オバマ退任演説の360度生中継はいかに実現したのか

VRScout Studioは、Radiant Imges、vantage.tv、Nokia OZOそしてホワイトハウスと共同でオバマ大統領の退任演説の様子を360度ライブ動画ストリーミングしました。この試みは、退任演説史上初めて360度で撮影された演説であり、また、Facebook、YouTube、Twitter/Periscopeへの同時配信も初めての試みでした。VRScoutチームが準備や実際の配信でどのように準備し、問題を解決していったのかをレポートしています。

以下はVR Scoutのレポートのサマリーとなります。

退任演説の撮影プランをホワイトハウスへ提案

VRScoutチームは、2016年10月からホワイトハウスと撮影について打ち合わせを開始しました。オバマ大統領は就任当初から新しい技術を積極的に採用してきており、Twitterで@POTUSからツイートし、Facebookのライブ配信を行い、Snapchatのフィルターも使いました。VR動画へもFelix & Paul Studioによって作成されたアメリカ国立公園を紹介する『Through the Ages』に出演しています。以下の写真は、ドイツでGoogle Cardboardを体験している様子です。

ホワイトハウスへ私たちは“HOLOBAMA”と名付けた退任演説を専用の3Dキャプチャースタジオで撮影し、演説の様子をホログラフィックに保存する案などを持っていきました。

その後数ヶ月にわたり、さまざまな広報、デジタル部門関係者、そしてセキュリティーチームとの話し合いの結果、360度動画のライブストリーミングの許可が下りたのがわずか演説の10日前の2017年1月1日でした。

ここから、急いでパートナーと機材などの準備を行い奇跡的に間に合うことができました。

会場での撮影場所、方法について

カメラはNokia OZOを使うことにしました。このVRカメラは360度x360度の動画、8つのマイクで360度のサラウンドを録音できます。

イベントの数日前に会場に到着し、ホワイトハウスの関係者とカメラの配置について調整しました。今回は3台のOZOカメラを設置して、1台をバックアップとしました。セキュリティーが非常に厳しく、セットアップに時間がかかりました。下記図は当初想定していた撮影位置(赤)と、最終的に配置した場所(緑)の比較です。

360度カメラを撮影するさい、多くの人が主役の目の前に360度カメラを置くことの重要さを理解できません。これは、多くの人が普通のカメラにズームがあり対象物を拡大して表示できるのに対して、360度カメラは固定した場所からの視点になるということが理解されていないからです。

当初、ホワイトハウスとの打ち合わせでは、最低1台のカメラは大統領から12フィート(約3.65m)以内に配置したいと希望していました。会場に着いたあともシークレットサービスと撮影場所について協議を続けました。最終的には、当初案よりも大統領から離れる位置になりましたが、それでも私たちはメディアの中で唯一座席エリア内への配置が許可されたメディアであり非常に幸運でした。

会場の照明と録音環境

360度動画を制作する上で光源と音声は非常に重要です。音は、OZO内蔵の360度オーディオではなく、大統領のマイクから直接録音したため、高品質なオーディオを入手できました。しかし、照明環境はほとんど制御できませんでした。カメラ#2からのショット(下図)は最も暗く、このカメラに切り替えることはほとんどありませんでした。一方、カメラ#3は、大統領の近くにいる観客の前方かつ中央に配置されたため、非常にうまく撮影できました。

各サービスへのストリーミング方法

直接ストリーミングできたのは、12月に4K360度ライブストリーミングに対応を発表したYouTubeだけでした。実際にYouTubeにアップロードされたストリームは以下から見ることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=klE8H_be_6Q

FacebookやTwitter/Periscopeはより検討が必要でした。Periscopeの360度ライブストリーミング機能は一部のパートナー向けのβ版であり、Facebookに至ってはAlpha版で、唯一ナショナルジオグラフィックがテストを許可されただけでした。

配信作業は、Nokia OZOで作成しているため、リアルタイム3DスティッチングやライブVR配信が可能なOZO Liveを使用しました。OZO Liveパイプラインとワークフローをさらに詳しく知りたい場合は、OZO LIVEソースライブラリを参照してみてください。

実際の配信時は、vantage.tvのメンバーが下記のような放送機器を使って切り替えを行い、不具合なくストリーミングを行いました。

ストリーミング時は、Radiant ImageのElemental encoderを使い、Wowzaをバックアップとして使用することで、単一のエンコーダーからクラウド内で動画変換と暗号化が可能になりました。

360度動画で退任演説を配信した理由

360度動画を最大限に活用することで、見ることや行くことのできない場所に視聴者を連れて行くことができます。今回のケースでは、オバマ大統領の退任演説を聞く群衆となって、会場の人々に最後の言葉を届けたときのエネルギーを感じる機会を皆さんに与えることができました。

(参考)

How We Live Streamed President Obama in 360° – (英語)

http://vrscout.com/projects/how-to-360-live-stream-president-obama/

※Mogura VR は、VR Scoutとパートナーシップを結んでいます。

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この記事を書いた人

  • あつぽん

    日本でMRシステムの開発に携わった後アメリカへ渡り、VR/MRシステムを企業へ導入するための検討・開発に従事。現在は日本在住。

    人間の能力そのものを拡張させるテクノロジー「ヒューマンオーグメンテーション」のコンセプトに惹かれ、その界隈の動向に強い関心を持っています。その中で実用化フェーズにあるVR/MRの盛り上がりをより広い範囲へわかりやすく伝えていきたいと思っています。

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