『ポケモンGO』が出来るまで Niantic川島氏・野村氏がARに託した思い【CEDEC2017】

CEDEC2017、3日目の基調講演ではARアプリ「ポケモンGO」を開発したNianticのDirector of Asia Pacific operations川島優志氏と、シニアプロダクトマネージャーの野村達雄氏が講演しました。

「Go outside」

川島氏はまず、開発に至った理念について、こう語ります。
「子供達のうち、特定の年齢でふさわしい運動が出来ていない子供の割合は80%、世界中で運動不足で亡くなっている人は5700万人。そこで、Nianticは人々に外に出てもらうことで世界を変えることを目指しました。でもどうしたら家の中で遊んでいる人を外に連れ出して、リアルな世界で運動できるのか。人々には世界を探索してほしい」

Nianticが初期に開発した「Field Trip」



もともとはGoogleの社内スタートアップであった「Niantic Labs(ナイアンティック・ラボ)」。代表のジョン氏と川島氏はまず「Field Trip」というアプリを作っています。ある場所に行くと、その場所の歴史や古い写真、情報が表示されるというものですが「これはぜんぜんうまくいかなかった」と川島氏。「Field Trip」の問題点を洗い出し、次に開発したのが「Ingress(イングレス)」です。

「Ingress」


歴史的な場所、公共的な図書館、美術館などの現実世界をフィクションの世界と繋げた陣取りゲームIngressは「外に出なければプレイできないのが鍵」だと川島氏は言います。結果的にIngressは多くのユーザーに支持され、成果も出しました。91%のハイレベルプレイヤーは新しい友人を作り、90%のユーザーはIngressをプレイするために他の都市へ移動しました。15%の人は1000キロ以上旅をして、60%の人は痩せた、などなど。川島氏は「ARゲームは現実世界のユーザーの振る舞いにポジティブな方向に影響を与えることができる。新しく意味のあるソーシャルなつながりを出せる」と主張します。

「ポケモンチャレンジ」の野村氏との出会い


川島氏がグーグルマップの「ポケモンチャレンジ」プロモーションビデオを見たのは2014年3月のことです。エイプリルフール企画として、グーグルマップ上にポケモンが現れ、151匹全部集めるとグーグルがポケモンマスターとして承認してくれるというものです。
「このプロモーションビデオは、現実世界でポケモンを捕まえているような、たいへんよくできたものでした。これがナイアンティックが次に作るものだと確信しました」と川島氏はその日のうちに野村氏に連絡をとったと言います。

始動する「ポケモンGO」プロジェクト


現在はNianticのシニアプロダクトマネージャーをしている野村氏。「ポケモンチャレンジ」当時はまだ28歳と若手ながら、Google本社で活躍していました。
野村氏は「僕はもともとGoogle Japanでマップを作っていました。1年半後にGoogle本社に移り、アンドロイド版のグーグルマップの開発をしながら、エイプリルフール企画をやっていた」と言います。


左上が2012年に「ジョークで作った」という「ドラクエマップ」。左下が翌年の「宝探し」。そして右図が2014年の「ポケモンチャレンジ」です。野村氏は「グーグルマップにポケモンを出して捕まえるというアイディアを思いついたので、日本に帰国した際にポケモンのブランド管理をしている株式会社ポケモンに話を持って行きました。ポケモンさんには快く引き受けていただいたので、ポケモンチャレンジを作りました」と振り返ります。


そして「ポケモンチャレンジのプロモーションビデオを見た川島からARでポケモンをやろうと話が来て、ドンピシャ。絶対に面白いことができる」と野村氏は引き受けたとのこと。
「開発は基本的にはアメリカにあるNiantic。ポケモンのIPを持っているのは日本のポケモン。実際に開発をリードするのは日本人の僕。という特殊な組みあわせで、毎週、テレビ会議を通してミーティングをしてアイディアを詰めながら開発を進めていきました」と野村氏。

「ポケモンGO」の特徴


爆発的なヒットになったポケモンGOですが、Google社内のソフトウェア会社Nianticとポケモンが協力して作ったこのゲームには「今までのゲームとはちょっと違う部分がある」と川島氏は言います。

「第一には『ポケモン』。今年で21周年を迎えるポケモンは世界中で認知されていて、ヒットの下地ができていました。次に、老若男女に遊んでもらえるようにできるだけシンプルなゲームにしていること。そしてAR。Augmented Reality。拡張現実です」。

すでに身近にあるAR


「ARと聞いたときに、新しいハードウェアを想像する人は多いと思うんです。GoogleのTangoデバイスやマイクロソフトのホロレンズのような。しかしARって、すでに皆さんの元にあるんじゃないかとナイアンティックは考えています。左上はGoogleマップ。ユーザーはGoogleマップ画面に案内されながら現実世界を移動します。現実にマップというレイヤーが乗っている。つまり現実が拡張されている。ポケモンGOでは、広い意味でのARを活用しています」と野村氏は主張します。

ポケモンGOを可能にしたテクノロジー


「当時のARというと、QRコードのようなマーカーを置いてカメラを向けると何か出てくる、というのがポピュラーでした。でも街中にマーカーを起き回るというのはあまり現実的じゃない」と野村氏。そこで、最初はGoogleのストリートビューを使いました。
 

野村氏は「ポケモンの出てくる位置にあるストリートビューのイメージをとって、そこにスカイボックスを作ってポケモンを発生させる。最初に作ったそれはぜんぜんうまくいかなかった」と振り返ります。
ストリートビューの写真を撮った瞬間とプレイしている瞬間は、季節や時間帯が異なっているとギャップも大きく、さらに車から撮影しているストリートビューとユーザーの目の高さも異なるため、現実世界との差異が大きくなりすぎます。
 


「混迷していたころに、テックアーティストのデービッドがデモビデオを作ってきてくれました。電話のジャイロとカメラという基礎的なテクノロジーを使って作ったシンプルなもの。それがとても効果的で、みんながこれでいけると確信できました」と野村氏。


ポケモンの発生場所はランダムでは面白くないため、現実の場所をリンクさせています。「現実に水があるところに水ポケモン、という現実を拡張したレイヤーがないとポケモンGOは成り立たない」と野村氏は熱く語ります。

他にも野村氏はサーバーやアートについても話しました。サーバーは数十万人百万人が同時にアクセスした際にダウンしたこともありますが「もともとひとつの世界に地球上の全員を収容するつもりでスケーラブルな設計をしていたのに加えて、後ろで動いているGoogleクラウドエンジンがスケーラビリティを持っていたこともあり、数時間で復旧させられました」と言います。
 

「アートは現実世界の情報を示しているマップを中心に持ってきて、ポケモンが住んでいてもおかしくないような柔らかい世界観とのバランスをとり、さらにポケストップという現実が拡張されたものを持ってきています」と野村氏。UIは老若男女がプレイできるようにできるだけシンプルに。
 
最後に野村氏はNianticのARについて話しました。「ARとは現実世界の体験を、それを体験しているさなかに高めることで、ユーザーに恩恵を与えるコンピューティングのスタイルのひとつだと定義しています。これを皆さんが今後作るゲームに少しでも役立てていただけたらなと思います」
 
惜しみない拍手の中、基調講演の幕は閉じました。

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