8月24日から3日間にわたって開催されたCEDEC2016ではVRに関するさまざまな講演が行われました。
今回は、明治大学の加藤邦拓氏により行われた「「印刷」で作るスマホ・HMDゲームインタフェース - ユーザ自身によるインタフェースのデザイン・作成・共有 -」についてレポートしていきます。
MilboxTouchはスマートフォンを装着するタイプのVRデバイスです。導電性の特殊インクを使用して印刷したコントローラーを搭載しておりタッチ操作が可能。側面にある円盤のコントローラーに触れることによって中に入っているスマートフォンを操作することができます。
導電性のインクが可能にするスマホ操作
加藤氏らがまず注目したのは、スマートフォンやタブレット端末の操作。静電容量の変化でどこをタッチしたか判別しており、人間の指だけでなく金属や導電性のゴムを介しても入力が可能になります。
試行錯誤を重ねて開発したのがExtensionSticker(エクステンションスティーカー)と呼ばれるもの。導電性のインクを縞模様に印刷することで連続してのタッチ入力が可能になりスクロール操作を実現しています。このExtensionStickerがMilBoxTouchの基となった技術になります。
スマートフォンの側面やスマートウォッチのバンドに貼ることでタッチパネルを汚さず、小さい画面を隠さずにスクロール操作をすることができます。
ユーザーの入力部分をコの字型にすることで一本指での操作でピンチ操作ができるようにも。
こちらは縞模様を円形に印刷したものでユーザー側がぐるぐる回すような操作で
スマホ側は上下のスクロール操作になるというものです。
この円形印刷を利用したのがMilBoxTouchのコントローラーです。デバイス側面の操作を
スマホ側まで延長することでExtensionStickerと同じ操作を実現しています。
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MilboxTouchでは、円形のインターフェイス一つで「スクロール」、「スワイプ」、「タップ」というよく使う操作をすべて行うことが可能です。
MilboxTouchの開発は、明治大学、株式会社WHITE、サンメッセ株式会社の産学連携で2015年の3月から始まりました。
最初のプロトタイプは加藤氏が工作してダンボール製のHMDにExtensionStickerを貼っただけというもの。両面テープを利用してスマホの画面などに貼っています。それでは使い勝手が悪く新しい接続方法を考える必要があり、考えたのが壁を立ててスマホ画面に押し付ける方法だったとのこと。
製品版とほぼ変わらない形になったのが2015月末頃です。インターフェイス部分は触るにつれて摩耗していくため、入れ替えることを考慮したカートリッジ式になっています。
製品化するにあたりインク素材として元々使用していた銀ではコストがかかってしまうためアルミやカーボンなどさまざまな素材を試したとのこと。しかし耐久性や認識制度の面において銀にまさる結果にはならず、製品版でも採銀インクが採用されました。
2016年4月26日に一般販売を開始し、現在はAmazonで購入することができます。
MilBoxTouch向けのオリジナルコンテンツとしてパックマンをVR化した『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』(iOS版、Android版)を製作し、配信しています。
開発開始から販売まで約1年という短い期間で製作されています。短い期間で開発できた理由として産学連携を行ったことや印刷で作る物のためプロトタイプが作りやすかったとのこと。
MilboxTouchの活用可能性として加藤氏は例をあげました。VRデバイスとコントローラーを低コストで提供できるため、雑誌などの付録にしやすいことや、さまざまな操作をすることができるためPlayStation VRなどのハイエンドなVR機器向けに提供されているコンテンツの体験版を動画ではなく簡易的なゲームとしてリリースすることができるかもしれないとのこと。
ExtensionStickerなどで使っている導電性インクや専用のプリンターはAmazonなど
で販売されており印刷業者に頼むこと無く家庭で印刷し使用することが可能です。
印刷によるインターフェイス作成技術の未来として、上記でも記述している安価でHMDインターフェイスを提供できることや、ハードウェア設計者が自分に合った形のインターフェイスを自由に作成可能でありそれをWebで共有することもできると述べ、本セッションは締めくくられました。