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Meta Quest 2018.10.03

Oculus Questの処理能力はPS3程度 399ドルの一体型VRデバイスの実力

(本記事は、9月28日にRoad to VRに掲載されたBen Lang氏の記事を翻訳したものです)

9月27日、Oculus Connectの講演で、同社CTOのジョン・カーマック氏はお馴染みの原稿を一切見ないスピーチを行いました。その内容はOculus Go、Quest、Rift、その他という幅広いトピックスをカバーしながらも、一歩踏み込んだものとなりました。

講演の一部では、カーマック氏は新一体型VRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」の性能の他のデバイスとの比較、また開発者やユーザーから寄せられるであろう期待への考察を示しました。

処理能力はXbox 360と同程度だが……

Oculus Questは、クアルコムのモバイルプロセッサSnapdragon 835を搭載しています。このチップは、最近のスマートフォンではよく使用されているものです。しかし(Questでは)スマートフォンのような狭い基板上のスペースに押し込められることがないため、オーバーヒートの問題なく、より高いパワーで動作が可能になります。実際のところ、Questはデバイスにファンを内蔵しており、発熱を抑えてヘッドセットのパフォーマンスを最良の状態に保とうとしています。

では、冷却装置を備えたSnapdragonのチップはどのように処理能力に変換され、開発者はどのようなゲームやグラフィックを期待できるのでしょうか?これについて、カーマック氏はいくつかの洞察を示しています。

「処理能力の観点から言うと(中略)Questはおおよそ前世代のコンソール機であるXbox 360やPS3と同じくらいの能力です(後略)」カーマック氏は講演でこのように説明しました。

「しかし覚えておくべき重要な点は、この世代のゲームの大半は解像度が1,280 × 720、フレームレート30FPS程度だったということです。また多くは、アンチエイリアス処理があまりうまく施されていませんでした。一方VRでは、ステレオの2倍である解像度1,280 × 1,280、フレームレート72FPSのレンダリングが必要です。これは、(Xbox)360のゲームの8.5倍の画素数です。加えて、4x MSAA(マルチサンプルアンチエイリアス)を適用し、トライリニアフィルタリングも行うでしょう。必要な処理が更に増えるということです」

このように、VRコンテンツのレンダリングにはより高い解像度、フレームレートが必要になります。従ってQuestの処理能力はXbox 360と同程度ですが、ただちにQuestで”Xbox 360レベル”のグラフィックを体験できるという意味ではない、とカーマック氏は念押ししています。

「つまり、(Xbox 360)世代のAAAタイトルのような高品質のゲームを期待できるわけではありませんし、それがVRの中で再現されるものでもありません。VRのレンダリングには、さらに高い画素数が必要です」

Riftの「コア・マジック」は全て移植可能

もちろんQuestにも長所はあり、デベロッパーがコンテンツ開発に活用することも期待できます。「逆に(Questは)、一般的な他のプラットフォームに比較してかなり豊富なテクスチャメモリとメインメモリを備えています。よって開発プロセスのある部分は容易になるでしょう。また多くの場合、複雑なシェーダーとマルチパスレンダリングによって、とてもリアルなテクスチャを実現することができます」とカーマック氏は説明しています。

しかし、Questが現在のPCのようなグラフィックを実現できるか否かという点は、同氏言うところのQuestの「コア・マジック」には影響を与えるものではありません。
「私は、『Oculus Riftのコア・マジックは全て(Questに)移植可能だ』という自分の発言を全面的に支持します」と同氏は話しました。「ですが、処理能力の違いを無視してはなりません。ハイエンドの大型PCは最大500ワット程度の消費電力があります。一方で(Questのようなものは)5ワットかそこらです。トータルのパワーに、ほぼ100倍の差があるのです」

競合はニンテンドースイッチ

Oculus Questは、ローエンドの一体型ヘッドセットOculus Goと、ハイエンドのPC接続ヘッドセットOculus Riftの中間という位置づけです。このポジションを考えた時、カーマック氏はQuestが、消費者から「ポータブルゲーム機器」として捉えられるだろう、と確信しています。つまり、任天堂の「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」の直接の競合というわけです。

「現実問題として我々は、Nintendo Switchと競合することになるでしょう。私は消費者が『PS4を買うのをやめて、代わりにQuestを買おう』と言うとは思いません。そうではなく、ゲーマーであれば、メインのゲーム機として例えばPCを選ぶかもしれません。そしてQuestをモバイル機器として選ぶのでしょう、現在Switchがそうである(消費者から受け取られている)ように」

もしこの考え方が正しいのであれば、Questは多くのユーザーに向けて、非常に魅力的なコンテンツや、素晴らしい価値を提供しなければならない、ということです。特にSwitchの価格はQuestよりも約100ドル安い点、2019年春のQuest発売予定時期にはさらに下がっているだろうという点を考慮すると、一層その必要があります。

(参考)Road to VR
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