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テック 2016.06.22

【インタビュー】「最高のVR体験をフルセットで提供できる」好調なHTC Viveについて訊いてみた

6月14日から16日まで開催されたE3。会場では、HTC Vive向けのコンテンツの展示もいたるところで見受けられたほか、HTC自身もブースを出展していました。

4月のHTC Viveの発売から2ヶ月。出荷ペースを早め、コンテンツ制作支援の枠組みVive Xも整えるなど積極的な動きを見せています。E3で開催されたプレス向け合同インタビューの内容をまとめました。

HTC Viveインタビュー

今回インタビューに気さくに答えてくれたHTC社のVRプランニング&マネジメント担当アシスタント・ヴァイス・プレジデント ダニエル・オブライエン氏(右)、VRグローバル・コンテンツ担当副社長 ジョエル・ブレトン氏(左)

HTC Viveの売れ行きは好調

――HTC Viveの売れ行きはどのような状況でしょうか。

オブライエン氏:

世界的にうまくいっています。元々ハイエンドPCの普及率から、アメリカ、西ヨーロッパ、中国、台湾などでの販売台数が多くなることは予想できていました。アジア/オセアニア地域をひとつのリージョンとして見ても、売上は好調です。プレオーダーの発送が全て終わったので、一般販売の段階に入りましたが、売上は安定していてむしろ伸びています。我々は先日、一部の国に向けては、注文から72時間以内に出荷すると発表しました。この72時間に間に合わせるのがギリギリになるくらい注文が入ってきています。

――先日、法人向けのHTC Vive Business editionを発表しましたね。消費者版の799ドルから1,200ドルになったのはなぜですか

オブライエン氏:

799ドルの消費者版に関してはビジネスにおいて必要な保証、技術的サポート、故障に対してのサポートなどがありません。Business Edition専用の開発チームなども編成しているので、その分を含めての1,200ドルになっています。一括注文や発注書の発行など消費者版では行えない対応も行っています。

ブレトン氏:

現在のところ、Business Editionのお客様はAudi, BMW,Autodeskなど。用途としてはデザイン、設計、医療、教育、人材育成など様々です。例えば、プロトタイピング段階で粘土の模型を作るのではなく、VRでリアルなサイズ感で体験したり。2次元の設計図を見て完成形を推測するのではなく、VRで実物のモデルを見ることによって事前に完成形に対しての認識を統一できます。

対応コンテンツの数も純増

――PSVRは年末までに50タイトルをリリース予定と発表されましたが、HTC Vive向けコンテンツの数はどうでしょうか。

オブライエン氏:

Viveのローンチ時は50タイトル以上がありました。そして現在は240タイトル以上が配信されています。今後も増え続けますよ。

HTC Viveインタビュー

――インディーゲームが多くみられますが、今後AAAスタジオからもゲームは配信されるのでしょうか。

オブライエン氏:

今の段階でインディーゲームが多くみられるのは、彼らは早い段階から短いコンテンツを作ってきているからです。もちろんAAAとの連携も考えていますが、大きいスタジオは動くのに時間がかかるので出るまで時間がかかっています。もっと開発時間のかかるビッグタイトルやマルチプレイヤーのゲームは今後増えていくと思いますよ。

ブレトン氏:

現在あるタイトルの中でも『Hover Junkers』と『Pool Nation VR』はインディですが、マルチプレイで何度も遊びたくなる素晴らしい体験ができます。先行してVRコンテンツを作ってきたインディの開発者がベストプラクティスを模索して、それをオープンに共有してくれたおかげで他の開発者や、AAAスタジオも良いコンテンツを作ることできてています。

マルチ対戦でガラクタ争奪戦を繰り広げるFPS『Hover Junkers』

バーでビリヤードをマルチプレイできる『Pool Nation VR』

https://www.youtube.com/watch?v=JqnP4kXvDeU

――AAAでは、今回のE3でベセスダ・ソフトワークスから『Fallout4』のHTC Vive版が発表されました。いつ頃から話があったのでしょうか。

ブレトン氏:

1年以上前からです。開発機、SDKの提供などから、社内でのVR文化の盛り上げまでお手伝いしました。1人称視点でオープンワールドのゲームを主戦力にしているベセスダはVRについても、数年間研究していました。最終的にViveを選んだのもベセスダ側の決断でした。

HTC Viveインタビュー

――PS VRではAAAタイトルのVR対応が多く発表されました。『ファイナルファンタジーXV』や『バイオハザード7』がVR版にも対応する可能性はあるのでしょうか。

ブレトン氏:

:開発者次第ですね(笑)我々としては大歓迎です。
――VRコンテンツを作るスタートアップを支援するアクセラレータープログラムVive Xを立ち上げましたが、応募状況はどうでしょうか。

オブライエン氏:

現在、審査中ですが、満足の行く数が集まりました。まずは、アジアで募集していますが、数も質も両方とてもいいものが集まってきていますです。参加者のほとんどの作品は既にかなり磨かれたもので、サポートが少し必要なだけ。現在はアジアのみを対象にしているがいずれヨーロッパやUSにも展開しています。なお、Vive Xはサポートを行うだけで、将来的に買収などをする気は全くありません。

――地域ごとにコンテンツの特徴などはあるのでしょうか。そして、差異がある場合、他の地域に展開することについてどのように考えていますか。

オブライエン氏:

Computext(台湾のPCイベント)で行われた発表の内容は瞬時にアメリカに届いたり、E3の発表内容もおそらく瞬時にアジアに渡る世の中です。世界的に距離感は縮まり差がなくなってきています。その中で、やはり文化的な側面が異なっていて、流行するコンテンツのジャンルは地域ごとに異なります。

ブレトン氏:

(質問者が日本人だったため)日本ではRPGが人気で技術的に洗練されています。ほかの地域でも、ローカライズしてみると意外に売れるパターンがあったりします。HTC Vive向けのコンテンツの配信を行っているSteamはデジタルプラットホームです。どこの開発者でもSteamを通して世界的に販売できます。

――現在配信されているコンテンツは比較的短時間で終わるものが多いようですが、今後、長時間VRを体験するようなコンテンツも増えてくるのではないでしょうか。

オブライエン氏:

現状は30分から1時間くらいを1プレイとして、それぐらいで止めることのできるコンテンツが多いですね。HTC Vive自体は、楽しんでいればもっと長くVR内に居ることも可能な工夫をしています。フレームレートは、常時90fpsを維持していますので描画は滑らかです。また、ヘッドセットの設計にも首が痛くなったりしないように重量の部分への工夫や熱がこもらないようにしています。

――ハイエンドのVRヘッドマウントディスプレイということで、ソニー(SIE)のPlayStation VR、OculusのRiftと競合しますが、差別化はどのように図っていくのでしょうか。

オブライエン氏:

HTC Viveではプレイヤーは自由に動けることが決定的に違っています。そして、体験に必要な全てのものをセットにして提供しています。誰でもHTC Viveが到着した瞬間から、最高のVRを体験できます。さらに、開発環境という意味では、開発者キットは消費者版と同じ内容ですから、統一された平等な体験を提供しています。

HTC Viveインタビュー

――HTC ViveはPC向けのハイエンドなVRですが、モバイルVRについてはどのように考えているのでしょうか。

オブライエン氏:

HTC Viveは最初からハイエンドVRを目指していて、最もハイクオリティな体験を追求しています。現在のモバイルVRにはコントローラーもポジショントラッキングもなく、インタラクティブ性が足りません。そこにいるという実在感(プレゼンス)が足りません。HTC Viveで体験するVRとは全く別のものです。

――Googleが公開したモバイルVRのプラットフォームDay Dreamの対応端末メーカーとして、HTCの名前が挙がっていましたね。

オブライエン氏:

Googleはよきパートナーで、HTC Vive向けのソフト『Tilt Brush』などでも密に協力しています。現在Daydreamに関しては、アイデアについて話している段階です。何か発表できるようになってからのお楽しみです(笑)

HTC Viveインタビュー

――今後、HTC Viveの次の展開はどうなりますか。

オブライエン氏:

”今年”は販売に力を入れます。世界的に販売ルートの確保とコンテンツを増やすことに集中します。第四四半期に向けてコンテンツ数の240をもっと大きい数字にしていきますよ。

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