手、人間関係。Oculusは新たな次元のVRへ。Oculus Connect 2で示されたVRの未来への道【中編】

9月23~25日に開催されたOculus Connect 2の振り返り企画。前編に続き中編です。

開発者会議Oculus Connect 2は、「VRを通じてゲーム、エンタメ、人と人のつながりを変える」ことをミッションとするOculusがその姿勢を明確に打ち出し、大きな一歩を踏み出したイベントとなりました。

視覚・聴覚を支配したOculus

VRには、難解な学術的な定義がありますが、一言で平易に言ってしまうと、現実ではない世界に自分がいるかのように錯覚し、体験することだと筆者は考えています。(この定義は様々な説明を参考に筆者なりに噛み砕いたものです)

この錯覚を起こすために、Oculusはまず視覚を錯覚させることから始めました。Gear VR、Riftでは位置のトラッキングの有無はあるものの、360度全方位をガタつきや残像などなく現実に世界を見ているときのように見渡すことができます。そして次は聴覚に注目、音の位置を再現する3Dサウンドを実装し、「後ろから足音が近づいてくる」、「ドラゴンが自分の周りで、とぐろを巻きながら話しかけてくる」、などの表現が可能になりました。

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2016年に発売されるRiftは、視覚と聴覚に関しては違和感のないレベルまで錯覚させることに成功しています。今後も現実の認識とより一致させるべくさらなる性能向上が行われることは間違いありませんが、試作品の開発には一旦一区切りつくことになります。

TouchでOculusが実現する次の新たなVR

Oculusが次に向かうのは、どこなのでしょうか。それを示しているのが2015年6月に発表されたOculus Touch(以下、Touch)です。手で握って、指の動きなどを現実のままに反映させるデバイスで、物にあたったときに振動する機能も搭載しています。当初、筆者はこのデバイスはあくまでも「VR専用のコントローラー」であると考えていました。

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東京ゲームショウでメディアとして招かれたクローズドブースでOculusが制作した色々な物を手で掴んだりして遊ぶ『Toy Box』を体験した際も、このTouchでの体験は衝撃こそあったものの、認識はまだ「直感的なコントローラー」でした。他にもVRで物をつかめるコントローラーとしては、PlayStation VRで使われるPS Moveコントローラーがあります。そちらはあくまでもスティック状のコントローラーという感覚。自分自身、ゲーマーということもあり、Oculus Touchもあくまでもコントローラーという考えが抜けなかったのです。

関連記事:体験した人が口をそろえて『スゴい』と言う、Oculus Touchで楽しむ、これまでにないVR体験とは?

Oculus Connect 2では、このTouchを使ったデモが11点ほど展示されました。筆者は空いた時間をこのTouchの体験に費やし、累計3時間以上このTouchを体験しました。繰り返した結果、至ったのはTouchはコントローラーというよりは「手をVRの中に入れるデバイス」だということです。手で何かを操作をするわけではなく、VRの中に見えている手は自分の手だと脳が錯覚しているのです。

今回展示されていたデモの中でも最も面白かったデモが、Epic Gamesが開発した銃撃戦を体験する『Bullet Train』です。

『Bullet Train』では、銃を手に取り、リロードをして、敵をめがけて打つ。こちらに向かってくる弾をつまんで、敵に投げ返す、などの激しいアクションが盛りだくさんのゲームです。このアクション全てをプレイヤーはその通りの手の動きをして実行できます。これはもはや操作とは言えません。プレイヤーは実際に自分の手で銃を持ち、引き金を引いているのです。その楽しさは「操作」していたゲームの楽しさとは全く異なるものでした。

https://www.youtube.com/watch?v=DmaxmnPzMWE

関連記事:【体験レポ】Oculus Touchで体験したこれまでで最も楽しい銃撃戦。VRFPS『Bullet Train』

VRの手を自分の手だと錯覚する感覚

なぜ錯覚という言葉を繰り返し使って強調しているのか、その考えに至ったエピソードを2つ紹介したいと思います。

Touchを自分の手のように錯覚するのは、もちろん位置や指の動きの追随性が正確だからであることは言うまでもありません。Touchを装着する手順は、まず立った状態でRiftを被り、お腹くらいの位置に両手を差し出します。係員がストラップを手に通してからTouchをその手に合わせて持たせてくれるのですが、そのときに下を向くと、鼻とRiftの間の若干の隙間から自分の手が見えます。しかしRiftに映ってるVR内の自分の手も同時に目に入るのです。Touchを持つ瞬間、現実の手とVRの中の手がつながっているかのような感覚になったことは驚きでした。

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そして、1日中Touchをたっぷりと2時間以上体験した日の夜、時差ボケもありやや疲れていた筆者は会場のあるハリウッドの交差点でiPhoneを触っていました。そのとき突然、まるで自分の手がVRの中にある手を見ているときのような不思議な感覚になったのです。脳自体が疲れていたということもあるため、平常時でこのようなことは起きないと思いますが、現実の手をバーチャルな手のように感じるという、VRを体験するときとは別の感覚でした。まさに脳が錯覚し現実とVRを混同してしまっていたことに他ならないと思われます。

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機能を拡張したバーチャルな自分の手

さらに、Oculusが自社で作った造形ツール『Medium』は手をVRに再現した上でさらに改めてボタンなどによる操作性を付与し、まるで手の機能が増えたかのような錯覚を引き起こす試みも行っています。

https://www.youtube.com/watch?v=IreEK-abHio

関連記事:【体験レポ】Oculus Touchを使い、手を動かして作る粘土作品。直感的なVR造形ツール『Medium』

『Medium』はゲームではなく、VR空間内で造形を行うことができるツールです。こちらはTouchに付属したボタンを活用します。例えば、型を作る、色を塗るといった具合に左手のTouchのアナログスティックを使ってアクションメニューを開いた後に、右手の道具でメニューを突っついて決定します。

そして右手のTouchを使ってそれを実際に目の前の空間で実行していきます。球体を出現させたら、それを削ったり、スプレーを吹きかけたり、アナログスティックとボタンを使うことで、造形に必要な様々なアクションを可能にしています。イメージとしては、左手にある多機能パレットを使って右手の道具を多種多様に変形させていく、といった感覚です。

慣れるまでは5分ほど、慣れれば自由に自分の作りたい形を作ることが出来ます。会場で参加者が作った作品の一部はMediumの公式ツイッターアカウントが投稿しています。

このMediumの体験は、『Bullet Train』と異なり「TouchそのものをVRに入れる」という体験であり、ボタン等の操作が入ってきます。しかしその感覚は非常に直感的であり、Touchがまるで自分の手であるかのように錯覚していたのではないかと思います。手の機能を超え、バーチャルな手が多機能なものとして存在しているような感覚に浸っていました。

筆者は美術のセンスが全く無いため、とても作品といえるものを作ることはできませんでした。しかし、Mediumの公式Twitterアカウントの投稿を見ると、多様なクリエイティビティあふれる作品が5〜7分という非常に短時間で制作されていることに驚かされます。

https://www.youtube.com/watch?v=KcI0olK0oBg

VRが実現するこれまでにない新たなコミュニケーション

視覚と聴覚の次に、Oculusは手のVRを実現しようとしています。そして体験できたデモのうち最も人気だった2つのデモ『Medium』と『Toybox』は、他のプレイヤーと一緒に同じVR空間内に入って遊ぶというものでした。頭と手が浮いているだけのアバターですが、Riftに内蔵されたマイクを使って話しながら、一緒に物を掴んで投げたり、粘土をこねているうちに、(本当は別々の部屋にいる)物理的な距離をもろともしない親近感を感じるようになります。SFの中の話のようですが、かつてインターネットの普及が新しいコミュニケーションや人間関係を生み出したように、VRが人と人の新たな関係性をもたらすことは間違いなさそうです。

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Touchは体験そのものが全く新しいものでOculusがVRをとことん追求するスタンスを象徴しています。

25日の基調講演の翌日の26日には早くもセッションにて 『Medium』の開発ノウハウが共有されました。『Toybox』のノウハウに関するセッションも行われおり、Oculusは、そのノウハウを元にサードパーティによるTouchのコンテンツづくりを加速し、広めようとしているのではないでしょうか。今後も驚くべきコンテンツが登場することは間違いありません

前編:快適にVRを体験できるプロダクトを完成させたOculus。Oculus Connect 2で示されたVRの未来への道【前編】
後編:後塵を拝した日本は追いつけるのか。Oculus Connect 2で示されたVRの未来への道【後編】

この記事を書いた人

  • KFtb1VIM

    慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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