセアプリWeChatもARへ
 

投資関連のニュース

$1.8B AR/VR investment in LTM to Q3 2017
 
2017Q3(7月−9月)のVR/AR投資状況のニュースがDigi-Capitalから発表されました。Q3は3億ドル(約300億円)ほどの投資額で着地し、2017Q2(4月-6月)はImprobable(5億ドル)とUnity社(4億ドル)の調達で数字が大きく上振れましたが、その特殊要因を覗くと引き続き堅調と見ることができます。マーケットではVR/ARが流行らないと見る人も少なからずいるようですが、少なくとも投資家は引き続きVR/ARに巨額の投資をし続けており、マーケットの離陸を多額の資金面から支え続けています。項目別にはゲームが1割程度しかないと記事は指摘していますが、筆者の肌感覚でもVRゲームへの投資は消極的な状況が続いており、よりプラットフォーム志向のスタートアップに資金が集まっている感触があります。また投資のステージもレイターステージへの投資が増えてきており(Within:4,000万ドル, Leapmotion:5,000万ドル, Immersv:1,050万ドル)スタートアップの明暗も別れてきています。ARに対しては、少しずつ増えてきたもののQ3はニュースを見ていてもまだ本格的には始まってないという印象で、ARの投資が加速するのはQ4以降ではないかと見ています。

Shasta Ventures launches a fund to accelerate AR and VR app development

Applications for betaworks’ newest accelerator, Visioncamp, open September 6
 
ARにフォーカスしたSeedファンドとアクセラレーターのアナウンスが9月に2件も発表されました。まだ投資している段階ではなくAR向けに投資準備か整ったという段階ではありますが、ARマーケットへの投資環境の拡大が急加速している現れです。ARKitのアナウンス以降ARに注目している投資家が肌感としては確実に増えてきておりGVR FundでもAR関連のスタートアップを精力的に見て回っています。AR関連のスタートアップは向こう1年はPre-Seed, Seedラウンドで活況になるのではないかと見ています。筆者も面白いスタートアップを引き続き見つけていきたいです。
 

AMC Partners With Location-Based Virtual Reality Firm Dreamscape Immersive

全米で映画館の運営を手がけるAMCがロサンゼルスのロケーションベースVRゲームの開発会社「Dreamscape Immersive」に1,000万ドルを投資すると発表しました。この投資では向こう18ヶ月の間に、最大で6箇所のAMCの映画館にコンテンツを提供するとされ、ロケーションベースVRゲームの活況を裏付ける発表です。また、同時に1,000万ドルのコンテンツファンドにも投資することが決定しています。すでにIMAX VRもニューヨーク、ロサンゼルスにロケーションベースのVRアーケードを展開しており、全米を代表する映画館の2社がVR体験の展開を加速しています。

(参考)
・映画館に全身VR体験 米で映画館大手がVR企業と提携

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