【インタビュー】「VRはめちゃくちゃ面白い」アーティスト伊東歌詞太郎がVRを使って感じたこと


ニコニコ動画に投稿された「歌ってみた」動画をきっかけとし、若者を中心に人気を集めるアーティスト伊東歌詞太郎氏。

そんな伊東歌詞太郎氏は、自身の楽曲『銀河鉄道の夜』の世界観をVRで再現したMVR、12月25日に行われたワンマンライブ『冬空のむこう』のステージ上からの風景を映したライブVRと、次々にVR作品をリリースしました。

Twitter上で伊東歌詞太郎氏の熱い思いを目にした筆者。ファンとしていてもたってもいられず、共同でVRの制作に携わった根本竜太氏を交えてインタビューさせていただき、今回の企画にかけた思いや今後の展望についてお聞きしました。


伊東歌詞太郎氏のツイート

伊東歌詞太郎氏プロフィール

インターネット音楽のカバーで2012年に活動を開始。
その力強い歌声はネットの電波を伝って受け手の心に響き、現在の動画総再生数は4000万を超えている。
2014年にソロとしてメジャーデビュー。過去2作共にオリコン週間アルバムランキングTOP10入りする。
ワンマンライブは常に全会場がソールドアウト。
メディアでの顔出しはしておらず、狐のお面がトレードマーク。
kashitaro.com

根本竜太氏プロフィール

広告代理店出身。
広告代理店時代には映画、音楽番組、音楽フェスなどとデジタル技術を連動させる企画を実施。
2013年、ゲートウエイ株式会社を設立。
2016年7月、VRコンテンツの販売・流通取次を目的としたVR GATEWAYのサービスを開始。
「dTVVR」、「FODVR」への技術提供など、音楽・エンタメ領域を中心にVR事業を展開している。

VRでお客さんに新たな体験を

ーー今回、なぜこの企画に踏み切ったのでしょうか。

伊東歌詞
太郎氏
(以下敬称略):

最初は、根本さんからVRのお話を頂きました。そのときはVRというものの実態が掴めていなくて、「360度見渡せる、新しい感覚で何かが見られるんじゃないか」くらいの感覚でいたんですよ。それで、根本さんからもっと詳しい話を聞いたときに、「あ、ぴったりな曲があるじゃないか」と思いました。

そのとき作っていた『銀河鉄道の夜』という曲で、「宇宙空間を作って、その空間を自由に見る」ことができたら曲がもっと素晴らしいものになるんじゃないかというビジョンが見えたんです。それから僕のイメージを根本さんに伝えていき、完成することができました。


『銀河鉄道の夜』(2016/10/31)

歌詞太郎:

VRは、音楽だけではなくいろいろなものの可能性を拡張するものだと思いますが、僕はミュージシャンであって、音楽というものを生業にしているから、VRを使って、音楽というものをお客さんにより新い感覚で、新鮮なものとして再提示できたんじゃないかという喜びがありました。

そして、第二弾の『冬空のむこう』は何か別のアプローチでできないかと考えました。僕がライブ中のMCでよく言うんですけど、お客さんがライブ中に笑顔でいてくれたり、拍手をしてくれたりするのって、ミュージシャンとして一番嬉しいことなんです。その景色ってステージに立ってないと見れないんですけど、「VRがあればできるじゃん!」と思いつきまして。

演者側からお客さんを撮って、自分たちが音楽を演奏すれば、演者側がどんな景色を見てるかっていうのを提供できるなって思ってですね、また根本さんに協力していただいて、ワンマンライブで撮影をしたんです。

ーー制作時にどんなところで苦労したのでしょうか。

歌詞太郎:

これは、僕よりも根本さんが苦労したんじゃないですかね(笑)

ーーなるほど(笑)では根本さん、お願いします。

根本竜太氏
(以下敬称略):

今回、デジタルハリウッド大学院の三淵啓自教授に制作をお願いしたんです。僕が制作したわけではないので、苦労話はパッと出ないですね(笑)

ただ、制作に携わってみて感じたこととして、今って、音楽は流しながら聴く文化になっていると思うんですね。でも、VRを使って聴くと、いろいろな感覚を使って聴くことになりますよね。それってすごく新しい経験で、音楽との新しい関わり方になるんじゃないかな、と思いました。

今回制作に携わるに当たって、歌詞太郎さんの音楽を片っ端から聴きました。今後音楽とVRをつなげていくには、どれだけアーティストさんの思いをVRに落とし込めるかが重要だと思っています。

「あなたがいないとライブは成立しないんだよ」が伝わるVR

ーー今回制作した2つの作品の中で、歌詞太郎さんが特に気に入っている点はどこでしょうか。

歌詞太郎:

どちらも気に入ってるんですが、『冬空のむこう』の方からいくと、一番楽しんでもらいたい点としては、僕がいつも見ている客席のみなさんが、どれだけアーティストのサポーターであるかということですね。「あなたがいないとライブは成立しないんだよ」っていうのを感じてもらえるんじゃないかなって思います。

あとは、二回目の視聴で、横を見るとバンドメンバーがサンタの格好してるとか、正面以外のところも楽しめるのがいいところじゃないかなって思います。


『冬空のむこう』で右側を見たときの光景

歌詞太郎:

第一弾の『銀河鉄道の夜』に関しては、本当に僕のイメージ通りの作品ができたと思っています。MVって、音楽の可能性を広げるものだと思っているんです。曲と歌詞だけだと、どうしても耳と脳しか刺激することができない。でも、MVがあればそこまでお客さんに提示することができると思うんです。そしてVRは、その可能性をさらに広げることができると感じました。

『銀河鉄道の夜』でいうと、「宇宙」とか「宮沢賢治」とか、僕の大好きなテーマをふんだんに詰め込んだんですけど、それをよりわかりやすく、空間すらも感じてもらえるんじゃないかと。五感すべてで楽しめるMVになったな、と感じているので……単純におすすめですね(笑)

ーー実際に世に出してみて、周囲からの反響はどうでしたか?

歌詞太郎:

おかげさまで大好評でした。ミュージシャンの方にも見てもらう機会があったんですけど、みんな僕と同じような反応をするんですね。僕は最初家で一人で見てたんですけど、「えぇ!?」って、驚きの声を出してしまったんです。
みんなこういう世界に入り込める経験を知らないんですよ。だからこそ、知った時にすごく驚くし、知ったときに「知ってほしい」っていう気持ちにすごくなるんです。Twitterで感想を検索したりもしたんですけど、「これは見なきゃわからない」という意見が多くありました。

今後の伊東歌詞太郎×VR

ーー今回のライブVRは映像形式でしたが、今後VRを使ったライブの生中継などは考えていますか?

歌詞太郎:

むしろ、今後はそういった流れになってくるんじゃないかと考えています。僕が初めてVRを体験した時は、機器の値段もあり、VRが普及するかどうかは五分五分かなって思ってたんです。でも、根本さんから企画のお話をいただいたとき、初めて段ボール製のVRゴーグルの存在を知ったんです。これは驚異的な価格ですし、実際にVRを体験したときにとても驚けたから、VRは間違いなく普及すると思います。


段ボール製オリジナルVRゴーグル

ーー今後もMVRなどの配信はありますか?

歌詞太郎:

確実にやっていきたいですね。って勝手に言ってるんですけど(笑)

根本:

やりましょう(笑)

歌詞太郎:

お願いします(笑)絶対やっていきたいですね。

ーー今後VRを使って実現したいコンテンツなどはありますか?

歌詞太郎:

諸刃の剣だとは思うんですけど、ライブをパッケージ化できるんじゃないかと思っています。そのニーズは高まってるんじゃないかと。

なぜなら、音源というのはもう無料で聴けるし、歌や演奏の良し悪しはある程度オーディオの技術でごまかしがきいてしまうんです。芸術は実力に価値があると思うんですけど、そこに価値を見出せなくなってきてしまっている。

そこで、お客さんはライブという生の「経験」に価値を見出してきている。VRがもっともっと発達して行った時には、その経験というものさえパッケージできるんじゃないかなと思うんですね。ということは、僕もそれをやっていかなければならないと思います。

ライブ会場を自由に歩き回って追体験できるとか。どの席で聴くとどういう音が聴こえるかとか、それこそ会場の柱すら楽しみになると思うんですよ。そういった新しい発見とか経験とかをパッケージできたらめちゃくちゃ面白いと思っています。

そうして経験がパッケージできるようになったとき、ミュージシャンはその経験に負けないライブをする人しか残らないと思うんですね。僕はそういう実力至上主義の世の中は大歓迎なんです。

ーー他に何かやってみたいことはありますか?

歌詞太郎:

うーん、そうですね……。逆に、今僕が言ったことって、何年後かに実現できるんですかね?

根本:

できるとは思います。でも、やっぱり実際のライブ会場での体験が一番だと思います。ライブ会場の雰囲気というか、ああいったものはやっぱり実際に会場にいかないと味わえないですよね。でも、VRで見るライブっていうのは、また別の楽しみ方としてとても良くて、作っていきたいと思いますね。

歌詞太郎:

全く新しい音楽の楽しみ方になるんですよね。
あとは、拡張現実になるんですかね。例えば、初音ミクとかをホログラムで出して、ライブをするっていう。非実在の人間が、あたかもそこにいるかのような状況を作るのって、すごく面白いことだと思うんです。それで、その非実在の人間が、実在の人間と、ペッパー君よりもっとリアルにやりとりできるようなシステムがあれば、すごく面白いと思います。

AIも発達して、VRやARと融合したらめちゃくちゃ面白いものができるんじゃないかな、と思います。非実在の人間が1つのコンテンツになってしまうというか。映像はともかく、中身の技術はまだそこまでには至ってないと思うので、中身だけはマンパワーで補うとかできたらいいんじゃないかなって思いますね。

根本:

今年やりましょう!

歌詞太郎:

今年ですか!?最先端を行きますね(笑)

根本:

日本でも似たような事例がすでにあるんですよね。X JAPANのhideさんがホログラムで蘇ったライブ(※)。

(※)「DMM VR THEATER」にて行われた、ロックバンドX JAPANのギタリストであり、若くして亡くなったhideをホログラム技術で復活させたライブ。

思いのこもった作品を

根本:

歌詞太郎さんがライブのときに「優しい歌を歌いたい」って言ってたんですけど、それは今後すごく気をつけなければいけないところだな、と思っています。

VRだけではあくまでデジタルな技術なので、アーティストの方々がどんな思いで曲を歌っているのかという部分も大事だと思うんですね。そこは肝に命じてやっていかないと、VRと音楽はいつまでも平行線を辿ってしまう気がしています。「360度カメラ立てておけばいいじゃん!」とか、それだと、VRとファンとの溝が深くなってしまうと思います。アーティストさんに対するリスペクトが一番です。

歌詞太郎:

いろいろなコンテンツって、クリエイターの純粋な思いから始まってると思うんです。でも、そこから先、注目が集まっていくと、クリエイトを「楽しい」と思って目的とするのではなく、それを手段として使って儲けようとする人たちがいっぱい出てくるんですよね。でも、お客さんは絶対それを感じるんです。それはあくまで手段でしかないから。

手を抜いたものっていうのは、ファンの人はファンだから、「いいですね」って言って聴いてくれると思うんですよ。でも、それって何回も騙せるものじゃないから、繰り返しているとどんどんお客さんに見限られていく。

VRを使ったものも、まだ出来立てのコンテンツで、クリエイターの純粋な熱い思いが集まってできているものだと思うんです。ここから先、根本さんの言う通り「どういう人がどんな思いで広めていくか」、「それをお客さんが見抜いていけるか」というところに普及の可否がかかっていると思いますね。

ーー最後に、読者の方に向けてメッセージなどを

歌詞太郎:

まあとにかく、ミュージシャンとして、自分の作品をこれだけ魅力的に見せてもらえるメディアってなかなかないなって思っていて、まずはVRというものに対する感謝があり、こんなに面白いものがあるっていう興味があります。

そういう思いで今後も関わっていって、1+1が5とか10とか100とか、とにかくより素敵なものにしていきたいです。そのために大事なのは、結局「気持ち」だと思うんです。だから、これからもその「気持ち」というものを大切にして作品を作っていこうと思うので、もしよければ、僕の作品に触れてみてもらえれば嬉しいな、って思います。一緒にVRというものを広げていけたらな、と思いますので、よろしくお願いします!

ーーありがとうございました!歌詞太郎さんの今後の活躍に期待です!

公式HP:http://kashitaro.com/news.html#n0

また、今回リリースされたVR作品は、act familyから購入することができます。

この記事を書いた人

  • writer_N/R

    高校2年生です。ニコニコ超会議でOculus Riftに出会い、その後友人にGear VRを布教されてVRの世界に入りました。VRの楽しさと可能性を伝えられればと思い、ライターをやらせてもらっています。

    Twitter:@8088nrN

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