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テック 2015.06.30

VRで究極の感情移入を実現するには?TEDで360度映像作家のクリス・ミルク氏が語る

クリス・ミルクは、最先端の技術を利用して、人を楽しませ魅了する映像作家です。彼がTEDで行った講演を紹介します。この講演では、彼がVR技術を使うに至った経緯や、感情移入のための実験的作品などが紹介されました。

公演映像はこちらから↓
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冒頭、ミルク氏のVRとの出会いから。 イーヴル・クニーヴルのスタント・バイクというおもちゃが彼が仮想現実にアクセスするために使ったツールでした。常にイーヴルが隣にいるような感覚がしていたとのこと。

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クリス氏は、その後ミュージックビデオの撮影などをしていましたが、「今までとは違う方法でストーリーを語るために現代の進歩した技術を使えないか。」と考え、この100年の間使ってきた旧来の映像製作ツールでは語りきれないような表現を模索し、実験を始めました。試みたのは、「究極の感情移入マシーン」をつくることです。

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まず行ったのは「The Wilderness Downtown」の制作です。この実験作品では、自分が育った場所を入力すると、小さなボックスが次々と立ち上がります。少年が通りを駆け抜けているのですが、その場所がGoogleストリートビューとGoogleマップの画像で、自分が育った場所の近くだとわかるというものです。最終的に少年はあなたの家の前で立ち止まります。これは、人々の生い立ちの一部を拾い上げてストーリーに当てはめており、長方形の画面だけで作ったものより、はるかに感情的な反応が返ってきたとの事です。

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その後、「一部だけを取り込むのではなく、どうすれば相手を丸ごとストーリーに組み込めるか」を考え始めました。そして、観客をフレームの中に取り込んだインスタレーション作品「The Treachery of Sanctuary」を製作。前作よりも深い心からの反応が返ってきました。観客と映像が同期しており、観客が動作をすると映像が反応します。

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クリス氏はモニターのフレームを窓と捕らえていましたが、その窓をすり抜けてむこう側の世界へ入り込める技術に目をつけました。そして、VRコンテンツの制作会社VRSEと国連、ガボ・オーロラと共同制作にて「12才の少女シードラの物語」を撮りました。
テレビや窓を通して見ているのではなく、彼女とそこに座っている感覚が味わえるVRは、より深く彼女の人間性を感じ、感情移入できると言います。「既に私たちは何人かの心を動かそうとしています。」と語りました。

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2015年1月、ダボスで行われる世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)にて、この物語を体験できる場を設けました。ダボス会議には、政治家や世界的大企業のCEOなど全世界の要人2000名以上が参加します。「スイスにいた彼らは、気づくと難民キャンプにいたのです。」と語りました。現在この作品のシリーズを制作しているとのこと。

HMDは、ゲームの周辺機器ではありません。VRは既存のメディアとは比べられないほど、深く人間同士を結び付けます。だから、VRは、本当の意味で世界を変える力を持っているのです。」ミルク氏はこのように締めくくりました。

(参考)
TED-仮想現実が究極の感情移入マシーンを作り出すまで
https://www.ted.com/talks/chris_milk_how_virtual_reality_can_create_the_ultimate_empathy_machine?language=ja#t-3488


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