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活用事例 2017.05.04

WebVRはVR普及のきっかけになるか?FirefoxのMozillaはAR対応も目指す

Webブラウザ「FireFox」を開発しているMozillaは、Web上でも高品質なバーチャルリアリティ体験を提供するWebVRの開発を行っています。Mozillaは、Web上でVRアプリケーションが動作すれば、単一のアプリケーションでさまざまなヘッドセットが動作し、配布も簡単になると述べており、GoogleやMicrosoftなどのWebブラウザを提供する企業と共にWebVRに注力しています。

MoziilaのWebVRへの取り組み

近年、Oculus RiftやHTC Viveといった各VRヘッドセット向けのアプリケーションは多数リリースされてきましたが、異なるヘッドセットで同じアプリケーションを動作させることはできません。また、開発したアプリケーションを配布するためには各ヘッドセット向けに用意されているストアへ登録が必要であり、配布にもハードルがあります。

主要なWebブラウザの一つである「FireFox」を開発しているMozillaは、WebベースのVRアプリケーションを簡単に設計できるように、オープンソースのJavaScript APIであるWebVRとA-Frameと呼ばれるHTMLフレームワークを提唱しました。A-FrameはGear VRといったモバイルヘッドセットや、Oculus Riftなどのデスクトップ向けVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)などさまざまなプラットフォームで動作します。

WebVRは、Webブラウザー上で、ソフトウェアのダウンロードやインストール無しに使用できる仕組みです。Google Chromeも公式にサポートしています。スマートフォンでも動作できるため、グラフィックスの品質はPC向けのVRHMDのと同程度まで上げるには劣りますが、それでも十分に高品質です。

例えば、ルームスケールで都市の地域データを可視化する『CityViewR』はMozillaのA-Frameプラットフォームを使っています。また、Mozilla自身も『A-Painter』といった空間中に複数人でペインティングができるアプリケーションを開発しています。HTC Vive向けの『Tilt Brush』と同じようなことがブラウザでできます。

WebVRで何が変わるのか

MozillaのシニアバイスプレジデントであるSean White氏は、先端技術部門を率いています。この部門では、3〜5年後に普及すると思われる技術を扱っており、WebVRはその1分野です。米メディアVR Scoutに対して同氏は、こう語っています「WebVRが素晴らしいのは、多くのプラットフォームで動作することです。A-Frameのようなツールにより、多くの人がクリエイティビティを発揮できるようになりました。アプリを共有したいときはWebページを共有するだけで誰とでも簡単に共有できます」。

Mozillaによると、A-Frameは、VRアプリケーションを開発する上で通常は重要となる線形代数やC++のようなプログラミング言語を理解する必要はないとしています。また、Web上でアプリを共有するということは、SteamやOculusのような配信プラットフォームの承認を待つ必要もありません。

今年中にWebVRを主要なVRヘッドセットとWebブラウザで利用できるようにするとWhite氏は述べています。 そして今後5年間で、MozillaはVRだけでなく現実にデジタル情報を表示するAR(拡張現実感)のための機能も追加しながら互換性を維持したいと考えています。 (こちらで現在のWebVRの互換性を確認できます。)

WebVRの課題

WebVRが現在直面している最大の課題は、現在VRプラットフォームが直面している課題と同様です。「課題はどのようにして魅力的なコンテンツを作り、ユーザーがVRHMDを再び使おうと思ってもらうかだ」とWhite氏は述べています。この点について、同氏は以下のようにも付け加えています。

「この課題はWebVRが解決に貢献できるポイントでもあります。開発者は新しいVRアプリケーションを配布する際に、すぐに配布しフィードバックを集め、修正版を配布できます。」

また、WebVRの技術的な課題としては、Web上で大きなファイルを送受信すること、帯域幅の制限、および増え続けるデバイスの互換性などがあります。

MozillaのWebVR、A-Frameの今後の取り組み

Mozillaは、去年から今年にかけて、WebVR、A-Frameフレームワークの利用を促進するために、世界中の展示会で展示を行っています。彼らは既存の開発者がA-Frameを試してWebVRコンテンツを試作してもらうことに焦点を当てているといいます。

「A-Frameは、開発者が幅広い種類のWebVRアプリケーションを構築するための最善の方法として我々がサポートするフレームワークです」と同氏は述べています。 「標準化団体と協力し、コミュニティを支援し、ワークショップに出席し、WebVRとA-Frameの成功に向けて資料などを整備していきます。」

以下のビデオにはWebVRで作成された多くのアプリケーションが登場しています。

 

Mozillaだけでなく、現在はOculusもReactVRと呼ばれるWebVRのフレームワークを公開しています。いずれも主要なデバイスとブラウザに対応することを目指しており、協力してWebVRの普及を図っていくとのこと。講演を行ったOculusの担当者は「WebVRはVR普及のキラーコンテンツになる」とも言っており、期待が集まっています。

WebVRの動きはじわじわと広がっており、引き続き注目したいトピックです。

(参考)
Mozilla Pushes Game-changing WebVR to Bring VR to the Masses – (英語)
https://vrscout.com/news/mozilla-webvr-vr-to-masses/

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