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イベント情報 2015.04.15

GDCに参加して分かった、VRで今後最も注目すべきこと

2012年のOculus Riftの登場以降、没入感が得られるVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)が注目を集め盛り上がり続けています。

2015年3月上旬にサンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議GDCでは、VR分野の盛り上がりに呼応する形で、VRに関する発表、展示、講演が多くありました。筆者は現地に飛びましたが、今後1年間の流れを予期させる大きなうねりが感じられました。本記事は、特に、Oculus RiftやProject Morpheusなど、PCやPS4に接続して使う「据え置き型」とも言える高性能なVRデバイスについてのレポートになります。

※VRHMDには、「Gear VR」や「ハコスコ」などスマートフォンを装着して手軽に体験できるモバイルVRHMDがあります。

それは、「VRで何が体験できるのか」が注目の的になるということ、そしてアメリカを中心に、製品版を見据えたコンテンツ開発がいよいよ始まっているということ、です。

2つの発表が作った、VRゲームが実現するまでの道筋

2015年3月上旬にアメリカ・サンフランシスコで開催されたゲーム開発会議GDCでは、据え置きのVRHMDに関する2つの発表が注目を集めました。
1つ目は、世界最大のPCゲームプラットフォームSteamを運営するValve社が携帯電話メーカー大手HTC社と協力して開発中の「HTC vive」を製品版の性能とともに2015年末に発売すると発表したことです。Valve社はSteamの運営だけでなく、『Portal』『Half-life』などのゲームタイトルも開発しています。

「HTC Vive」の一般発売は2015年下半期。Valveが提供するSteam VRに関する情報が公式サイトでも公開

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2つ目は、SCEがProject Morpheusも製品版プロトタイプの性能を公表し、発売時期を2016年前半と発表しました。新型は1年前のGDCで発表された開発中のプロトタイプから飛躍的に性能が向上しています。

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一方、先行していたOculus Riftに関する発表は特にありませんでした。昨年9月に発表されていた最新型プロトタイプCrescent Bayの最新デモの体験にとどまり、製品版の発売時期、性能については未定となっています。

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「HTC vive」、「Project Morpheus」、2つの製品版の詳細が明らかになったことで、いよいよ2015年末から、特にゲームを中心に、ハイクオリティなVRを体験できるようになることが明らかになりました。

発表で盛り上がる中、GDC会場で起きていたこと

GDCでは、新たに発表されたHTC viveや新型Project Morpheusを体験をすることができたのはごく一部のメディアや開発者に限られていました。

一方、GDCではコンテンツ開発に携わる開発者や有識者の講演が数多く行われますが、VRに関する講演は数が多く、非常に多くの聴講者を集めていました。

例えば、初日に開催された「VR for Indie」では、大規模ではない独立系のインディゲームのデベロッパーがVRゲームを開発した知見を共有しました。既にVRゲームを作って販売してる開発者も登壇し、VRコンテンツに未来について非常に熱のこもったパネルディスカッションが行われました。このセッションは500人以上が聴講し、立ち見が出ていたほどの人気ぶりでした。

th_image02VR for Indies(インディゲームデベロッパーがVRゲームを開発するには)

また、「Written on Your Eyeballs: Game Narrative in VR」では、Gear VRなどで遊べるVRゲームやProject Morpheusのデモなどの開発に関わっているフリーランスのRob Morgan氏が、VRゲームにおけるストーリーテリング(ストーリーをどう表現するか)についての講演を行いました。

th_image01「Written on Your Eyeballs: Game Narrative in VR」を担当したRob Morgan氏が開発に携わった作品群
他にもVRゲームにおける3Dグラフィック、サウンドに関する講演など多くのセッションが設けられていました。

今後、最大の注目はVRで「何が遊べるのか」

こうした講演の傾向と人気ぶりを見ていると、いよいよ発売されるVRHMDを使って体験する内容であるコンテンツ開発(特にゲーム開発)にも注目が集まっていることがわかります。

既に製品版の情報は明らかになりつつあります。徐々に浸透しつつあるVRHMDそのものの話題が落ち着き、その次はいよいよ「何が遊べるか」という話題に注目が集まるのは必然と言えるのではないでしょうか。

1年以内に来る、家庭用VRHMDの一般発売に向けて、デバイスの開発を進める各社はゲームを開発するデベロッパーとの連携を進めています。

現時点で明らかになっているタイトルでは、まだ大手ゲームメーカーが作る大作の情報が多くありません。アイスランドのCCP社のSTG『Eve Valkylie』や日本のバンダイナムコゲームスの『サマーレッスン』などです。

Eve Valkilye(Oclus Rift、Project Morpheus)

サマーレッスン(Project Morpheus)

また、昨年セガが海外で発売したスペースホラー『Alien:Isolation』は、展示会でデモが体験できるなど、VRモードの実装が噂されていましたが、発売時には見送られました。本タイトルは日本語版が本年6月に発売されます。

幻の『Alien:Isolation』VRモード

6月には、ロサンゼルスで世界最大のゲーム展示会「E3」が開催されます。VRで遊べる大作の発表に注目したいところです。

活発なインディ・VRゲーム・デベロッパー

大作の発表が待たれる中、小規模で開発を進めるインディ・デベロッパーはKickstarterでの資金調達を行ったり、デモ版を公開したりと非常に活発な動きを見せています。


Vanguard V(Oclus Rift、Project Morpheus)


The Gallely(Oculus Rift、HTC vive)


Pollen(Oculus Rift)

インディゲームはVRゲームの開発でも非常に存在感のある状況になっています。

GDCと時期を同じくしてボストンで開催されたゲームのイベントPAXeastでは、インディゲームのブースが80以上並ぶ中で、VRにも対応しているゲームを展示しているブースは10程度ありました。

いよいよ1年以内に迫る本格的なVRの登場。今後、ソフトに関する話題は一層増えてくると予想されるGDCでした。また、Oculus VR社の創業者パルマー・ラッキー氏は、4月に開催されたUnite2015Tokyoにて、「もしVRのコンテンツを開発したいのであれば、インディのデベロッパーも今がまさにその時だ」と発言をしています。ハードウェアを制作している側も、ソフト開発に注目している現れでしょう。

MoguraVRでは国内外のソフトに関してもこれまで以上に情報を発信していく予定です。

Written by 久保田瞬(すんくぼ)


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