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イベント情報 2015.07.24

【体験レポ】VRの未来について語り、Project Morpheusでその未来を垣間見ることができた黒川塾

7月17日(金)、黒川文雄氏が主催するイベント「黒川塾」の第26回目が、デジタルハリウッド大学にて開催されました。多才なゲストのトークに加え、VRコンテンツが会場に展示され、PS4向けHMD「Project Morpheus」の体験を行う事もできました。

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「黒川塾」は、ゲームや音楽、ネットワークなどのあらゆるエンターテイメントビジネスに精通した黒川文雄氏が主宰しているイベントです。参加者に、ビジネスやライフスタイルの「新たな気づき」を与え、明日からの活力になる勉強会となる事を目指しています。今回が第26回目の開催となりますが、SCEワールドワイド。スタジオ・プレジデントでProject Morpheusの開発メンバー吉田修平氏、話題のVR乗馬レース「Hashilus」をプロデュースした藤山晃太郎氏。、VRコンテンツ制作には欠かせないゲームエンジンUnreal Engineを提供するエピックゲームスの下田純也氏、VRのニュースを積極的に発信している当サイトMogura VRから久保田瞬が登壇しました。

image01左から、藤山氏、吉田氏、黒川氏、下田氏、久保田

以下は、特に盛り上がった場面を抜き出しています。

■2015年、日本のVRコンテンツ開発は欧米に差をつけられている?

黒川
2015年になって、かなり欧米に差を開けられてしまったのではないか。つまり、海外のVRクリエイターに対しては、ベンチャーキャピタルからお金が一気に入って、それと同時に優秀な技術者やクリエイターが集まり、斬新な物をつくっている。ところが日本はどうかというと、なかなかそこを越えられないのではないか、2014年の時点から大きく羽ばたいていけてないのではないかというお話がE3の際のインタビューでありました。吉田さんのお考えと、インディーに対するサポートについて改めて伺いたいと思います。
吉田
ベンチャーキャピタリストは、非常に計算してどこにお金をいれるか決める人達です。彼ら曰く、モバイルゲームが出てきた時も、一番最初から何作も経験を積んでいるチームがヒットを出しています。VRもそういう時期に来ているのでお金を出す、という非常にロジカルな考えで、ベンチャーにお金が投資されています。インディーゲームそのものの市場は欧米が引っ張っていますが、この環境に関してはVRに関しても同じだと思います。
黒川
新しいものを応援する体制が、日本ではすごく希薄ですよね。
吉田
やっぱり高度成長でどんどん伸びていった時の大手企業とか、終身雇用といったカルチャーが残ってしまっていますね。海外では、新たな市場が生まれてきて、大きな企業にいた人が経験を積んで独立する起業家に対してのサポートが、精神的な面でも、ダメだったらやり直しが効くとか、それが自然ですね。日本だと「起業する」なんて言うと親が「やめろ!」みたいな、「せっかくいい会社いるんだから!」などと言われますよね。
黒川
そうですね。そのあたり久保田さんは様々な事例をご覧になっていると思いますが、どうでしょうか?
久保田
日本人が経営しているVR関連のベンチャーに関してはKickstarterを実施した「FOVE」や、日本と韓国のベンチャーキャピタルから投資を受けた「dverse」がありますが、いずれも法人登録は米国で行われています。
黒川
そうなんですか。米国なんですか?
久保田
やはり、資金繰りであったりの話をする時に、米国にあった方がやりやすいという話は色々なところで聞きますね。
黒川
Epicgamesさんはインディーへのサポートなどを行っていらっしゃいますか?
下田
UNREAL DEV GRANTS」という取組で資金援助を行っています。面白いゲームをUE4で作ってエントリーしていただいた作品を審査させていただき、選ばれた作品に5,000ドル(執筆時のレートで約62万円)から50,000ドル(約620万円)の開発資金を援助するという取組です。日本でもしkickstarterなどが難しいようであれば、そういうものに応募して頂くというのも一つの手です。

■VRの収益化、多人数体験に対するヒント

黒川
つくる環境も、日本はなかなか飛びぬけてこないという印象をお受けになりますか?
藤山
そうですね。これらの事を国全体として見て、投資を受けられる状況には無いなという事を感じます。そこで考えを止めるのではなく、VRの収益化というもの色んなアプローチで行われています。チーム「ハシラス」は出展を頼まれる事があるのですが、そこで収益化にあたって重要な最近気づいた事を皆さんとシェアしたいと思います。まず、金額と効果という話です。自身のコンテンツがどういうコンテンツなのかを測る尺度があります。一つは回転率ですね。コンテンツの体験時間がそもそも何分何秒なのかということです。そして、その時間内でちゃんと満足のいく体験になっているのかということ、そして転換の時間を正確に分かっている必要があると思います。「Urban Coaster」は体験そのものが1分20秒、転換が1分40秒となっていて、およそ三分間で一回転となっています。
黒川
転換というのは人が入れ替わるという事ですね?
藤山
そうです。そうすると、1時間に20人しか体験できません。画像であれば数百人もの人が同時にシェアできるのですが、VRというのは個人体験なので、このコンテンツでどれくらい体験ができるかというのは、その場で弾いたらすぐに分かります。8時間で160人になります。
チームハシラスへの依頼の多くは、一度に一人で体験するというのはあまりなくて、複数人が同時に体験できるような体制が求められています。
黒川
それは凄いヒントになるんじゃないですかね。どちらかというとクリエイティブ優先で皆さんが作っている中で、体験時間や転換時間を全て考えているとは思いませんでした。
藤山
(VRは)体験しないと価値がないものなので。ご自身の体験時間が3分だったら、同じ魅力が1分で出せるのではないかと考えてみてください。そこをちゃんと煮詰めて、一番おいしいところをCMの15秒みたく押し込んでいく意識を持てばすぐにコンテンツが洗練されます。今でも展示を繰り返し、毎日が発見ですよ。
吉田
オペレーションを考えるという意味では、去年行われた進撃の巨人展のVRも一度に20人同時体験できましたが、オペレーターは1人で回されていて、うまくつくられていると感じました。
黒川
多人数同時体験に関しては藤山さんいかがですか?
藤山
多人数同時体験でいうと、ロートの初音ミクライブなどのVR内コミュニケーションに関しては面白いと思います。ただ同一コンテンツを並べて「ヨーイドン!」とするのではなく、VR同一空間内で、他のアバターの姿が見られるというのはとても魅力的です。多人数を掃くためにやるのではなく、多人数同時体験の魅力を出した方が売りやすいと思います。

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今回のトークでは、日本や海外の現状を比べるなどして、コンテンツの洗練方法や、どのように資金を調達するかなどが話されました。特に、VRコンテンツ制作に挑んでいる人に対して、明日からの原動力となる「気づき」の多い内容となりました。

■体験レポート

今回の黒川塾では、PS4向けのVRヘッドマウントディスプレイProject Morpheusで、「The London Heist」を体験することができました。体験者は、「Morpheus」を被り、モーションコントローラの「PS Move」を両手に持ってプレイします。筆者は眼鏡をかけていましたが、スムーズに焦点を合わせる事が出来ました。

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image02冒頭は強面の男とふたりきりで、サマーレッスンの男版と呼ばれる所以となっています

プレイヤーが過去に犯した強盗事件(Heist)の回想シーンにて、鍵のかかった戸棚から宝石を奪う事が目的となっているのですが、警備員が駆けつけて銃撃戦になります。

image06窓や上の階からぞろぞろと警備員がやってきて銃を撃ってきます。

銃の弾が切れるとマガジンを自分で装填しなければいけないので、机の下の屈み、身を隠しながらマガジンを拾って、装填するといった動きは全てPS Moveコントローラーを握った手を動かして行います。完全にVR空間に没入しながら反撃します。普通のゲームでは、マガジンをわざわざ入れ替えるのはとても面倒ですが、VRゲームではこのようなリアルさにこそ面白味が潜んでいます。

image03この様子は、VRの中では、身をかがめて敵の弾を避けながら、右手にもったマガジンを左手の銃の弾倉に装填しているところ

トラッキングに一切の遅延もなく、頭を振る動作をしてもカクつきもないことで非常に快適な体験でした。また、グラフィックのクオリティが非常に高いので、VRの秘める面白さを存分に体験できるゲームとなっていました。

今回、様々な立場からのVRの先駆者達によるトークは、VRブームの到来を予感させるものでした。筆者も「Project Morpheus」を実際に体験した事で、より一層VRゲームの明るい未来を垣間見ました。私達は現在、外出先ではスマホ、会社でもパソコンの画面と、ディスプレイという枠の中で視覚が制限されてしまっています。VRHMDにより、視界そのものを体験できる時代がそう遠くない事を感じさせてくれる会となりました。


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