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VIVE 2016.11.30

HTC Viveの位置検出用ベースステーションが次世代機で目指すコスト削減

ValveはHTC Viveに搭載されているSteamVRトラッキングシステム「Lighthouse」に使われる次世代ベースステーションの開発を進めています。今後は、より簡素化され、コスト削減や信頼性の向上および小型化、精度向上を目指しています。

HTC Vvie用ベースステーション

VR用ヘッドセットは、今のところ誰でも手が出せる価格ではありませんが、スマートフォン市場のように、市場とデバイスが成熟すれば大幅に価格が下がる可能性があります。

Viveの場合、一番コストがかかっているのはトラッキングシステムです。Viveで使われているLighthouseは、ベースステーションから発するレーザーと、ヘッドセット側の受光部で構成されています。ベースステーションはVive購入時に2個同梱され、モーター、レーザー、LED、およびそれらを制御する電子回路が入っています。

ベースステーションは、Viveのアクセサリーページを見ると単体の値段が134ドル、2つ使用することから、各パーツの中で一番高いパーツだということが予想されます。従って、Valveはベースステーションの設計をより簡素化してコストを抑えたいと考えています。先月行われた「Steam Dev Days」では、コストを大幅に削減できるような手法を含むベースステーションの将来の姿を垣間見ることができました。

新ベースステーションはモーターは1つのみに

現在のベースステーションは、2つのモーターを利用し、空間を横切るようにレーザー光をだしてスキャンします。1つはX軸方向にそってスキャンし、もう1つはY軸方向にそってスキャンします。各モーターコンポーネントは、それぞれレーザーダイオード、光学系、モーター制御基板、ホイールなどが必要です。

Valveのエンジニアであるベン・ジャクソン氏は、先月のSteam Dev Daysで、1つのモーターからX軸とY軸の情報を取得する方式について発表しました。特徴的なのは、モーターごとに直線のレーザー光でスキャンするのではなく、1つのモーターで2本のレーザー光を“V字”パターンでスキャンすることです。この方式により、1セット分のモーターコンポーネントが不要になります。

左:現在の2つモーターを使用したレーザー光のレイアウト 右:1つのモーターを使用したレーザー光のレイアウト

次世代Lighthouseはコスト削減と信頼性向上を実現

2014年からLighthouseの開発でValveと協力しているTriad Semiconductor社のReid Wender氏は、モーターの数を減らすことにより、システムのコストダウンをすばやく行えるのではないかと予想しています。また、動作部品の半分がなくなるのは製造コストの削減だけでなく、簡素化により出荷時の校正が容易になります。その結果、信頼性が高くなりサポートコストも削減できると述べています。

Jackson氏はまた、Triad社の製造するLighthouse用チップについて、新たに開発しているチップにより、コストを削減しつつトラッキング精度を上げようとしていることも触れました。

以上の話を具体的にどの程度コスト削減ができるのか大ざっぱに予想してみます。モーターコンポーネントが2つから1つになるのと、出荷時の校正の簡易化によりベースステーションの価格が約半分になると、ベースステーション1台分の135ドル安くなり、システム価格が665ドルになります(約17%のコスト削減)。さらに、Triad社の新しいチップによりさらに安くなることも予想されます。

ただ、これらの新しいベースステーションやチップが現在のシステムの更新版として提供されるか、新型に搭載されるのかはまだ明確ではありません。

LighthouseはVR界のデファクトスタンダードになるか

Lighthouseは、既存のモーションキャプチャーシステムやOculus Riftで用いられている画像処理によって位置と姿勢を求めるするシステムではなく、レーザーを用いて画像処理の計算負荷を抑えつつ安価にしたことが特徴です。しかし、モーターのような動くコンポーネントがある分信頼性が低くなってしまうのが懸念でした。

Valveのアプローチは、動作部品を減らすことでコスト削減と信頼性向上の両方を同時に進めることができます。また、Lighthouse自体もライセンスフリーでサードパーティが参入できるようにしておりデファクトスタンダードを目指していると考えられます。このまま、LighthouseがVRにおけるトラッキングシステムのデファクトスタンダードになるのか、Oculusのシステムがスタンダートとなるのか、はたまたその他のシステムが現れるか注目です。

(参考)

Next-gen Lighthouse Base Station Could Bring “rapid cost reductions” – (英語)

http://www.roadtovr.com/next-gen-lighthouse-base-station-bring-rapid-cost-reductions/

※Mogura VRはRoad to VRとパートナーシップを結んでいます。


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