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VTuber 2019.10.04

それぞれの“角度”から見えたものは?「FAVRIC」クロスレビュー

2019年9月29日(日)幕張メッセで行われたVTuberイベント「FAVRIC」。「バーチャル時代のファッションイベント」をコンセプトに、VTuberたちがランウェイを歩き音楽ライブを行う企画だ。当日、会場の各ブロックは満員状態。ニコニコ生放送でも配信され、Twitterでイベント名が世界トレンド2位に上昇するほどの注目を集めた。

Twitterで当日の感想を振り返ると、今回のイベントはステージにランウェイが設置されている構成上、どの場所から観るかによって、感想に大きな違いがあると分かった。また、音楽、ファッション、パフォーマンスなど、それぞれの注目ポイントの違いからも意見にバラツキが見られた。

そこで今回MoguLive編集部は、当日イベントを視聴したさまざまな人達にアンケートを配布。それぞれの視点から「FAVRIC」の感想を賛否問わず自由に語ってもらった。

Aikawa(ライター)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
ステージの右前方

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
最高

開催前に注目していたポイントは?
ファッション、歌、ダンス、出演者のパフォーマンス全体、映像技術

特に印象に残ったシーンは?
・MonsterZ MATEでの、MV再現映像。特にサイドのスクリーンを使った洞窟の表現や、戦車の全身など。全体的にすべてのスクリーンを使って各曲ごとに演出があり、どこをみても演出だらけで舞台の一体感を楽しめた。
・MonsterZ MATEやKMNZらがライブ中にランウェイを歩きながら左右のオーディエンスにアピールしていたこと。

全体の感想
全体を通して、曲・演者・ファッションが一体となった空間だった。オーディエンス突き出たランウェイという形の舞台を使うことで、平面的なライブよりもさらに多彩な距離感が表現されていたと思う。

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
自分が予想出来る範囲はもう超えていると感じました。これからも、今まで以上の楽しいことが起きると確信しています。

myrmecoleon

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
ステージから見て左内側Aブロックの最奥,機材席前の通路の手前。

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
良い

開催前に注目していたポイントは?
 複数の文脈のVTuberが演目上でどのように構成されるか。

特に印象に残ったシーンは?
ランウェイで演者同士がすれ違うところが好きです。

全体の感想
個人としては大変楽しめました。事前に不明な点が多くもともとあまり期待はしていなかったのですが、VTuberを集めた音楽イベントにファッションという軸を設けたのは上手で、演目の構成はよく出来ていたと思います。

立っていた位置もあり全体を見ることを意識していましたが、照明や会場全体のディスプレイの演出など大変綺麗で、それと演者のパフォーマンスとの組み合わせが楽しかったです。

一方でチャレンジングな企画であり、物販や進行およびライブの技術面で見劣りする点が多々あったのは事実ですので、批判があるのは妥当と思います。個人としてはEGOISTのライブを見られたのは発見でした。またフラスタ等でRookie’s Runwayの子たちのファンの熱が感じられたのも良かったです。

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
彼女たちの普段見られない側面が見られる企画が見たいです。リアルイベントではないですが,最近のREALITYの企画では体力テストなど興味深いものが多いと思います。音楽イベントでは別のVTuber同士のコラボに期待しています。

ひかげつきみ(VTuber)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
中央ステージ最前真ん中(メインモニターが見えなかったため、スマホで生放送を同時視聴)また、タイムシフトでも見ました。

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
良い(素人目にも改善してほしいポイントがあったため、最高とはいえないが、それを差し引きしてもこのイベントの価値は高い)

開催前に注目していたポイントは?
・ランウェイの歩き方(どのように歩いてるとこを再現するか)
・ルーキーの扱い(2D勢も採用していたことからどのように扱うのか気になっていた)
・新衣装がどのようなものか

特に印象に残ったシーンは?
EGOIST(正面スクリーンが一番勝ち組と化した瞬間でもあったので)

全体の感想
V界隈としては、過去最大級の豪華出演者であり、モニターや照明、音響にもすごく拘ったものでした。モニターに近すぎると全体で何が起こっているのか見えないという問題もあったが、それを差し引きしても今後に期待できるイベントでした。

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
これからは、透過スクリーンを併用した表現や、複数のモニターを使ったVtuberの表現が増えていくと思うので、その辺りにも期待したいです。

浅田カズラ(バーチャルブロガー・ライター)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
ステージの中央ステージ前方 +ニコニコ生放送(手元の端末から視聴)

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
最高

開催前に注目していたポイントは?
ファッション、ステージ構造、演出内容

特に印象に残ったシーンは?
・ランウェイシーン
・ピンキーポップヘップバーンのライブ:映像演出と本人のパフォーマンスがとにかく華やかだった。
・YuNi全般:ライブパフォーマンスはもちろん、コンセプチュアルかつバーチャルならではな「燃える」衣装が最高にクール。
・KMNZ全般:衣装デザインが一番映えていた。ランウェイでの魅せ方も上手だった。
・EGOIST全般

全体の感想
バーチャルな衣装(と演出)はもちろん、ランウェイという舞台によって「バーチャルな立体感」を生み出した、野心的なライブだった。
観覧場所の当たり外れが強く、またライブそのものは割と普通だったものの、意欲的な演出は成功していたように思う。

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
インタラクティブ性。「観客がいるリアルの場にVTuberを呼び出す」意義を見出せることがリアルイベントには重要だと思います。

けいろー(フリーライター)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
客席側から見て、ステージの左中央

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
最高

開催前に注目していたポイントは?
ファッション、歌、出演者のパフォーマンス全体

特に印象に残ったシーンは?
EGOISTのLIVE(歌と衣装)、ランウェイシーン

全体の感想
ステージとは距離があるにもかかわらず「推しがすぐそこにいる」と強く感じられる、不思議な空間。初めてVRでVTuberと触れ合ったときの感動を思い起こさせる、まっこと刺激的な体験となりました。それとRookie’s Runwayの選曲、最高にズルくありません?(いい意味で)

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
仮想世界から現実世界へと進出するのではなく、双方が混ざりあった「バーチャル」ならではのイベント・体験に期待しています!

なぎ(映像ディレクター)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
ステージの左前方(ランウェイ中間)、Bエリア最前列

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
悪い

開催前に注目していたポイントは?
・ステージ構成
・映像技術
・ファッション
・出演者のパフォーマンス全体
・VTuber同士のやりとり

特に印象に残ったシーンは?
【良い意味で】Rookie’s Runway
【悪い意味で】ミライアカリのDJ、ランウェイシーン

全体の感想
特に偉そうなことが言える立場ではないですが、映像をやっているということで映像を中心に述べたいと思います。私が「FAVRIC」に期待を持った点は地上波のCMでも流れた映像です。あれを見たときは誰もがカッコイイ、これは見たいと期待を高めたのではないでしょうか。コンセプトと共にとても素敵なイベントになると思いました。

そして当日。「ミライアカリのDJ」で会場の熱気を高めていく部分、これは映像だったのか何故かだんだん映像と音がズレていき会場のコールにもばらつきが出ていました。そして最後にはグリーンが投影されてしまう事態。

あれは映像を作った人は何故気づかなかったのか、運営も確認をしていないかと思わされました。同じ業界で働いている身としてはスケージュールが厳しくきっと前日、当日まで映像作成をしていたんだとは思いますが、「FAVRIC」という新たな空間・世界をあの会場に作り出しているのにも関わらずあの世界観を台無しにするミスはあってはならない。絶対に防げた演出でした。

そしてランウェイとランウェイでのライブ。まず気になるのはスクリーンが飛び飛びにあること。それは仕方がないことだと思って会場に行きましたが、はじまって見るとランウェイのモニターがない部分で立ち止まって歌ってしまう部分がありメインであるはずの演者が見えなくなるという時間が多過ぎました。

そしてメインのはずだったファッションが微妙。たしかにリアルファッションショーの衣装というのは私のような一般人には分からない衣装なのかもしれませんが、「シェーダー間違ってない?」や「クオリティ低くない?」が正直な感想です。でもバーチャルらしい模様が動いたりするデザインは素敵でした。全員に取り入れてほしかった。

ファッションショーが終わりライブ。ランウェイの先端で歌って、その映像をステージ上のスクリーンに大きく投影していると思ったら違った。ステージ上のモニター部分で歌っているのか、ランウェイの先端(中心)で歌っているのかが分からない。

ステージとランウェイの間、ランウェイのモニターの間の移動も統一性がなくどこに行ったのか分からなくなることが多く視線誘導が非常に下手くそだった。ワープ移動の繰り返しで見ていて疲れました。参加者の視線にもかなりばらつきが感じられた。

「Rookie’s Runway」はまだ駆け出しの個人勢やVRChat界隈の方も参加できとてもよい企画でした。1曲分のデータを提出してもらったんだと思いますが…それでもあの商品を並べるように配置したVTuberのステージ映像は非常に残念でしたが。

全体を通してはこんだけVTuberが出ているのに映像ばかりでVTuberどうしの絡みが少なかったのが残念です。めめめちゃんとPPHちゃんの曲の繋ぎが良かったです。映像でも「次は○○で△△な人です!」ぐらいな紹介トークを全体的にはさんで工夫をするだけで、映像感を減らせるのではと色々なVイベントで思っています。

時間と技術が足らなかったんだろうなというイベントになってしまいましたが、来年もやられる?ということで本当に開催出来るのかが不安ですが来年に期待したいと思います。

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
今のVTuber系イベントや配信に足りていないのは、映像の演出方法です。メインはVTuberが喋ったり踊ったりしてファンが喜べばいいかもしれませんが、VTuberは映像がなければ生きていけません。バーチャルですが映像に住んでいるVTuberをよりよく魅せていくには存在出来ている映像の演出をこだわっていくところが今後伸びていくと思います。

今は「FAVRIC」のように映像という演出を考えずに、Unityが出来る人がやっている感が否めません。「四月一日さん家の」で話題になったような映像をやっている放送業界の人達との交流・技術者をxR業界へ取り入れることが今後のリアルイベントで盛り上がる演出・話題性に繋がるのではないでしょうか。

今後期待したいのは、やはり完全リアルタイムなライブイベントが増えることです。すでにSPWNさんなど取り組まれている企業さんもありますが、やはりあらかじめ撮影した映像をいくら上手に繋げても映像だなってのは見ている人には分かってしまいます。Vイベントの会場でも口にする人を多く見かけます。

技術的な部分やリスクを考えると事前に録画が運営的にはよいのですが、VTuberのよいところはアニメのキャラとは違ってリアルタイムにやり取りが出来るところです。その時々変化し続ける感情を伝え合うことができます。技術的に可能になった今それを捨ててしまうのは非常に勿体ないです。

ゆりいか(編集記者)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
カメラ席(ステージ奥の上段)

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
普通

開催前に注目していたポイントは?
ファッションでどのようにファンを沸かせるのか。

特に印象に残ったシーンは?
花譜、EGOISTのライブ

全体の感想
正直にいえば戸惑っている。鮮度の高い魚を期待して寿司屋に行ったら、肉汁があふれんばかりのステーキが出されたような感じだ…。

それぞれの音楽ライブは圧巻で、光の演出も見事だった。しかし、肝心のファッション部分のコンセプトに関しては説明不足に感じた。(パンフレットを読み返しても、まだまだ分かりにくい)

例えば、樋口楓さんの“声援”を着る服やYuNiさんの曲の盛り上がりに合わせて燃え上がるドレスなどは、ファッションブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の展示会のアイデアと共通する部分があると感じたが、それぞれのコンセプトがパッと見ただけでは伝わりづらいのが問題だった。VTuberがプレゼンする時間を設けるか、ナレーションで説明を入れるなどの工夫ひとつで変わったと思う。

また写真撮影可でありながら、映像の光で肝心の服がほとんどぼやけてしまうのも残念だった。撮影しやすいような落ち着いた演出があっても良かったかもしれない。一般的なファッションショーは撮影されてこそ話題として拡散するので、今後に期待したい。

音楽イベントとしては100点満点だが、ファッションショーとしては本当にこれで良かったのだろうか?

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
参加者が現場で配信で視聴する以上の価値があったと思えるような企画。特にその場にいなければ参加できないような特別感を得られた方がよい。

イトッポイド(バーチャル販売員)

「FAVRIC」をどこから見ましたか?
ニコニコ生放送

総合評価は?(最高、良い、普通、悪い、最悪)
最高

開催前に注目していたポイントは?
「ファッションショー」としてのランウェイの表現

特に印象に残ったシーンは?
ランウェイシーン

全体の感想
「ランウェイを用意した会場(Girls Award)」に「VTuberが各々の装いでランウェイを歩く」という演出と「最高のセットリストの音楽パフォーマンスでブチ上がる会場」を揃え「フォトジェニックなショー」を作り、そのイベントに「ファッションショー」というタイトルをつければ、世間的に【バーチャルのファッション消費がこんなに盛り上がっている!】というインパクトを生成できる。この企画立て付けが痛快でした。

エンドユーザーが購入可能な”ファッション”ではなく「アイドルタレントの衣装」、”ファッションショー”ではなく「音楽ライブショー」だったという反応も多く見られますが、音楽ライブに注目が集まるいまのVTuberシーンを考えると、観客動員型のエンタメ興行イベントに落とし込むやり方としてはひとつの答えといえるでしょう。

とはいえこの企画を実現するにはかなり大きなハードルがあったかと思います。短期間でこれだけの3Dモデルを準備し「たくさんのVTuberが新しい衣装を着用してランウェイを歩く」というシーンを実現した制作スタッフのみなさんに最大級のリスペクトと大きな拍手を送りたいです。

ここまでやるには眠れない夜もあったでしょう!

今後VTuberのリアルイベントに期待したい点は?
アニソンライブ市場の上に吸収可能でユーザーもわかりやすく楽しめる「音楽ライブ」や、地下アイドルビジネスの構図と同じ「接触イベント」ももちろん魅力的ではありますが、それ以外の新しいイベントの形がVTuberシーンの文化として生まれる未来の可能性に期待しています。

アンケート協力:Aikawamyrmecoleonひかげつきみ浅田カズラけいろーゆりいかイトッポイドなぎ(敬称略)

撮影:公式提供、MoguLive編集部


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