Home » VRヘッドセット「Meta Quest 2」の詳細なディスプレイ仕様が学会発表。Metaも“人の目レベルのVR”目指す


テック 2022.05.20

VRヘッドセット「Meta Quest 2」の詳細なディスプレイ仕様が学会発表。Metaも“人の目レベルのVR”目指す

Metaは世界最大のディスプレイ学会「Display Week 2022」の講演にて、VRヘッドセット「Meta Quest 2」の液晶ディスプレイの詳細な仕様を発表しました。「High-PPI Fast-Switch Display Development for Oculus Quest 2 VR Headsets」と題された講演において、Metaのディスプレイエンジニア・Cheon Hong Kim氏が登壇。VRヘッドセットに液晶ディスプレイを導入する際の設計課題について述べています。

Meta Quest 2の“ファストスイッチ”LCDの秘密

VRヘッドセットで使用されるディスプレイでは「低永続性(Low Persistence)」と呼ばれる、各フレームの一部の時間のみ画面を発光させる手法が重要になります。

各フレームはある時点の情報を正確に表していますが、現実では、頭を回転させたり動かしたりすると、目に届く光が連続的に変化します。仮に画面が常に発光していた場合、頭部が回転しても目には元の位置の光が届いてしまい、脳はこれをモーションブラー(残像)として認識してしまいます。一例として、2013年に出荷された開発者向けキット「Oculus Rift DK1」にはこの問題がありましたが、2014年の「DK2」で解決されました。

リフレッシュレートが十分に高い場合(多くの人にとっては約70Hz以上)、ディスプレイが完全に発光を止めて真っ暗になるフレームが存在しても、使用者はほとんど気が付くことはありません。コンシューマー向けVRの第一世代である製品版「Oculus Rift」や「HTC VIVE」、「PlayStation VR」は有機EL(OLED)ディスプレイを使用していました。有機ELディスプレイは自己発光し、応答時間が非常に速いため、フレームの大部分を簡単にオフにすることが可能でした。

当初の液晶ディスプレイは応答時間が長く、VRには不向きと考えられていました。しかし2017年にWindows MR系ヘッドセットが発売されて以降、「ファストスイッチ」と呼ばれるタイプの液晶パネルが登場。これは液晶が“落ち着く”のを待ってから、一部フレームのバックライトを点灯させる仕組みが搭載されており、Meta Quest 2のみならず、「Oculus Go」や「Oculus Rift S」にも採用されています。

Meta Quest 2のパネルサイズとppiが初の公式発表

講演では、Meta Quest 2の液晶ディスプレイのパネルサイズが両目で5.46インチ(約13.8センチ、773ppi)であることが公表されました。パネルの輝度が100nitsであることも明らかにされましたが、これは上述の「低永続性」状態での数値とのこと。

また、ディスプレイの物理的特性も一部判明しています。Meta Quest 2は、3つの瞳孔間距離(IPD)設定と2つのレンズを搭載していますが、パネルは1枚のみ。「VALVE INDEX」や「HP Reverb G2」などのVRヘッドセットは片目につきそれぞれ1枚ずつ、合計2枚のパネルを採用していますが、Meta Quest 2は大型のパネルを1枚採用する形式です。

したがってパネルの一部分だけが使用されているほか、レンズは正方形ではなく円形に近いため、ディスプレイの一番隅の部分はカットされているとのこと。このように、1枚の液晶パネルを区切る形で使用するため、実際に1つの目で見えるピクセル数は、公式ストアにおける Meta Quest 2の仕様に記載されている画素数(片目あたり1920×1832ピクセル)よりも少なくなっています。

VRの進歩は着実だが、スクリーンドア現象は「まだ完全には解決されていない」

Kim氏は、VRヘッドセットにおける「スクリーンドア現象」の原因についても詳しく説明しました。スクリーンドア現象は、ディスプレイ解像度等が原因で、VRヘッドセットを使用する際に、ピクセルとピクセルの隙間(=網目模様)が見えてしまう問題です。

スクリーンドア現象はVRヘッドセット用に搭載する液晶パネルを決定・調達する際に強く考慮すべき事項であり、Kim氏は「Meta Quest 2は、この問題を完全には解消できていない」とコメント。将来的には高PPIのマイクロディスプレイ、さまざまなフォービエイション技術を用いて、一般に言われる「人の目レベル」の解像度に到達することを目標としていると語りました。


(講演の結論にあたる部分のスライドでは、Meta Quest 2の視野角1度あたりのピクセル数で測定される解像度=ppdが21ピクセルであることも明らかにされた。なお一般には、人間の目の解像度は60ppd前後だとされている)

(参考)UploadVR
Mogura VRはUploadVRのパートナーメディアです。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード