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トレーニング・研修 2018.01.16

20年間収監中の受刑者が仮釈放生活をVR体験 社会復帰を目指す

長期にわたって収監されている受刑者たちが社会復帰の準備をするため、コロラド州にある矯正施設ではVR(バーチャル・リアリティ)を使って実生活を体験するプログラムを実施しています。

アメリカの裁判所は2012年、未成年で終身刑を宣告された受刑者が仮釈放の機会を与えられないことは違憲との判決を下しました。2017年にコロラド州では、16ー17歳で終身刑になり、すでに20年間以上収容所で刑に服している受刑者たちのため、仮釈放された場合に実生活を送るための有益なトレーニング内容と貴重な指導が含まれた早期釈放プログラムを開始しました。

生活を体験する

VRトレーニング用ソフトウェアを開発するNSENAのCEO Ethan Moeller氏は、約2年をかけて、受刑者向けのトレーニングプログラムを作成しました。VRヘッドセットを装着して、野生のゾウを鑑賞したり、飛んでいる戦闘機の操縦席に座ってみたりという臨場感溢れる360度動画体験からはじまります。次にHTC Viveのヘッドセットを装着し、自らコミュニケーションを行う場面をVRで体験します。

スーパーマーケットでのセルフ清算レジを使い商品を袋詰めしたり、クレジットカードでの買い物方法、喧嘩が起きた際の対処法、コインランドリーでの洗濯の仕方など、より実践的な内容です。このVRトレーニングは、10代から収容されている受刑者たちが仮釈放される前に、あらゆる場面を教育し実生活を送る準備をするための内容が含まれています。

今回のVRトレーニングを作成したNSENAのMoeller氏は、警察官向けVRトレーニングソフトウェアの開発も行っています。違反車両の停止を行ったり、自殺防止をするなどという内容のトレーニングができます。

釈放後の生活面での不安

動画の中でVR体験を行った受刑者たちは、「自動清算レジがある店が食料品店だということにすら気づかなかった。自分たちが覚えている世界とはかなり変わっていることに驚きを隠せない。」「自分は収容所の中で一生を過ごすのだろうと今まで思っていたので、仮釈放されて収容所でない場所で生活していくことは精神的に追いついていけないと思う。」と述べています。

受刑者たちが収監されていた過去20年間に社会で起こった変化や新技術の発展をVR技術を使って体験し、外の世界に出たときの生活面での不安を軽減していくことが期待されています。Moeller氏は「VRトレーニングを通して、受刑者たちが収容所の外に出て行く前に実生活の準備ができることはとても役立つことだと考えています。」と語っています。

(参考)

Inmates Use VR To Prepare For Life On The Outside / VRScout(英語)
https://vrscout.com/news/inmates-vr-prepare-life-on-outside/

THIS PRISON IS USING VR TO TEACH INMATES HOW TO LIVE ON THE OUTSIDE / VICE NEWS(英語)
https://news.vice.com/en_us/article/bjym3w/this-prison-is-using-vr-to-teach-inmates-how-to-live-on-the-outside

Supreme Court: Life sentences on juveniles open for later reviews / The Washington Post(英語)
https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/supreme-court-juveniles-sentenced-to-life-have-option-for-new-reviews/2016/01/25/06e3dfc2-c378-11e5-8965-0607e0e265ce_story.html

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