Home » Oculus創業者「自分はRift Sを使えない」その理由


話題 2019.03.27

Oculus創業者「自分はRift Sを使えない」その理由

Oculusの創業者の1人で、2017年にFacebookを退職したパルマー・ラッキー氏が、自身のブログでOculusの新型VRヘッドセット「Oculus Rift S」の感想を述べています。同氏は、IPD調節方法の変更を理由に「自分には使えない」と断じました。

Oculus Riftの改良型デバイス「Rift S」

Oculus Rift S(以下Rift S)は、2016年3月に発売されたOculus Rift(以下Rift)の改良型デバイスです。3月にGDC2019にて発表されました。外部センサーを廃した「インサイドアウト方式」を採用するなど、過去に“使いやすさ”の面で課題とされていた個所を解決しています。

IPD調整方法の変更、その影響は?

3月25日付けのブログ内で記した内容によれば、ラッキー氏はRift Sの新たな特長について、トラッキングに外部センサーが不要になった点など概ね好意的な評価をしています。

しかし同氏が憂慮する変更点があります。それは、デバイス側でのIPD調整機構の消失です。

IPD(Interpupillary distance、瞳孔間距離)とは、ある人の左目の右目の瞳孔がどれくらい離れているかを表す数値です。両目で覗き込むVRヘッドセットは、レンズと眼球の光学中心が完全に一致して初めて、最大のパフォーマンスを発揮することができます。そのため、各ユーザーの瞳孔間距離に合わせた調整が重要になります。

オリジナルのRiftでは、本体の右下にIPD調整用のツマミが付いていました。ところがRift Sではこのダイヤルが姿を消し、ソフトウェアでの調整のみに変更されました。レンズの中心間の距離はOculus Goと同じく64mmです。ハードウェアの簡素化により、デバイスコストを低くしていると考えられます。

ラッキー氏はこの変更により、70mm弱で「若干右に寄っている」自身のIPDには対応できなくなり、結果としてヘッドセットを使えないと述べています。「シンデレラの靴がぴったりの(=Rift SのIPD調整が問題なく使える)ユーザーなら、眼精疲労も少なく、VR体験に問題が生じないでしょう」とラッキー氏は記します。「しかしその他のユーザーはなすすべがありません。私もその一人です」


(IPDの分布、被験者3976名で測定を行ったもの)

この対策としてラッキー氏が提案するのは、様々なIPDサイズのRift Sを提供することです。同氏はこの方法であれば、Rift Sの低価格を維持したまま、より多くのユーザーを獲得できるとコメントしています。

エコシステムからシャットアウト

さらにラッキー氏が問題視するのは、今後このRift Sが唯一のOculus製PC向けVRヘッドセットとなってしまうことです。Rift Sは完全にオリジナルのRiftを置き換えるデバイスだとされています。ラッキー氏の言葉を借りれば、Rift SでIPD調節がうまくいかないユーザーはOculusのエコシステムから「閉め出されてしまう」というわけです。ラッキー氏はRift SのIPDは70~80%の人しか使用できないと主張しています。

同氏はOculusにてこのような状況を防ぐべく努めてきたとした上で、「現状を見ると、自分が人生の大半をかけてサポートしてきたエコシステムから、自分自身が遠ざけられている」と嘆き、各人のIPDにあった複数サイズのRift Sを展開した方がいいと提案しています。

(参考)UploadVR


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード