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活用事例 2017.09.15

大手出版社がVRに取り組む理由とは?「小学館VRフェスタ」で人気ゲームやコンテンツを体験

 

小学館は2017年9月6日に、同社内においてVR体験イベント「小学館VRフェスタ」を開催しました。

小学館では以前より社内の有志によるVRの勉強会を行っており、講談社・集英社・小学館の3社で互いにVRに関する情報を交換しているそうです。小学館と集英社が共同で主催する今回の「VRフェスタ」は、その一環として行われたとのこと。基本的には、編集者をはじめとする関係各社の社員のみが参加できる、クローズドのイベントとなっていました。

社内の勉強会といっても、VR業界ではおなじみとなっているコンテンツ企業が10数社ほど出展しており、人気のタイトルを自由に試遊できるという、非常に充実した内容となっていました。また、『ジャンプ美術館』や『DEATH NOTE VR脱出ゲーム』といった集英社のVRコンテンツや、講談社のVRアイドルコンテンツ『Hop Step Sing!』など、関係各社が自社で展開しているVRタイトルも出展されていました。

サンドバッグを実際に殴るアクションゲームなど、話題のコンテンツが勢ぞろい!

ここでは当日に出展されていたタイトルの中から、特に興味深いものをピックアップしてご紹介します。

先ほどもお伝えしたように、今回はクローズドのイベントながら、一般向けの配信がすでに開始されているタイトルや、各種VRイベントでおなじみの人気タイトルなどが多数出展されていました。

ドラゴンに乗って飛行する感覚を体感できる、Circle Hydrangeaのシューティングゲーム『ガンナーオブドラグーン』。各種VRイベントで話題となっているこのタイトルも、会場で体験できました。

VRでライトノベルを“読書する”体験が味わえる、MyDearestのFullDive novel『Innocent Forest』<https://www.fulldivenovel-innocentforest.com/>。そのコンセプトのユニークさから、小説やコミックの編集者からも注目を集めていたようです。

現在Steamで好評配信中のHTC Vive対応ソフト『暗殺教室VR バルーンチャレンジの時間』を、実際にプレイすることができました。

こちらは『週刊少年ジャンプ』の人気コミック『暗殺教室』が題材となっており、殺せんせーが次々と飛ばしてくる風船を、武器を使って割っていきます。360度をフルに使った本格的なシューティングが楽しめる作品です。

今回出展されていたタイトルの中で、個人的にインパクトが大きかったのが、株式会社アタリ(atali,inc.)の『Particle Fighter』です。これはプレイヤーが両手・両足と腹部の5カ所にマーカーをつけて、目の前のサンドバッグを実際に殴って戦うという、体感型のボクシング・アクションゲームなのです! 

もちろん敵もビームなどで攻撃してくるため、パンチで敵の攻撃をはじいたり、ガードを固めてビームを防いだりする必要があります。攻撃を受けると振動によるフィードバックがあったりと、その臨場感はかなりのもの。ただしリアルに殴って戦うために、一回のプレイを終えるとヘトヘトになってしまいますが……(笑)。

巨大なサンドバッグを目の前でビシバシ殴り、その衝撃音が会場に響き渡るので、プレイしている人間だけでなく、観戦している人も大いに楽しめます。ブースの周りは人だかりが途絶えることがなく、今回最も多くの注目を集めていたタイトルの1つと言えるでしょう。

女の子と急接近できる実写VR作品や、医療用VRなどの実用コンテンツも

今回のイベントではゲームのようにインタラクティブ性の強いVRコンテンツだけでなく、動画型のVRコンテンツも体験することができました。

全国のインターネットカフェなどで気軽にVRを体験できる店舗常設型サービス「VR THAETER」のブースでは、同サービスで提供中の20種類以上のコンテンツが体験可能となっていました。その中には「攻殻機動隊 新劇場版 VIRTUAL REALITY DIVER」や「GANTZ:O_VR」といった、このイベントに参加している出版社のコンテンツも用意されていました。

株式会社シータ(THETA)は、現在さまざまなプラットフォームで配信中の実写VRコンテンツ「透明少女」を出展していました。

この「透明少女」は、別世界から転送されてきた女の子たちと急接近できるというもの。クリアで高画質なVRで表現された女性が目と鼻の先にググッと近づいてくる様子は、かなりのインパクトがあります。このイベントでは、雑誌で女性タレントのグラビアを担当している編集者なども、その臨場感を大いに楽しんでいたようでした。

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会場にはエンターテインメント作品だけでなく、実用的なコンテンツも出展されていました。

Holoeyesは、同社が手がけている医療向けVRサービスを出展していました。CTスキャンのデータから患者の内臓や骨格を3Dで構築し、それをVRで見ることができるというものです。

VRで立体的に表現されると、手術の際に重要になる血管の形状や位置を、非常に理解しやすい形で確認することができます。3D画像を回転させたり、自分自身で覗き込んだりすることも直感的にできるなど、このサービスの持つ可能性を強く実感することができました。

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カバー株式会社は、同社が取り組んでいるキャラクターのライブ配信サービスを出展していました。これは、動画の生放送に出演しているパーソナリティを、まるごとCGのキャラクターに置き換えることができるというものです。

手足にマーカーをつけて動きをキャプチャーできるのはもちろん、口の動きも音声にリップシンクして再現できます。そのキャラの声優さんがこのシステムを使用することで、あたかもキャラクターが実際に出演しているかのような感覚が味わえるわけです。セッティングも簡単で、今後応用の可能性が広がりそうなサービスです。

「出版社とVR企業が出会う場を作ることで、新たな化学変化が生まれてほしい」

今回のイベントに携わっている、小学館デジタル事業局の青木岳さんに、会場でお話を伺うことができました。

こうしたVRの社内イベントは、2016年に集英社が行ったのが最初だそうです。今回は集英社と共同で主催する形で、小学館社内で開催される形になったとのこと。

このようにVR関連企業が多数集結するイベントを社内で開催した理由は、ふだんVRイベントの会場に足を運ぶ機会のない社員に、VRをぜひ実際に体験してもらいたかったからだそうです。実際に体験することで、企画を立案する編集者や、広告・宣伝の担当者がVRに対して理解と興味を持つようになり、新しい化学変化が生まれることを期待しているとのこと。

出版社には小説やコミック、図鑑といった既存の人気コンテンツがあり、また編集者はストーリー作りのノウハウを持っています。一方でVR開発メーカーの側はさまざまなVRの技術や、運営やマネタイズの知識を持っています。こういったイベントを行うことで、その両者が出会う機会が生まれて、何かおもしろいものが生まれるきっかけになってほしいと、青木さんは語っていました。

そのためにも、今回参加されている以外にも関心のあるVR関連企業があれば、ぜひ声をかけてもらえると嬉しいそうです。

さまざまな人気コンテンツを有している大手出版社と、VRが出会って新たなVRコンテンツが登場すれば、それは我々ユーザーにとっても楽しみが広がることにつながります。今後の展開に大いに期待したいところです。


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