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活用事例 2018.04.12

今後のビジネスを変革するテクノロジーは? 実用段階にシフトしつつあるAR/VR

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社は、今後のビジネスを変革する可能性を持つテクノロジーの動向についてまとめた「Tech Trends 2018 日本版」を4月6日に発行しました。ダウンロードはこちらから可能です。

本記事では、「Tech Trends 2018 日本版」のAR/VR/MR(「Tech Trends」では”Digital Reality”と総称)に関する部分をまとめています。なお本記事中ではAR/VR/MRなどの没入型テクノロジーを、特に断りがない限りAR/VRと呼称します。

「Tech Trends 2018 日本版」とは

近年、テクノロジー無くして、企業の戦略を決めることが難しい状況となっています。それに加えて新たなテクノロジーは、企業のあり方をすら変えてしまうこともあり、人や組織とテクノロジーをどう融合させるか、考える必要があります。

そうした状況を受けてDeloitte Insightsは、ビジネスにおけるテクノロジーのトレンドをまとめた「Global Tech Trends」を毎年発行しています。この「Global Tech Trends」の翻訳に、日本のコンサルタントの見解を盛り込む形で解説・知見を加えたものが「Tech Trends 2018 日本版」です。

2018年は、個々のテクノロジーについての理解もさることながら、様々なテクノロジーをどう組み合わせて活用していくかが大事になってきていることから、「The symphonic enterprise」がテーマとして掲げられています。

AR/VRビジネスの”イマ”

加速していくAR/VRビジネス

「Tech Trends 2018 日本版」によれば、一部のアーリーアダプタは既に2〜3周目の製品・サービス設計サイクルに入っており、AR/VRは実験的な使用から、企業内のミッションに関わるクリティカルな部分に活用する段階へシフトし始めているとのこと。「没入型環境のユーザーエクスペリエンスを設計することと、フラットスクリーンの体験を作り出すことは、根本的に異なるプロセスである」とし、先進的な企業では既に新しい人材の募集が行われています。

AR/VRがもたらすメリットには、作業が物理的な制約を受けないこと、文書や動画を上回る直感的な理解を得られること、再現すると高コストなシチュエーションをシミュレートできることなどが挙げられています。

昨年の「Tech Trends」では、AR/VRはまだ、広範囲での利用や商業化には至らないと予想されていました。しかしわずか1年で状況は大きく変わり、AR/VRの分野では既にサービスの開発と展開が進み始めています。

「これからの10年間で、Digital Realityはさらに進歩し、我々とデジタル情報とのインターフェースはもはや画面やハードウェアではなく、ジェスチャー、感情、視線となる可能性が高い」のです。

国内の状況

発行に伴って行われた記者説明会では、デロイトのジャパン・テクノロジー・リーダーである安井望氏から、海外と日本の差についてコメントがありました。

氏によれば、海外では企業内教育やコンシューマー向けサービスにAR/VRデバイスの採用が進んでいる一方で、日本はAR/VRをどう使うかというアイディア出しの段階で止まってしまっている部分があるとのこと。海外事例を参考に今後もっと取り組みを進めていきたいと述べています。

既にAR/VRに取り組んでいる企業

「Tech Trends 2018」のAR/VRの章では、GoogleとFacebookの取り組みに関して大きく紙面を割いているのが印象的です。

ここ数年でGoogleはCardboardやDaydreamといったVRヘッドセットのプラットフォームに加え、ARCoreといったARプラットフォームを立ち上げています。「Tech Trends 2018」では「GoogleはハードウェアプラットフォームやOS、一般ユーザ向けアプリまで含めて、AR/VRに関するラインナップをすべて取り揃えるつもりだ」と述べられており、その力の入れようが伺えます。

本文では、GoogleでAR/VRのグローバル戦略をリードするSteven Kan氏が語った事もまとめられています。氏はAR/VRの活用に消費者向けのサービスが多い現状に対して、将来的には企業向けサービスも重要になってくると捉えています。

一方で2014年にOculus社を買収したFacebookは、「VR事業で10億人のユーザー獲得」を目標に掲げています。ここ数年はOculus Riftをトレーニングや販売、マーケティングなどの支援ツールとして企業向けに売り込む動きも見られました。

また本文では、Unity社の取り組みについても触れられています。ゲームエンジンとして世界的なシェアを誇るUnityは、ゲームのみならず自動車、建築、航空宇宙、クリエイティブといった分野でのVR活用も可能にし、プラットフォームを拡大し続けています。

企業が考えるべきVRの課題やリスク

現状AR/VRを用いたビジネスを行う際に課題となる点について、AR/VR体験に必要なデータ容量は従来のデジタルコンテンツと比較して非常に大きいこと、AR/VRのストリーミング配信を行うのに現状のネットワークの速さでは不十分な点などが挙げられています。

またAR/VRに関する様々なリスクについて、例えば以下のような注意点にも触れています。

  • バーチャル世界におけるIDや認証が通常のPCにユーザ名とパスワードを入力することイコールではない
  • 個人情報とコンテンツデータをユーザの快適な体験を損なわずに保護することの難しさ
  • 自社のプラットフォーム構築に第三者やオープンソースのソフトウェアを利用する場合、コードや機密情報を流出させてしまうリスク
  • VRデバイス自体が起こすリスク(身体的危害、方向感覚の喪失など)

こうしたリスクに対しては、開発の序盤から対策を考え、始めからプラットフォームに組み込んでいく姿勢が大切です。

これからVRビジネスを始める人へ

「Tech Trends」のAR/VRの章の最後には、AR/VRビジネスの「始め方」に関して次の4点が述べられています。

1. テクノロジーへの知見を深める
これまで採用されてきた伝統的なITスキームは、AR/VRのビジネスでは通用しない部分が多くあります。トレーニングを受けるか、そうでなくとも何か開発キットを手に入れて数時間触れて見るだけでも多くの知識を得ることができます。

2. 新しい考え方を受け入れる
AR/VRを用いたサービス・コンテンツを設計するには、従来と全く異なる設計思想が必要とされます。新しいパターンや視点を備える必要があります。

3. 周りを見渡す
まずは自分の属する業界の競合他社の取り組みに目を向けましょう。隣接する業界では、AR/VRを用いてどのようなビジネス上のゴールを達成しようとしているのか調べましょう。

4. AR/VRシステムに完璧を求めない
AR/VR技術は日進月歩で成長し続けています。現状「完璧な」AR/VRシステムはまだ存在していません。導入戦略を練っている間にテクノロジーも発展します。完成を待つより、今存在しているデバイスやテクノロジーを試してみましょう。

「Tech Trends 2018 日本版」のその他のトピック

8つの章に関する要旨は、公式のリリースページに記載されています。

■テクノロジーの再構築/トップダウンとボトムアップから進める新しいIT導入モデル
■労働力の新しい概念:ノーカラーワークフォース/ヒトとキカイの境界線が融解し、互いに高め合う未来
■エンタープライズデータのあるべき統治とは/データを愛するならば、自由にさせよう
■ニューコア:次世代の基幹システムに向けて/基幹業務におけるデジタルポテンシャルの解放
■Digital Reality™/技術開発から利用機会創出へ
■単一のブロックチェーンから複合型ブロックチェーンへ/ブロックチェーンの広範な適用と統合が現実的に
■ビジネスに必要不可欠となったAPI/IT領域からビジネス領域へ
■飛躍的進化が期待されるテクノロジー/見え始めたイノベーションの兆候

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