車椅子ロードレースをVRと組み合わせてエンターテイメントに『CYBER WHEEL』

車椅子に乗って42.195kmを走り抜ける車椅子ロードレースという競技があります。パラリンピックの競技にもなっていますが、普段車椅子に乗っていない人間が体験する機会はありません。

一方、VRを体験する際には、椅子に座ったり、立ったままではなく、VRの中のシチュエーションに合わせた設備で体験すると没入感が高まるということから可動式の椅子などさまざまな特殊な筐体が登場しています。

車椅子とVRの2つを組み合わせたのが『CYBER WHEEL』と呼ばれるVR体験です。

CYBER WHEEL from 1-10 on Vimeo.

本体験は東京・赤坂サカスギャラリーで3月22日に限定で展示されていました。現地で体験取材を行うとともに、開発を手がけた株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングス代表取締役社長の澤邊芳明氏に話を聴きました。

近未来を彷彿とさせるデザイン

『CYBER WHEEL』は専用の車椅子に搭乗して体験する1分程度のVR体験です。「映画の『トロン』に出てくるような未来形のSF映画のマシンを参考に作った」(澤邊氏)という漆黒のボディに紫色のラインのデザインは、これまでに見たVR用筐体の中でも圧倒的にデザイン性が高く「カッコいい」筐体でした。


空力なども考慮して、近未来の雰囲気をまといながらも現実的なデザインを実現

車椅子に座り、手で車輪を掴んで前に回すと回転します。実際の競技用車椅子を参考にして作られているため、車輪は非常に勢いよく回転し、VRでは勢いよく前進します。車輪の遠心力があるため、連続で車輪を回し続けるのではなく、ろくろを回すときのように手は軽く添えるように、一呼吸置きながら「回して離して」を繰り返すと上手く走ることができました。

VRでは、400mを実際に手で漕いでタイムを記録するという内容になっています。コースもストレートで、障害物はほとんどありません。頭を左右に傾けると緩やかに左右に進行方向をずらすことができました。

「実際には10倍速なので4km分を走っている」設定とのことですが、腕を動かして車輪を前に動かす動きはかなり疲れます。筆者は常時時速20km程度を維持していますが、それ以上のスピードを出すのは至難の業でした。

『CYBER WHEEL』から広がる様々な可能性

澤邊氏はこの『CYBER WHEEL』にさまざまな可能性を見出しています。この『CYBER WHEEL』は、今後量産していくつもり、とのこと。将来的にはゲームセンター等にも置き、「対戦ゲームにしたら面白いのではないか」と、車椅子のロードレースの体験をエンターテイメント化する、という目的に熱がこもっている様子でした。


自身も車椅子に乗る澤邊氏

「パラスポーツの課題は、練習しづらいこと」と言う澤邊氏。確かに、公道で車椅子ロードレースの練習をしている風景は見たことがありません『CYBER WHEEL』は現実でも走ることができるようなデザインに配慮してされています。今後は、逆回転をかけるなど地面の抵抗などの再現も行うことで、実際の競技トレーニングに活かせるようにするなど競技人口を増やしたり、収益を競技団体に還元するなど『CYBER WHEEL』をきっかけにパラスポーツ自体を盛り上げることにも繋げたいとしています。

オリンピック×VRはもっと面白くなる

「仮想空間に現実の投影をしたパラレルワールドを作ってその中で色々な障害があってもできるある種のユニバーサルなエンターテイメントを作っていきたい」との考えを持っている澤邊氏。社会課題を課題として解決するのではなく、「こうしたらもっとよくなるのに」という観点でVRなどのツールを使って取り組んでいるとのことです。「車椅子を使うゲームとかっていってもなかなかやってもらえないけど、これだったらやってみたくなるじゃないですか」

スポーツとVRというと、2016年のリオデジャネイロ五輪でもVRデバイスに向けた360度のライブストリーミングが行われました。

では2020年の東京五輪ではどういう取組があるのでしょうか。やはりライブストリーミングだろうか、という筆者の質問に、「あれは第1ステップ」と言う澤邊氏。「第2ステップは体験型」として、VRがオリンピックでどういうことができるのかを見据えていました。『CYBER WHEEL』のようなものが競技場の周りにたくさんあったら日本ぽいのではないかと笑いながら語る澤邊氏。

車椅子ロードレースだけでなく、「他の競技も最低5種類くらいはVRで体験できるようにしたい」とも語っており今後の展開には非常に意欲的でした。引き続き注目したいところです。

この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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