Home » 【体験レポ】着るコントローラー「e-skin」その実力はいかに?


テック 2017.09.02

【体験レポ】着るコントローラー「e-skin」その実力はいかに?


右から株式会社Xenoma CEOの網盛一郎さん、経営企画部の富取祐香さん、研究開発部の辻裕樹さん

カメラなしでユーザーの動きを認識するスマートアパレル「e-skin」。法人向け展開をしていた同製品ですが、現在Kickstarterを通じ、個人向けへの提供の受付を開始しています(募集期間日本時間2017年9月7日1時まで/2017年12月出荷予定)。

VR/AR/MRでのモーションインプットでも使えそうなこのアパレル、Mogura VRでも体験させていただきました。

まずはデモとして、実際にプレイヤーが走る、ジャンプする、屈む、パンチするといった動作をすることで、障害物を飛び越えたりくぐったり破壊したりしながらゴールを目指すアスレチックゲームを体験してきました。ゲーム画面としては

というような形ですが、これを実際にプレイすると、このような動きをしていました。

走る動作については左右の腕を振るだけで足を動かす必要がない(室内だったので抑え気味に動いた)ので最初は違和感がありましたが、慣れてきたらひょいひょいとクリアできてちょっと自慢気に。でも実は結構汗をかいていまして、それなりの運動量であったことを実感しました。

さらに、Hololensと連携したデモも見せてもらいました。AR空間の中にいる3Dモデルがe-skinを来たプレイヤーのジェスチャーにあわせて動きまわります(ちゃんと机の端に行くと下に落下していきました)。

と、一通り体験させていただき
・ケーブルレスで動きの検知ができるのは素晴らしい
・でも、どういったセンサーで動きを検知しているのだろう?
・ジェスチャーの認識にクセがある?
・結構みっちり着込んでしかも汗をかいてしまうので、イベント等で使いまわすのは難しそう?
といった印象をもったのですが、それも含めて株式会社Xenomaの網盛一郎さん、富取祐香さん、辻裕樹さんにお話を伺いました!

株式会社Xenomaと伸縮性エレクトロニクス

今回取材に伺った株式会社Xenomaは東京大学・染谷隆夫研究室からのスピンオフベンチャーです。研究室で開発された「伸縮性エレクトロニクス」を有効利用するために研究室からスピンオフ。そのため、ウエアブル入力デバイスを作るというところからではなく、「伸縮性エレクトロニクス」をどうやったら服に利用できるだろうかということで、今回の動きを検知するe-skinの開発となった、と言います。

e-skinが纏うセンサー

では、どうやって着用者の動きを検知しているのでしょうか。実は、服の表面を覆っている白い紋様のような線のうち一部が「伸縮性エレクトリニクス」を用いた歪みセンサーになって、服の歪み具合を検知しています。と同時にそこはアパレル、センサーなど関係なく服のデザインとして配置されている線もあります。

[wc_row][wc_column size=”one-fourth” position=”first”]

[/wc_column][wc_column size=”one-fourth”]

[/wc_column][wc_column size=”one-fourth”]

[/wc_column][wc_column size=”one-fourth” position=”last”]

[/wc_column][/wc_row]

胸部のユニットにはバッテリーのほか加速度センサーとジャイロセンサーがあり、服の伸縮データと合わせてBluetoothで外部に飛ばせます。バッテリーは現状では4時間もつそうです(ゆくゆくは8時間くらいにしていきたいとのこと)。


体の各所および計測場所にセンサー類をセットする形のモーションキャプチャーシステムと比較して、本製品は衣服についたセンサーだけなので、屋外でも利用で、またレスポンスが早いのが特徴。ゆえに使い方としては、モーションキャプチャーのように正確に位置をトレースするのではなく、動きを使って人をセンシングしていくという使い方に向いているそうです。

着用の感触

着用したときの感覚としては、けっこうぴっちりしていて、記者のようなだらしないおじさんボディだと体のラインが見えてしまうなぁ、というところ。これは、伸縮センサーの精度をあげるために伸びやすい素材を使用しているためで、着やすさも含めて試行錯誤した結果、現在の形状になったそうです。用途によっては、センサーの精度とトレードオフで着やすくすることも考えられるとのことです。

体のラインについては、センサーとしては伸縮度合いをみてるだけなので、上からアウターを纏っても機能的には問題が無いようです。また、サイズだけでなく、フォルムが異なるメンズ用とレディース用があるので、女性も安心です!

開発者向け支援

今回見せていただいたアプリは、Unityにて開発したとのこと。さらに、2017年12月のKickstarter出荷時にはUnreal Engine 4向けのSDKも用意されます。

OSとしては、WindowsとAndroidに対応、MacOSやiOSも準備中ということです。上述のようにHololensでも動作します。カメラレス・ケーブルレスで、しかも手だけでなく体の動きも検知できるというのは、今後のVR/AR/MRのアプリケーションを開発していく上で、面白いデバイスではないでしょうか。

また、センシングされた値から「パンチ」「屈む」「走る」「ジャンプ」といった標準的なジェスチャーを認識するアセットが用意されます。さらにユーザーがジェスチャー判定機能を機械学習させる環境も提供されるとのことで、アプリにあったジェスチャーを作るのに役立ちます。将来的にはジェスチャーパターンのアセットストアを作成していきたいという展望も伺えました。

e-skinが活かせるアプリケーション

上述のような開発者向けプログラムがある中、どういったアプリケーションが考えられるでしょうか。
まず、Kickstarterで支援をすると、e-skinとあわせて最大3つのアプリケーションが提供されます。1つは、今回体験させてもらったようなRunning/Fitnessアプリ。さらにヨガのアプリや、開発者向けにe-skinが検知した動きを可視化するアプリもあります。

Kickstarterのページには、ゴルフのスイングを確認するアプリの動画もあります。

さらに有志により、手の動きによってストリートでファイトする格闘ゲームで技を繰り出す、というプロジェクトも既にあるそうです。
Motion game control challenge with xenoma e-skin

e-skinの今後について

e-skinは今回のKickstarter提供される個人用とは別に、企業向けにも展開中です。センサーの精度は緩くして使用用途を絞ることによって着用しやすくしたり、下肢用や頭部用などの装着部位の拡張もオーダーがあれば可能とのこと。もともとスーツ自体はウォッシャブルなので、電源ユニット周りの防水処理が解決すれば水泳用にも使えるようにしていきたいということ。また、脳波計といったインプット、光らせたり振動させたりといったアウトプットの組み合わせにより、医療系やエンターテイメント方面にも展開していきたいということでした。

個人向けe-skinのKickstarterの募集期間は日本時間2017年9月7日1時までです(2017年12月出荷予定)。アプリケーション開発者で、カメラレス・ケーブルレスで動きを検知できるこのアパレルが気になった人はぜひチェックしてみましょう!

株式会社Xenomaによる「e-skin」Kickstarter 告知Webページ
https://xenoma.com/kickstarter


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード