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業界動向 2017.11.20

注目のトレンドはこれだ! シリコンバレーVR/ARニュース10月号

GVR Fundの古森です。今月もよろしくお願いします。
10月はOculus、Microsoft、Googleなどのプラットフォームサイドのカンファレンスが多く非常に面白い月となりました。カンファレンスの内容は日本語化もされていると思うので、本稿ではあえて大きなアナウンスにあまり触れず、隠れた注目記事を上げていこうと思います。

シリコンバレーVR/ARニュース10月号 目次

1.プラットフォーム
 「Oculus Go」スタンドアローン VRデバイス199ドルで発売
 サムスンが6DoFのスタンドアローンVRデバイス開発中と発表
2.ビジネス
 ディズニーリゾートにStar WarsのVRアトラクション登場
 Target、Amazon、IKEAなどARコマースが次々登場
3.投資/買収
 Appleが画像認識スタートアップRegaind買収
 大型資金調達(Magic Leap、Mapbox、Bigscreen)
 新ファンド (Akatsuki Entertainment Technology Fund、XR Basefund)

プラットフォーム

「Oculus Go」スタンドアローン VRデバイス199ドルで発売

Facebook announces $199 ‘Oculus Go’ standalone VR headset

カンファレンスは触れないと前置きをしましたが、このニュースだけは触れなければならないと思います。Oculusが199ドルの一体型VRデバイスを発表しました。仕様の詳細は公開されていませんが、Gear VRに近いものになると予想されています。

このニュースはシリコンバレーではかなり期待されています。2017年10月現在の最新VRデバイスにスペックは多少見劣りするものの、199ドルという価格は一般に普及するのに十分な価格帯でプレゼントで送るにもちょうど良いと考えられます。また一般消費者だけでなく、エンタープライズ向けの事業を行っている開発者も期待しています。クライアントにVRデバイスと一緒にプロダクトを販売する際に、価格面と手軽さが導入のハードルを大きく引き下げます。

2017年は苦しいマーケット状況が続きましたが、Oculus Goを皮切りに今後のマーケットの拡大が期待される非常に良いニュースだったと思います。

(参考)
・Oculus、VR普及に向けて一体型VRヘッドセットに照準 199ドルの「Oculus Go」は2018年発売
・一体型VRヘッドセットOculus Go、開発者版申込開始

サムスンが6DoFのスタンドアローンVRデバイス開発中と発


※画像は2017年7月に公開された一体型HMDのリファレンスデザイン

Samsung’s next mobile VR headset is going to track your movement

サムスンが6Degrees of Freedom(6DoF、6自由度、全ての方向に自由に動き回ることができる)の一体型VRデバイスを開発中と発表しました。詳細は明らかにはなっていませんが、記事によるとインテルとインサイドアウトトラッキングを協業開発しており、空間内のオブジェクトも自由につかむことができるとされています。

Oculusも2016年10月にSanta Cruzというプロジェクト名で同様の6DoFスタンドアローンVRデバイスの開発を発表しています。正式に同様の発表を行ったのはおそらくOculusに続いてサムスンが2社目になります。HTCやLenovoもスタンドアローンVRデバイスを発表していますが、コントローラーのポジショントラッキングが無く完璧な6DoFではないとされています。

(参考)
・サムスンも一体型VRデバイス開発 4Kで視線追跡搭載
・【体験レポ】ついにベールを脱いだ 一体型VRヘッドセットVive Focus
・【体験レビュー】Oculusの一体型VRヘッドセット次世代機「Santa Cruz」の完成度

ビジネス

ディズニーリゾートにStar WarsのVRアトラクション登場

Tickets Available Now for Star Wars: Secrets of the Empire Hyper-Reality Experience by ILMxLAB and The VOID

ディズニーが12月16日にフロリダ、1月5日にロサンゼルスのディズニーリゾートに、『Star Wars: Secrets of the Empire』という新たなVRアトラクションのチケット販売をスタートすると発表しました。開発はILMxLABとThe VOIDが担当します。The VOIDはすでにニューヨークなどにゴーストバスターズをテーマにしたVR施設をオープンしています。

The VOIDとディズニーが新たなVR体験を作るというニュースは今年の8月に発表された内容でしたが、まさか年内にリリースされるとは想像していなかったです。ディズニーもVRに本格参入し、今後ロケーションベースのVR体験がますます加速することが期待されます。

(参考)
・米ディズニー、年内にスターウォーズがテーマのVRアトラクション導入

Target、Amazon、IKEAなどARコマースが次々登場

Target adds AR shopping to its mobile website
Amazon’s app now lets you place items inside your home using AR
Ikea Place is an AR app that lets you put furniture on the street

9月にiOS11のアップデートとともに、ARKitがリリースされました。このリリースに合わせ、Target、 Amazon、IKEAなどが商品の3Dモデルを空間に置いて実際の配置イメージを確認することのできるARコマースを次々と開始しました。利用用途は主に家具が中心ですが、Amazonは動画を見る限り家具以外の商品にも対応しているようです。家具や商品のARコマースを手がけるスタートアップは一定数存在していましたが、こういった大企業がリリースしてくるとスタートアップは苦戦が予想されます。

こういったサービスを提供するにはAR技術そのものよりも3Dモデルの準備やデータの整備がより難しいですが、ARKitの発表から数ヶ月でリリースできたということはすでに潤沢な3Dモデルを商品と紐づけていたということなので、さすがとしか言いようがありません。

記事によるとAmazonとIKEAはARKitを使っているようです。ARKitがこういった新しい体験のリリースを後押しすることが期待されます。今後が楽しみです。

(参考)
・ネット通販で買う前に家具を自分の部屋に試し置き イケアのiPhone向けARアプリ『IKEA Place』
・アマゾンもAR アプリに商品を“試し置き”できる機能追加

投資/買収

Appleが画像認識スタートアップRegaind買収


Apple quietly acquired computer vision startup Regaind

9月末のニュースですが、AppleがRegaindという画像認識を手がけるスタートアップを密かに買収していました。Regaindは、多量の写真の中から美しさや色彩などの特徴点を見つける技術を開発しており、人の性別や年齢なども認識できるとのことです。記事の中では人々が寝ている間に自動的に場所や時期になどに合わせ最も美しい写真を複数枚選び、自動で思い出の動画を作るといった利用方法が紹介されてます。

AR技術を語る上で、画像、環境認識は欠かせません。例えば動植物の名前や商品のレビューなどを調べたりするのに画像認識が必要ですし、環境認識があればライティングなども動的に変えられ、より没入感のあるAR体験が作れます。この記事から読む解くには少々飛躍してしまいましたが、Appleが広くAR関連技術の買収を引き続き進めているようです。

大型資金調達(Magic Leap、Mapbox、Bigscreen)


Magic Leap confirms $502 million Series D round
Mapbox raises $164M to expand its location platform to cars, VR, AR and Asia
Bigscreen nabs $11M in funding as it looks to build the perfect virtual movie-watching app

今月は大型調達が続いた月となりました。先月号でも「投資は引き続き堅調、徐々にレイターステージに移ってきている」と2017年第3四半期をまとめましたが、肌感としては2017年第4四半期もレイターステージ中心に投資が堅調に推移していると思います。

まずは、Magic Leapが約5億ドルのシリーズDを発表しました。シリコンバレーでVR/ARの投資活動をしている私もどういったプロダクトなのか全く情報がなく、依然として謎に包まれた会社です。遠くない将来にプロダクトの概要をリリースするのではと噂されています。

引き続きAR関連ですが、Mapboxが約1.6億ドルのシリーズCを発表しました。Mapboxは地図関連のデータを提供しているスタートアップです。最近では、Mapdataという会社を買収し、今後ARマップの開発を可能にするSDKを提供していくとのことです。

続いてBigscreenが約1100万ドルのシリーズAを発表しました。Bigscreenが提供しているのはPCの画面をVR空間内にストリームし、友達とそれをVR内で共有できるサービスです。VR x SNSプラットフォームの1つで今後の展開に期待です。

(参考)
・ソフトバンク、位置情報や地図検索の米企業に約185億円を投資
・Magic Leap、5億ドル超の追加調達 累計調達額19億ドルに

新ファンド (Akatsuki Entertainment Technology Fund、XR Basefund)

Japan’s Mobile Gaming Company Akatsuki Launches $50M AR Fund (EXCLUSIVE)
New XR Basefund preps €50 million fund for VR and AR early stage startups

先月に続き、今月もAR専業のファンドが1つ登場しました。日本の株式会社アカツキが5000万ドルのファンドの設立を発表しました。AR/VR/MRなどエンターテインメントと親和性の高い領域、特にARに注力して投資していくとのことです。AR注力ファンドとしては世界最大規模のファンドとなります。AR投資を加速しているVCが増えているため、今後はAR投資環境が活況になることが予想されます。

Ariadne Capital、 2SQRS、 VRBASEの三社共同 で5000万ユーロのXR Basefundの設立が発表されました。ヨーロッパで最大規模のVR/ARファンドとなり、ヨーロッパを中心に40社ほどの投資を行なっていくとのことです。

(参考)
・総額56億円規模 アカツキ、AR/VR/MRへの投資ファンド設立


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