日本とフランスのVRをつなぐ世界最大のVRフェスティバル『Laval Virtual』とは

国際的なVR作品公募展『ReVolution』を2006年に立ち上げ、学生VRコンテスト『IVRC』の実行委員会等を務める白井暁彦氏による講演が5月20日、French Tech Tokyoの主催により新宿Orange Labsにて行われました。

フランスで18年開催されているVRのフェスティバル『Laval Virtual』

白井氏はフランスで開催されている『Laval Virtual』を紹介。『Laval Virtual』はVRをテーマとした世界最大のフェスティバルです。VRや拡張現実(AR)、リアルタイム3D、没入感体験、ヒューマンコンピュータインタラクション、インタラクティブデザインの分野において欧州市場へアプローチと革新的なアプリケーションを発見する機会を提供しています。

20年以上VRに携わっている白井氏は、2000年代、PlayStation2を代表とするマルチプラットフォームのゲームエンジンの開発に参加した後、東京工業大学の博士課程に復学し、触覚に注力したエンタテイメントシステムのリサーチをおこなっていました。

その後、NHK放送技術研究所、フランス国立工芸大学(Paris Tech A&M)、日本科学未来館科学コミュニケーターを経て、現在は神奈川工科大学情報学部情報メディア学科で教員としてクリエイター育成活動をおこなっています。

白井氏は、エンタテイメントシステムを、人間の娯楽に作用するようにデザインされたコンピュータシステムと定義しています。

「エンタテイメントシステムとは、今日のスマホアプリは電話と一部のツールを除けばほとんどがエンタテイメントであり、スマホはエンタテイメントシステムのためのプラットフォーム。またニコニコ動画のような動画共有サービスはエンタテイメント動画を見やすくするエンタテイメントシステムの好例」と、解説。

Laval Virtualエンタテイメントシステムとは「人間の娯楽に作用するようにデザインされたコンピュータシステム」と定義する白井氏

博士時代のVR研究は、子供向けの等身大触覚エンタテイメントシステムです。博士復学時代はゲーム開発者の経験を活かし、没入感の高い実験環境をつくり、触覚をオン/オフすることで人の振る舞いがどう変化するのか、どうしたら自然なかたちでエンタテイメント体験を計測することができるかについて、研究していました。

子供に体験させようとしたところ、実験室では泣き出す子供も少なくなかったことなどの実体験をもとに、より自然な遊び体験を提供するための設計手法についても、研究を進めています。詳細については氏の論文や、書籍「白井博士の未来のゲームデザイン~エンタテイメントシステムの科学~」をご参照とのこと。

氏は講演で、子供がVRをしてよいとされる年齢の問題や、斜視になったというネガティブな話題にもコメント。「医学やメディア学の専門家を入れて、VRというメディアが子供にどう影響を与えるか、継続的にデータをとるべきだ」「継続的なデータがない限りVRというメディアが子供に良いも悪いも言えない」としています。

専門家に加え、一般来場者も楽しい雰囲気で体験できるVRのフェスティバル『Laval Virtual』が、言語や文化が異なる世界でエンタテイメントをはかり、インタラクションの方法やデザインが最適なものなのかをテストするのに非常によい環境だと語りました。

Laval Virtual

Laval Virtual中世の雰囲気漂うフランスLaval市、Laval Virtual開催中は町中がVR一色に

Lavalは2000年ごろジャック・シラク大統領らの支援により、Virtual Realityによる研究開発都市の計画をスタートさせています。様々な政変、紆余曲折もありましたが、近年ではフランスのスタートアップ支援プロジェクトである「French Tech」のAR/VR推進都市に立候補しており、10年間で1,000人規模のVR関係の雇用を創出する計画を推進しています。

人口10万人ほどの都市にVRに関係する大学が3校、HAPTIONやEON RealityフランスなどVR関連企業が数多くLaval市近隣に集まってきています。

『Laval Virtual』はその中心にある18年続く毎年4月ごろ開催されるフェスティバルで、専門家向けのVR国際会議、見本市と週末の一般向けエキスポで構成されます。ヨーロッパを中心に毎年1.5~2万人近い人々が参加します。

学生VRコンテスト『IVRC』

日本では、日本VR学会IVRC実行委員会主催の国際学生VRコンテスト『IVRC』がおこなわれています。『Laval Virtual』から招いた審査員により“Laval Virtual Award”が贈られ、受賞作品は次年の『Laval Virtual』へ招待されます。

反対にフランスLaval Virtual側でも同様の学生コンテストを行っており、フランス代表として日本に行くことができるチャンスがあります。

Laval VirtualIVRC2015の様子 https://www.youtube.com/watch?v=uJomyZntNA4

IVRC2014では、筑波大の『CHILDHOOD』が受賞し、『Laval Virtual』で大きな評価を得ました。この『CHILDHOOD』は、自身の体を子供の体に戻し、日々の生活を新たな視点・身体を通して知覚することで、新たな体験の提供、身体の制約により誘発される創造的な感覚を喚起・帰還することを目指すというもの。

体験者は、子供の視覚と触力覚を再現し、ブース内の机の上に置いた果物や、コップを掴むことで、その掴みづらさや視界制限、環境の圧迫感を体験。子供の頃の感覚や使用感における実空間での身体と環境との相互作用を体感できます。

その体験を通して、公共空間におけるユニバーサルデザインの促進といったような子供が知覚する世界・身体性の理解や、創造的感覚の喚起を目指した作品となっています。

Laval Virtual

Laval Virtual

Laval Virtual筑波大学・CHILDHOODホームページより

IVRC2015からはジャックと豆の木をテーマにした「ニョキニョキ豆の木/Jack and the Beanstalk」(慶應義塾大学)がLaval Virtual賞を獲得し、こちらもLaval Virtual 2016にて大人気でした。

Laval Virtual

Laval Virtualフランスでも大人気だった「ニョキニョキ豆の木/Jack and the Beanstalk」

国際公募デモセッション『ReVolution』

白井氏が2006年に創設し、11年にわたり継続されている『Laval Virtual』における国際公募デモセッションが『ReVolution』です。『IVRC』からの優秀作品も公募推薦枠として採択され、こちらのセッションで展示されています。

日本の研究者や企業におけるVR作品はフランスでの評価が高く、1/3~半数近くが日本より出展される展示になることもあるそうです。

『Laval Virtual』では、米国で開催されるコンテスト『ACM SIGGRAPH』に選出される特別推薦もあり、一般市民・専門家に向けてイノベーションをテストできる最高の場となっています。

言葉の問題はありますが、フランス語については物心ついた時から『Laval Virtual』を見てきている地元の観光学科のボランティアスタッフがサポートします。

また、逆に日本語でしか通用しないVR作品ではなく、言語や文化を超えて、一般市民にも体感で分かりやすく新しい作品であるかどうかを評価する場所としては最適といえます。

Laval Virtual日本の学生もフランス語を覚えて地元の子供たちに説明しています

Laval Virtualフランス代表チームと日本代表の交流、毎日のようにワインとチーズとハムを味わう機会があります

また、併せて開催される国際会議『ACM VRIC (Virtual Reality International Conference)』は、世界中からVRの研究が集まる国際会議です。

すべての論文がACMデジタルライブラリに収録されるため授賞式・見本市・レセプション、美しい街の風景やおいしい食べ物など(Lavalはカマンベールなどの乳製品の主要企業が集まる土地でもあります)見どころの多いイベントとなっています。

Laval Virtual

Laval Virtual派手な「授賞式」その一年で最高のVRプロジェクトが誉を受けます

第24回 国際学生対抗VRコンテスト「IVRC2016」は、現在一般学生部門とユース部門、国際ビデオ部門で作品を募集中です。

ユース部門は大学2年次、高専5年次、専門学校2年次、高校生以下相当の学生を対象とする部門で、一般学生部門は学生を中心としたチームであれば社会人等の参加も可能とのこと。書類応募締切は6月17日(金)17:00です。

プロトタイプ審査は、日本VR学会大会(筑波大学・9月14~16日)にて開催され、日本中のVR研究者の前で実機を展示する機会になります。さらに、優秀10作品程度がデジタルコンテンツエキスポ(日本科学未来館・10月27~30日)内で開催される決勝大会に進出できます。

10月のDCEXPOはOcuFesなども開催されるVR業界でも注目のイベントシーズンなので、優秀作品を体験したり、会場投票に参加したり、VRに携わる学生と出会うだけでも新しいアイディアが手に入るはずです。

昨年度は、失禁体験「ユリアラビリンス」が人気でした。業務用途のVRでは出づらいメカトロニクスやサイエンスに迫るチャレンジが沢山あります。

Laval VirtualIVRC2016スケジュール

フランスLaval Virtual『ReVolution』に直接挑戦する場合は、年末が締め切り予定とのこと。世界に向けたVR作品や、アイディアがある方は『IVRC』と『Laval Virtual』に挑戦してみてはいかがでしょうか?

・IVRC2016公式サイト
http://ivrc.net/
・IVRC過去作品集
http://ivrc.net/archive/
・IVRC公式YouTube Channel
https://www.youtube.com/user/IVRCofficial
・Laval Virtual
http://www.laval-virtual.org/en/
白井氏公開のスライド
http://www.slideshare.net/aquihiko/laval-virtual-world-biggest-vr-festival
白井氏のブログ「aki’s right brain」
http://aki.shirai.as/

この記事を書いた人

  • writer

    新しいものが世の中に浸透していくことを楽しむ元エステティシャン。
    現在はとある企業で「中の人」をやりながらMoguraVRにて記事執筆をしています。

    Twitter:@kanamai_ooo