GDC2017に見た グーグルがVRにかける本気

2月27日から開催されたゲーム開発者会議GDCでは、VRに特化した開発者イベントVRDCが併催されました。各開発スタジオによる知見の共有や展示に加えて、各プラットフォーマーの講演や展示なども行われ、開発者獲得に向けた活発な姿勢が見受けられました。

VRに関係するプラットフォーマーで特に力を入れていて印象的だったのがグーグルの高品質なスマホ向けVRプラットフォームDaydreamです。

グーグルのブースは、展示会場のほぼ中央に位置し、Oculusなどと同じくらいの床面積を全てDaydreamの展示に使用していました。

スマートフォン向けを攻め続けるグーグル

グーグルの始まりCardboard ―ダンボール製の簡易なVRデバイス―

現在、VR向けの主なプラットフォームには、ハイエンド向けのOculus(Facebook)のOculus Store、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのPS Store、ValveのSteamなどがあります。

グーグルは、2014年にダンボール製のスマートフォン用VRデバイスCardboard(カードボード)を発表しました。ジャイロセンサーを搭載するスマートフォンであれば汎用的に簡単なVR体験ができるデバイスです。発表と同時に設計図を公開したため、中国・アメリカを中心に、Cardboardと同じような性能を持つデバイスが数多く登場しました。コンテンツは、Cardboard向けのSDK(開発用ツール)をゲームエンジンなどを使って開発できます。

グーグルはCardboardの出荷台数を、2017年2月時点で全世界で1,000万台を突破していると発表しています。ニューヨーク・タイムズとの協力やイギリスの学校への取組など、100万台単位で配布を行ったこともありました。なお、1,000万台という数字にはグーグルが関与していない、Cardboard類似のVRゴーグルの出荷台数は含まれていないと考えられます。

アプリの累計ダウンロード回数は1.6億回を超えているとのこと。Cardboardの立ち上げ以降、非常に多くのデバイスが既に流通しています。

高品質なDaydreamの登場

Cardboardは1,000円程度を出して、手持ちの大部分のスマートフォンで体験できる、とはいっても非常に簡易な体験に留まります。ゲームのみならず、360度動画の再生ですら頭を振ると残像が出てしまうなど、Oculus RiftなどのハイエンドなVR体験と比べると質の差は歴然です。

そこで、グーグルが2016年6月に発表し、11月に始まった新たなスマホ向けVRプラットフォームが「Daydream」です。Oculusがサムスンと開発したGear VRと同等の性能で非常に快適に、そして滑らかにVR体験が可能な上に、リモコン型のコントローラーが操作の幅を増やしています。

対応しているスマートフォンは、グーグルのPixel、モトローラのMoto Z、ZTEのAxon7など7機種です(2017年3月11時点、日本では未展開)。Daydream Viewと呼ばれる専用のVRゴーグルを使用します。

Daydream対応スマートフォンはこの4機種に加え、グーグルの純正スマホPixel、モトローラMoto Z

Daydream用のVRゴーグルDaydream View。外見が布で覆われており、肌触りが良く、非常に軽量

GDC2017の展示ブースでは開発者に積極的なアピール

GDCのブースの大きさを見ただけでも、グーグルは、Daydream向けのゲームを制作する開発者の獲得に力を入れていることが分かります。1年前のGDC2016では、今回の4分の1程度のブースでVRに関してもCardboardを配布するにとどまっていたことを考えると、非常に積極的な姿勢が伝わってきました。

ブースで体験できたのは、Ubisoftの新作ゲーム『Virtual Rabbids』など、今後の配信予定のVRゲームでした。手元のリモコン型コントローラーを使ってステージを動かす『MEKORAMA』やVRゴーグルを持っていないスマホプレイヤーとも協力できるアドベンチャーゲーム『Lola and the giant』、世界にあるものを自由に掴んで動かすことのできる『V-VR』など、Daydreamならではのユニークなゲームが登場していたのが印象的でした。

グーグルの描くこれからのDaydreamの展開

GDC2017で行われたセッション「What to Pack: Exploring VR and AR with Daydream & Tango」では、Daydreamの今後の展開について示唆深い話がありました。

登壇したグーグルのシニアプロデューサーであるアレックス・リー氏は講演の中で、「Daydreamのスマートフォンは決してシングルモデルではなく、今後多くの機種が出てくる。来年はさらに多くのスマートフォンがDaydreamに対応するだろう」として、現在登場している7機種以外にも広がっていくことに言及しました。

対応スマートフォンだけでなく、VRゴーグルであるDaydream Viewもリファレンスモデル(参考モデル)です。ファーウェイはすでにDaydream準拠の独自のモデルを発表しており、VRゴーグルも今後さらにさまざまなモデルが登場することが想定されます。

「VRの市場は急激に変化しています。今の市場ではなくリリース時期の将来の市場を見据えて開発をしてください

DaydreamとARプラットフォ―ムTango向けの開発ツールやコンテンツ紹介をした1時間の講演の最後にアレックス・リー氏は、VRの市場が急激に広がっていることに言及しました。このコメントから、今後半年から1年の間にグーグルがDaydreamのプラットフォームをさらに拡大させていく自信を持っていることが分かります。コンテンツの充実とプラットフォームの拡大はニワトリと卵のような関係ですが、グーグルの言動を見ている限りでは、ハードウェアの普及とプラットフォーム拡大によりコンテンツ開発を引っ張っていく姿勢を感じます。

日本で展開されておらず、様子を伺うことの難しいDaydreamですが、注目しておくべき重要なプラットフォームであることは間違いありません。

この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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