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活用事例 2017.12.13

世界AR/VR市場予測(2021年) IDCが発表

リサーチ会社のIDC Japan株式会社は、世界のAR/VRのハードウェア、ソフトウェア、および関連サービスの市場予測を発表しました。

発表によると、2021年の世界AR/VR関連支出は1,593億ドル(約18兆円)と予測、2016-2021年の年平均成長率は98.8%と見込まれ、地域別では米国と日本を除くアジア太平洋地域での成長期待が高いとのことです。また、世界と比較すると日本の成長見込みは低水準になるとされ、主に製造分野での成長は期待されるものの、教育分野での成長が課題となっています。

VRは今後18か月ほど高成長、ARHMDはビジネス向けに販売


世界市場AR/VR関連市場 主要ユースケース別構成比(2017年)

IDCの調査によると、2017年におけるAR/VRのハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスを合計した支出額は91.2億ドル(約1兆円)とのこと。2018年には前年比95%増の178億ドル(約2兆円)に、2021年には1,593億ドル(約18兆円)に達する見通しで、2016年から2021年にかけての年間平均成長率は98.8%と見込まれます。

IDCのデバイス アンドAR/VRのプログラムバイスプレジデントであるトム・マイネリ氏は、「VRは今後12~18か月、コンシューマー市場とビジネス市場双方のユースケースが牽引役となり、高いレベルの成長が続くとみられる。現在、プロダクトデザインから小売業における従業員訓練まで、多くの潜在的な応用可能性がこの技術には見込まれることから、企業はこの技術の利用に食指を動かし始めている」と述べています。

続けて、「その一方でAR市場はスマートフォンやタブレットによるモバイルARが消費者からの注目を集めており、これはより手軽なレベルでのARを実現するだろう。そして、ARヘッドマウントディスプレイはまずはビジネスユーザー向けに販売されることになる」とコメントしています。

2018年、コンシューマー向け市場は世界合計で68億ドル(約7,700億円)になるとみられます。2021年までの期間中、ゲームはコンシューマー向け市場では支配的なユースケースとなり、コンシューマー市場全体でのAR/VR支出の2016年~2021年の年間平均成長率は45.2%、2021年には総支出が200億ドル(約2.2兆円)を超えると推定されます。

ビジネス利用では流通・サービス分野の支出が最も多くなる見込み

ビジネス利用でのユースケースは分野や産業ごとに異なります。分野別では流通・サービス分野の支出が最も多く、次いで製造・資源エネルギー分野の支出が多いと見込まれ、金額面ではこの2分野が2021年までAR/VRのビジネス利用を牽引するとみられます。

流通・サービス分野については、小売店舗での展示ならびにオンライン店舗での展示に関するAR/VR利用は、2018年には合計9.5億ドル(約1,080億円)の支出が見込まれる最大のユースケースになり、特にオンライン店舗での展示は2021年までの5年間で年間平均成長率225%という成長を実現するとみられます。

他方、製造・資源エネルギー分野では、現場での組立と安全管理、およびプロセス製造のトレーニングと設備のメンテナンスが有力なユースケースになるとみられます。その他、公共インフラ分野では、インフラ整備と政府によるトレーニングが2018年における最大のユースケースになるとのことです。


参考:日本国内AR/VR関連市場 2017~2021年の年間平均成長率のTop5ユースケースと2021年の支出額予測

IDCのカスタマー インサイト&アナリシスのリサーチディレクターであるマーカス・トーチャ氏は「企業にとっては、VRを顧客向けと社内向けの両方で採用する準備が整いつつある」と述べています。

また、「これらの産業分野のニーズを満たす商用レベルのハードウェアとアプリケーションが開発される機運は大いに盛り上がっている。その一方で、スマートフォンベースのモバイルARが短期的には熱狂をもって受け容れられる可能性が高く、多くの企業が既にARのアプリとサービスを利用している。これらのアプリやサービスの中には役立つものもあればそうでないものもあるが、今後12~18か月の間に多くの開発者がARの潜在力を理解し始める事になるだろうと我々は考えている」とコメントしています。

日本は教育分野での成長率が課題

地域別では、2018年最も支出が多いと予測されるのは米国(64億ドル)、次いで日本を除くアジア太平洋地域(51億ドル)、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域(30億ドル)となります。米国は2021年まで成長が加速し、2020年には成長率がピークに達すると見込まれています。一方、日本を除くアジア太平洋地域は2021年を前に支出の伸びがやや減速すると予測されています。

その他、カナダ(年間平均成長率139.9%)、中・東欧(年間平均成長率113.5%)の2地域が100%超の年間平均成長率を見込んでいます。他方、日本の年間平均成長率は36.5%と低い成長率にとどまる見込みとのことです。

世界に比べ全般に成長が見劣りすると予測される日本ですが、組立製造やプロセス製造分野での2017年~2021年の年間平均成長率は70%を超え見通しは堅調とのこと。その一方、教育分野での利用の成長率が他の地域と比較し著しく低く、これが今後のユースケース拡大と成長の阻害要因の一つとなっているとのことです。

IDC JapanのPC・携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原啓氏は、「ユーザー体験の言語による伝達が難しいAR/VRは、体験者の裾野をいかにして広げるかが最初の課題であることは明らかである」と述べています。

さらに「その意味ではAR/VRの利用拡大に果たす教育の役割は極めて大きいと言え、今後の教育現場でのAR/VRに代表される先進技術の積極的採用がビジネスにおいてもデジタルトランスフォーメーションの鍵になるとも言える」とコメントしています。

今回の発表はIDCが発行する「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide」にその詳細が報告されています。

また、日本国内のAR/VR のビジネス利用の動向については、2017年12月発行予定の「2017年 国内AR/VR市場 企業ユーザー調査」にその詳細が日本語にて報告されているとのことです。

(参考)
IDC Japan株式会社 プレスリリース
https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20171212Apr.html


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