「完全なARの到来まで少なくとも5年かかる」フェイスブックが考えるコンピューティングの未来【前編】

フェイスブックは、4月19日、サンノゼで開催中の開発者会議F8の2日目の基調講演を行いました。

1時間半のセッションは、サービスの発表が行われた1日目の基調講演と異なり、同社のR&D;部門のリーダーが次々と登場しフェイスブックが考える未来についての講演を行いました。

最初に登壇したCTOのMike Schroepfer氏は、フェイスブックが掲げる今後10年のロードマップを提示し、特に10年後の未来に社会に到来するとしている3つの技術コネクティビティ、AI、VR/ARについて、それぞれの研究進捗を報告しました。

Facebookが掲げる10年間のロードマップ(拡大可能)

そして、VR/ARの先にあるものとして、「コンピューティングの未来」について言及、人間の脳から直接入力を行う、ブレイン・コンピューティングが鍵になり、フェイスブックでは既にそのR&D;を開始していると紹介しました。

本記事では、前後編の2回に分けて、F8 2017 2日目の基調講演で語られたコンピューティングの未来についてレポートしていきます。

前編はARとVRについての講演内容です。

AIを使った画像処理で、単眼のカメラで空間の奥行きを測定

フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏はF8の1日目の基調講演にて、スマートフォンのカメラを使用したARカメラプラットフォームを立ち上げることを発表しました。

このARカメラには、現実にエフェクトをかけたり、現実を認識して床の上に物をおいたりといった「空間認識」の機能が応用されている点が特徴です。

この空間認識は、AIによる画像処理技術が可能にしています。ARを身近なところから広めるとし、フェイスブックはいわゆる二眼ではなく単眼のカメラで画像処理を行い、空間の奥行きを測定する技術を使っています。


人物を動かさずに、背景を動かしたり、ボケ味を変えることが可能になっています。

VRとARはバーチャル・コンピューティング

続いてOculusのチーフ・サイエンティストでR&D;部門であるOculus Researchを率いるマイケル・エイブラッシュ氏が登壇し、主にARの未来について語りました。

VR/ARは次世代のコンピューティング=バーチャル・コンピューティングであると話すエイブラッシュ氏。VRとARを分けて考えるのではなく、いずれメガネ型のデバイスで融合するする、と主張しました。

メガネ型のデバイスにVRとARは統合されてMRが実現します。ここで初めてエイブラッシュ氏は「Mixed Reality」(MR、複合現実)という言葉を使いました。


VRにも現実を反映した世界が広がるようになり、VRとARの境目はなくなっていきます。

Oculus Researchでは、VRのR&D;も行っていますが、社会により広範に広がるのはシースル型のARデバイスになるだろうと、エイブラッシュ氏。最終的な形はメガネ型になるとしつつも、そのデバイスのプロトタイプはまだ実現しておらず残念ながら見せられない、と話しました。


そのデバイスの要件は、軽く、手軽に使うことができる、誰もが使えるようなデザイン設計になり、その段階に至ったARをエイブラッシュ氏は「フルAR」と呼び、ARがスマートフォンのインターフェースに変わって世界中で広まり、人々の生活を変えていくようになる、と言います。

全ての現実は「バーチャルである」

フルARについて説明するにあたり、エイブラッシュ氏は、人間の操作するコンピューティング・インターフェースの歴史を紹介しました。1959年にJCR・リックライダー氏はコンピューターに人間が操作しやすいインターフェースを提唱して以来、マウスや画面などさまざまなデバイスが登場し、スマートフォンに至るまでパーソナル・コンピューティングが進んできました。1人の人物のコンピューティングに対する考えが、最終的に世界中の数十億人が使用するデバイスとして普及するまでには非常に時間がかかります。



人間は今やあらゆる場所でコンピューターと接しています。

今後、バーチャル・コンピューティングの時代が始まる、とエイブラッシュ氏は語ります。
バーチャル・コンピューティングの到達点であるARの実現は「そう遠い未来ではない」とエイブラッシュ氏は話します。


現実とバーチャルが混ざりあい、MRが実現することによって、「全ての現実はバーチャルである」と主張するエイブラッシュ氏。

ARでは空間にさまざまな情報が表示されるようになります。人の顔を識別して名前が表示されるようになれば「もう人の名前を忘れても心配はいらない」とのジョークも。


遠くの同僚と資料を見たり

物体を認識して様々な情報を付加し活用できるかもしれません。(左は、アイスを見たときに何km走ればカロリーを消費できるか表示、中央は赤ん坊の泣き顔から体温測定、右は周囲の人々の声量をコントロール)

こうした最終的な大きな流れに至る第一歩としてスマートフォンのカメラを使った展開を踏み出すとしています。

今のARに足りないもの

エイブラッシュ氏は続いて、現在のARはまだ完璧なフルARになってはいないと主張、その課題を挙げました。

社会に受け入れられるデバイス

まずはデバイスから。フルARを実現するには、技術的にはVRヘッドセットを作るよりも困難だと言います。完全にARが実現した「フルAR」のデバイスは、常用できるほどに装着しやすく、電力消費もより効率的になり、見た目も社会に受け入れられるものになります。

AIが重要な役割を果たす

また、外見だけでなく、内部のコンピューターもより進化する必要があり、AIが欠かせない、と言います。たとえば、先ほども紹介した人を顔を識別して名前を表示するシステムは便利ですが、人混みに行ったにときに全ての人の名前を表示してしまっては使い物になりません。ユーザーが望んでいる、必要な人の名前だけを表示する必要があります。

このような状況は適切ではない


必要な情報を表示させるのにAIは欠かせない

また、他にも光学、オーディオ、コンピュータービジョンなどさまざまな分野での技術的な進展が必要だと述べました。入力に関しては、マウスとGUIの出現に匹敵するような革新が必要だと述べました。


フルARの実現に必要な技術を紹介するエイブラッシュ氏。

フルARの実現には5〜10年かかる

課題を紹介した上で、フルARの実現によって、メガネ型のARデバイスを世界中の数十億人が常用するようになり、スマートフォンに取って代わる未来を描くエイブラッシュ氏。フルAR実現する時期に関しては、バーチャル・コンピューティングはまだ始まったばかりであり、「少なくとも5年はかかる」としています。フルARの実現が人々のつながりをさらに強め、生活を変えていくことは間違いないとしました。

VRだけでなくARの未来も描き始めたフェイスブック。今後彼らがどのようなARへのアプローチをとっていくのか注目です。

F8 2017 2日目の基調講演はこちらで観ることができます。(エイブラッシュ氏の登壇は58:20付近から)

後編はこちら

この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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