VRはどう使われているか?医療分野のVR活用事例紹介

自宅のソファでくつろぎながら「もしもここが美しい南国のビーチになったら……」と思わない日はありません。今話題のVR技術は、そんな妄想さえも叶えてくれます。

エンタメ分野での活用が目につくVRですが、医療分野でも大きな活躍が期待されています。今回は日進月歩の医療業界でのVR技術に光を当てていきます。

医療分野での活用

医療分野では、VRを使ったさまざまな取組が行われていますが、今回は4つの活用事例を紹介します。

・手術シミュレーション
・錯覚による痛み緩和
・注意の誘導による治療への不安緩和
・精神疾患の理解促進

VRで手術シミュレーション

医療、特に外科や産婦人科、小児科といった現場では患者の命を預かるゆえに失敗は許されません。しかし、手術は全てが本番であり、そのためから少なくない医師に負担がかかっています。医療現場でVRを使った解決策が考案されています。

「VR医療」の研究を行う国際医療福祉大学大学院 准教授の杉本真樹医師は、患者の3D-CT画像データから作成された立体的な「VR解剖図」をもとに、より直感的な手術を試行しています。

ロボットアームを使用したロボット手術では内視鏡映像による限られた情報の中で操作しなければならないため、必然的に長い時間がかかってしまいます。

しかし、「VR解剖図」であればより直感的かつ効率的な施術が行うことができ、リスクも患者の負担も減ることが期待されます。さらに「VR解剖図」を使った手術の予行演習が可能となり、手術のストレス緩和にもなるのです。

杉本医師は現在、HoloEyes株式会社を立ち上げ、CTスキャンされた3Dデータを活用し、VR/MRの医療への応用を推進しています。

杉本医師の著書はこちら
VR/AR 医療の衝撃(ボーンデジタル)>
https://www.amazon.co.jp/VR-AR-%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E8%A1%9D%E6%92%83-%E6%9D%89%E6%9C%AC%E7%9C%9F%E6%A8%B9/dp/4862463711/ref=sr_1_1?s=books&ie;=UTF8&qid;=1489744481&sr;=1-1&keywords;=%E6%9D%89%E6%9C%AC%E3%80%80VR

VRで「幻肢痛」緩和

事故や手術で腕や足を切断した人の中には、現実には無いはずの腕や足がまだあるように感じ、激しく痛む不思議な症状を発症する人がいます。幻の手や足ということで「幻肢痛」と呼びます。

メカニズムは詳しく解明されていませんが、例えば脳は腕を動かすという指令を出すと、腕が動くことで発生する感覚を期待して待ち受けます。ところが腕が無くなってしまうと動かした感覚がフィードバックされないため、感覚の葛藤が生じ増幅されて痛みとして感じると説明されることがあります。

治療法にはアメリカの神経科医であるラマチャンドラン博士が開発した「鏡箱」という方法が用いられていましたが、十分に痛みが緩和できないという問題がありました。

(鏡箱:健常な腕や手を鏡に映すことで、切断して無くなった手や腕がそこに実際あるように錯覚させ、視覚的な感覚を脳にフィードバックさせることで幻肢痛を和らげる治療法)

東京大学医学部属病院緩和ケア診療部の住谷昌彦准教授らの研究グループは、VRを用いることで従来の治療では十分に痛みが取れなかった「幻肢痛」の新しい治療法を開発しました。

研究グループが開発した治療法は、患者の「健全な方の手足(健肢)」が運動している様子を捉え、左右反転して映し出すというものです。左右が反転しているので患者は映し出された健肢を「ないはずの手足(幻肢)」と認識してしまいます。そして、健肢を動かすことにより、VR内で可視化された幻肢を自らの意志で動かす体験をすることができます。

この体験の反復によって失った手足を動かすイメージが形成され、感覚のギャップから発症すると言われる「幻肢痛」が和らぐのです。

<バーチャルリアリティを用いた幻肢痛の新しい治療>
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/research-news/effective-rehabilitation-of-phantom-limb-pain-with-virtual-reality.html

VRで注射の痛み緩和

子供の頃、毎度インフルエンザの予防注射に怯えていたのを思い出します。子供にとって針を体に刺し入れるほどの怖い体験はそうそうないでしょう。

サンタバーバラとロンポックのSansum Clinicの研究者によって、VRが予防接種の注射に対する痛みと不安を緩和してくれるという研究結果が発表されました。研究は2016年の9月から3ヶ月間行われました。被験者244人の子供にVRのヘッドセットを被せ、海の画像を見せたところ、48%の子供が被る前に比べ痛みが少なくなったという結果が出ました。

VR体験が注射の痛みや不安の緩和につながる理由として、VRの没入感が注意を逸らすからと考えられています。この研究によって、今後は注射への恐怖から予防接種を受けない子供が減ることが期待できるでしょう。

http://www.vrfitnessinsider.com/crush-fear-vr/

VRで「統合失調症」体験

「統合失調症」は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患であり、発症すると家庭や社会での生活に支障が出ることがあります。また客観的に自分を振り返って考えることが難しくなりやすい病気でもあります。

多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現します。今では新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、長期的な回復を期待できるようになりました

しかし、症状の特徴からもともとの性格との区別がつきにくく、家族や友人、会社など周りからの理解を得にくい病気でもあり、少なくない「統合失調症」患者が苦しんでいるのが現状です。

統合失調症の正しい理解を広めるため、ヤンセンファーマ株式会社はVR上で統合失調症の症状が疑似体験できるツールを開発しました。統合失調症の疾患教育ツール『バーチャル ハルシネーション』は病気の急性期に聞こえる幻聴を実際に体験することで、統合失調症の症状を体感的に教えてくれます。

実際の体験では
1)軽蔑、嘲笑、命令してくる幻聴、
2)行動を予言してくる幻聴、
3)生活音に重なって聞こえてくる幻聴、
4)過度におだててくる幻聴、
と4編を通して体験します。

視聴を終える前に、女性の声でスイッチを切るように指示があります。ところが実際の機材にはスイッチなど無く、どうすればいいかわからなくなります。そんな中「早くしろよ」「こんな簡単なことも出来ないの?」「後ろ行列が出来てるの気付いてないの?」「スイッチ、スイッチ、スイッチ!」と急かされるという、心がざわつく演出も用意されています。

<統合失調症の疾患教育ツール「バーチャル ハルシネーション」リニューアル公開>
http://www.janssen.com/japan/press-release/20160512-VH

 

(参考)
世界初「8Kロボット手術」 最先端技術で医療はどう変わるのか?
http://forbesjapan.com/articles/detail/13879/2/1/1 

この記事を書いた人

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