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VTuber 2018.01.20

トップバーチャルYouTuber「キズナアイ」 ポンコツAI(?)が切り開く近未来

バーチャルYouTuber、2017年12月から大きな話題となっています。

生放送をすればTwitterでトレンド入り。1,000前後だったチャンネル登録者数が一気に10,000超え。視聴者も、製作者側も「何が起こったの…」と驚いている状態。

SNSやpixivではバーチャルYouTuberのファンアートが様々にアップされ、男子向けカテゴリの人気一位になるほど。そのほか、手作り感のある動画が魅力の「バーチャルのじゃロリ狐娘youTuberおじさん」や、強烈な個性を持つ「輝夜月」の登場など、色々な要素が重なってブームが起きています。

「バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー)」という言葉を産んだのはキズナアイ。先駆者となったキズナアイは、文化・技術・ビジネスでの可能性を生みました。

世界で人気のバーチャルYouTuberキズナアイ

【自己紹介】はじめまして!キズナアイですლ(´ڡ`ლ)

3Dモデルのキャラクターを使い、声優が演じ、YouTuberとしてネタ動画を作るのが、バーチャルYouTuber。「バーチャルネットアイドル」や「なりきりbot」と似ています。

「中の人はいない」という暗黙の了解で、視聴者はキャラの一挙一動を見守る。
とはいえ、フリートークや実況動画で、徐々に演者の素がチラチラと出てくる。

回を重ねるごとに、イレギュラー含めて設定と演者の本音が混ざり合って、キャラクター像がさらに成長していく。バーチャルYouTuberにしかない醍醐味です。

さて、キズナアイはというと、声優やスタッフの匂いを極力伏せ、キャラクターをつくるように徹底されています。中の人の素は比較的出ない方です。

「AI」という設定で、「人間のみんな、たくさん知りたい、仲良くなりたい」というコンセプトで動画が撮られています。初音ミクやSiriのことを「先輩」と呼んでいるのも、りんなと友達になろうとしているのも興味深い。男でも女でもないという発言もユニーク。端々でSF的なトークを聞くことができます。

一方で言動はかなりトンチンカン。
ほんわかしたしゃべり、ゲームが下手ですぐ発狂する、何かと失敗が多くてそれをごまかす、すぐ調子に乗る、などなど。

「インテリジェントなスーパーAI」を名乗るポンコツ癒し系アイドル志望AIという絶妙なキャラクター性は、海外でも受け入れられました。今では動画があがるとすぐに字幕が何種類(最大で18ヶ国語)もつけられ、海外各国からのコメントがずらっと並びます。日本語コメントが埋もれることも多いです。

現在ではチャンネル登録者135万(1月13日現在)、ゲーム実況のA.I.Gamesが50万近く。バーチャルYouTuberではダントツの人気を誇っています。

キズナアイの「ポンコツ」伝説

キズナアイの小動物的ポンコツさがわかりやすいのは、ゲーム実況動画。
彼女、正直ゲームがうまくない。「なんで!」「もうヤダ!」「詰んだ!」「無理ー!」「天才か?」こんな絶叫を繰り返しながら操作ミスを連発します。

特にバイオハザード動画、14分50秒辺りの「ファッキュー」はキズナアイの人気セリフの一つ。もっともLINEスタンプ化の際は、さすがに審査が通らなかったそうですが。

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全然うまくいかなくてムキになっている様子を見せるキズナアイ。
「失敗してどんなリアクションするのかが楽しい」という視聴者のツボをおさえて作られています。成功した後調子こいて死ぬ、というお約束まで含めて完璧。

ただヘタなだけじゃなく、回を重ねるごとにちょっとずつうまくなり、なんとか最後にクリアできている。散々文句を言いながらも、キャラクターがゲームに真摯に向き合っている。この辺りを演出できるのは、バーチャルYouTuberという疑似実況的な動画ならでは。

アイちゃんといっしょ「アブラハムの子」

キズナアイは幼児っぽさも、他のバーチャルYouTuberに比べて格段に高い。
たまに掲載される、極端にゆるい動画の数々。地上波では尺が長すぎて流せない。
YouTuberという「個人発信(という体)」「毎日更新」だからできるものです。

【悲報】けやき坂46のオーディション落ちてたっぽい【PV撮影】

【脳内】欅坂46で勝手に妄想してみた!!【ドラフト会議】


ここに「重度のドルオタで、自分もけやき坂46に入りたい」という設定も加わります。アイドル妄想の回は何度もあります。オチも何もなく、ひたすらものすごい勢いでキズナアイが欅坂46についてまくし立てるという、これまたYouTuber文化ならではの表現。視聴者ガン無視で語る様子が微笑ましい。

もっとも、知名度があがっていけば、キズナアイがお茶の間にも出られるバーチャルアイドルになる可能性や、欅坂46の特別枠に入るのだって、あり得るのではないでしょうか。

キズナアイの啓蒙

キズナアイも基本的には雑談、小ネタ、ゲーム実況など、一般的なYouTuberと活動内容は同じ。「キズナアイ裁判」「スナック愛」という悩み相談室コーナーをやっていたこともあります。

人間を知りたいA.I.が人間の悩みを聞くってなんなんだ。動画としての出来が非常によい、隠れ人気コーナーです。中でも「スナック愛~関西店~二夜目」の、リアルなスナックの会話っぽさはすごい。アイちゃんどこからその情報入手したの。

スナック愛~関西店~ ニ夜目

一方で、時々ネットリテラシー解説動画をあげることもあります。
こちらは非常に真面目な、教育的な内容です。アーカイブとしてネットに残るので、後に入ってくるであろう幼い視聴者の目にも入りやすいはず。

【緊急事態】AI が詐欺にあった!!

【LINE】AIが若者に物申す!【ウソ告】

もっと人気が出て、多くの子どもたちが自主的にキズナアイの動画を見るようになるのは、まだこれからでしょう。今はその種を巻いている段階。「初音ミク」などが学校の教材として使われることもあるこの時代、バーチャルYouTuberが「先生」になる日もあるかもしれません。

ビジネスモデルとしてのキズナアイ

最初にバーチャルYouTuberになったキズナアイ、気になるのはビジネスとしてどうなのか、というところ。

キズナアイは製作委員会「Project A.I.」、イラスト・森倉円、モデリング・Tda、モデラー・トミタケとスタッフを発表していますが、声優や技術提供などは一切明かしていません。母体となる会社があるのかないのかも、正式発表していません。

ゲーム実況では、様々な会社による提供動画を「お仕事」として発表しています。

【美尻】最高峰のお尻、大公開!?【ふともも】#161

あのライバルとガチ対決した結果…!?#165

「運営さんいいんですか、(ガチャで当たりを)出してくださいね、じゃないともうこれで終わっちゃいますからね!(出ない)」
「(ここは私のチャンネルだから)勝利と宣伝は自らの手で勝ち取るんだ!」

メディアで特定のモノをPRする「広告動画」のベクトルですが、PRしつつもキズナアイのキャラを活かしてネタに転がすあたり、見せ方が巧み。

またキズナアイ本人も、スマホゲーム『ミトラスフィア -MITRASPHERE-』『エイリアンのたまご』などで、コラボキャラクターとして登場。CMに出たい、という彼女の最初期の目標は、アニメ『ゲーマーズ!』のCM出演で達成しました。さらにはグッドスマイルカンパニーに「ねんどろいど」化してほしいと、キズナアイが交渉する動画もあがっています。

メインになる広告収入の他に、ユーザーが月490円を払ってスポンサーになるスタイルも注目したいところ。特典として特別動画、NG集、ボツ動画、制作秘話などなどが見られるとなれば、ファンとしては嬉しい内容です。

キズナアイのプロジェクトは、世界のリアルYouTuberが成功してきたビジネススタイルを、バーチャルキャラクターならではの切り口でも広げていけることを示す事例となっています。

先輩としてのキズナアイ

2017年中盤からどんどん増えてきたバーチャルYouTuber。その中でキズナアイは先輩という属性を手に入れました。

動画本編で他のバーチャルYouTuberの話をすることはあまりありませんが、Twitterでの仲良しな感じは見ていてとてもニヤニヤ。ミライアカリやシロなどと会話を交わすため、ファンから見ると「キズナアイ先輩を中心にした仲良し集団」という空気が作られています。
決定的だったのが、2018年1月5日にアップされたこの動画。

AIが一言物申す!

はっきりと後輩バーチャルYouTuber「輝夜月」を指名し、ラブコールを送りました。モノマネをしながら「月ちゃんコラボいつする?」の文字が。頻繁にリプライを送り合う、仲良しの2人。輝夜月は以前から、キズナアイのことを「親分」と呼んで慕っています。

この2人の先輩後輩感は、ファンの心に刺さる。ネット上には、バーチャルYouTuber同士がワイワイしているファンアートが多くあがっています。Twitterのやり取り自体も、キャラクターコンテンツになっているからです。

キズナアイの開いた道筋をさらに広げていったのが、後続のバーチャルYouTuberたち。
次回は彼女に続く開拓者の1人、ミライアカリを紹介します。


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